Q3. SAR干渉画像の読み方に関する質問

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Q3-1.1つのSAR干渉画像から何が分かりますか?

異なる2時期(1回目と2回目の観測日時)の期間における、地表の変動の範囲とその変動量を知ることができます。

Q3-2.SAR干渉画像の色の変化は何を表していますか?

SAR 干渉画像は、2時期の電波の位相差(0°~360°)を虹色のカラーバー(カラーサークル)に従った系統的な色で表しています。 系統的な色の変化には方向性があり、色の変化のパターンから地表の変動方向(衛星に近づく/衛星から遠ざかる)を判断することができます。

  • 衛星から遠ざかる方向の色の変化:青→紫→赤→橙→黄→緑→青(繰り返し)
  • 衛星に近づく方向の色の変化:青→緑→黄→橙→赤→紫→青(繰り返し)
カラーバー説明画像

衛星-地表の間の距離が変化(変動)した範囲は、周辺に比べて位相差が変化しますので色が変わります。 SAR 干渉画像から変動域を探す際は、周辺と比べて色が局所的に変化している場所に着目します。
例えば、変動域とその周辺で、一周分の色の変化が見られる場合は、位相差が360°に相当し、衛星-地表の間の距離は半波長分の変化を示します。
だいち2号のSAR干渉画像では、一周分の色の変化は、約12cmに相当します。
SAR干渉画像の色は環境によって異なって見えるため、また簡便のため、たとえば水色を青、マゼンタを赤等と呼ぶことがあります。
できるだけ色表現を統一するため、地震調査研究推進本部は、SAR干渉画像のカラーテーブルの標準値を 「合成開口レーダーによる地震活動に関連する地殻変動観測手法について 報告書(付録)」(PDF形式:7.12MB)(新規ウィンドウ表示) のとおり定めました。国土地理院のSAR干渉画像はこのカラーテーブルに沿っています。

Q3-3.SAR干渉画像に虹色のカラーバーを用いるのはなぜですか?

多色のカラーバーは、細やかな変動の様相を識別しやすいからです。
多色に虹色を用いるのは、虹など身近で馴染みのある配色の一つであることと、“干渉現象”の事例としてシャボン玉の膜の模様が虹色に見える現象があるためです。
シャボン玉画像

シャボン玉画像
※公益法人日本化学会
コロイドおよび界面化学部会ホームページより転載



もし白黒や赤青のような2色のカラーバーを用いた場合、カラーバーの端の色のほうがそれらの中間色よりも(変動)値が大きい、と誤解される恐れがあります。

Q3-4.SAR干渉画像から知りたい場所の変動状況を調べるにはどのように判読すればよいのですか?

知りたい場所(ピクセル)の色を判読するだけでは、変動したかどうかを判断することはできません。 知りたい場所の色が、その周辺からどのように変化したかを見ることによって、変動の有無、変動の方向を確認できます。
変動は知りたい場所の色が何色かではなく、周辺の色と知りたい場所の色が、相対的にカラーバーのどの位置にあるか(離れているか)が重要です。
知りたい場所の色の変化

Q3-5.SAR干渉画像の判読によって検出可能な変動の領域サイズ、検出可能な変動量はどれくらいですか?

SAR干渉画像から変動を検出するには、経験上、10x10ピクセル以上の広がりが必要です。検出可能な変動量は、観測データに含まれるノイズの大きさに依存しますが、経験上概ね5色分の変化に相当する約3cmです。
したがって、だいち2号高分解能モード(3m)のSAR干渉画像で捉えられる変動は、領域サイズが概ね100×100m以上で、変動量は約3cm以上が目安となります。
変動検出サイズの説明画像

Q3-6.SAR干渉画像で見られる変動が2回の観測の間にいつ・どのように発生したか分かりますか?観測の時間間隔の違いは変動の検出に影響しますか?

SAR干渉画像から分かるものは、2時期の間に生じた変動の範囲とその変動量です。1枚のSAR干渉画像では、変動がいつ・どのように発生したか(継続的、段階的、突発的といった変動の経過)は分かりませんが、変動量を期間(観測の時間間隔)で割ることで、変動の平均速度を求めることができます。
平均速度が遅い変動であっても、2時期の期間を長くとることにより、変動量がノイズレベルよりも大きくなり、検出できる可能性が高まります。 ただし、観測が行われた2時期が長いほど、地表面の形状や植生等の変化に伴いSARの干渉性が悪くなることに注意が必要です。
変動がいつ・どのように発生したかを知るためには、事象の性質を考慮した上で、異なる期間のSAR干渉画像や他の手法による観測結果等と比較して検証することが必要です。

Q3-7.同じ地域の複数のSAR干渉画像を見比べることで、何が分かりますか?

それぞれのSAR干渉画像は、観測の方向(Q1-16. 参照)や観測の時期が異なります。 このような画像を比較することで、(1)変動の確実性、(2)変動の詳細、(3)変動の経過が分かります。

(1)変動の確実性
1つのSAR干渉画像だけでは、有意な変動と誤差を区別することが困難な場合があります。 この場合、期間が重複する複数のSAR干渉画像と比較することで、変動と誤差を見分けやすくなります。 誤差はランダムに発生する事が多いことから、複数のSAR干渉画像を比較することで見分けることができます。 同じ範囲に同様の色の変化傾向が見られるものは、誤差ではなく、地表の変動の可能性が高いと言えます。
変動の確実性の説明画像

黒線枠に示す色の変化は、変動の方向が同じですべてのSAR干渉画像に見られることから、地表の変動の可能性が高いと考えられます。一方で、その他の箇所は共通して見られないことから誤差の可能性が高いと考えられます。

(2)変動の詳細
重複する期間の観測方向の異なる複数の独立したSAR干渉画像をさらに解析することで、上下・東西・南北成分の変動を求められます。 なお、電波照射方位が常に南北方向よりも東西方向に傾いていることから、南北成分の感度は上下・東西成分に比べ劣ります。
変動の詳細の説明画像1
平成28年10月21日鳥取県中部の地震(M6.6)に伴う観測方向の
異なる4つの独立したSAR干渉画像
変動の詳細の説明画像2
4つのSAR干渉画像を組み合わせた解析により求めた、
3次元の変動量(水平成分と上下成分)分布

(3)変動の経過
観測時期が異なるSAR干渉画像を比較することで、変動の経過を確かめることができます。 例えば、観測の時間間隔が長いSAR干渉画像で見られる変動は、短期間のSAR干渉画像を見ることで継続的、段階的、突発的といった変動の経過が分かります。
また、1つのSAR干渉画像の中で有意な変動と思われるものであっても、次の期間で逆向きの変動が見られる場合は、年周変化あるいは大気の影響による誤差である可能性が考えられます。
変動の経過の説明画像1
2週間毎の観測データから得られた箱根山大涌谷の火山活動に伴う地殻変動分布

Q3-8.色が大域的にぼんやりと変化している範囲は、変動しているのですか?

SAR干渉画像に大域的に現れるぼんやりとした変化は、その大半が大気に起因する誤差と考えられます(Q4-2. 参照)。 1つのSAR干渉画像から変動の真偽が困難な場合、複数のSAR干渉画像を比較してください(Q4-4. 参照)。
ぼんやりと変化の説明画像
黒線枠に示す色の変化は、大気に起因する誤差と考えられます

Q3-9.SAR干渉画像の中に見られる、砂をまいたようなざらざらした模様は何ですか?

隣り合うピクセルの色が系統的な変化ではなく、ランダムに変化している領域は、全体として砂をまいたようなざらざらした模様のように見えます。
このような領域は、干渉していない領域(非干渉域:Q3-10.参照)といい、変動の有無を読み取ることができません。
干渉していない領域(非干渉域)の説明画像

非干渉になる原因として、地表面の状態が2時期の観測の間に大きく変化した、地表面がなめらかであるために照射した電波が衛星に戻らないこと(鏡面反射)が挙げられます。
しかし、非干渉域の変化から火山灰の堆積を推測できることがあります。
口永良部島非干渉の説明画像

Q3-10.「非干渉域」はどのような場所で見られるのですか?

非干渉域は、以下の場所で見られます。

(1)2時期の観測の間で地表面の状態が大きく変化(改変)した場所
  • 田畑などの耕作地、積雪地域、コンテナヤード、大規模な資材置き場、土地の造成や砕石地等の人工改変地
  • 土砂災害による大量な土砂の移動、噴火に伴う火山灰など火山噴出物の堆積
  • 地震による液状化、水害による土砂の流入、水面に覆われる等
(2)常に鏡面反射をする場所
  • 河川・湖沼・海などの水面、空港の滑走路

Q3-11.山間部や平野など、地域全体が水色からはずれた(黄緑や紫など)色で占められる場合、その地域全体が変動しているのですか?

いいえ、通常はそうではありません。 SAR干渉画像は水色(カラーバーの0cm付近)がベースとなるように調整しています。しかし、 大気に起因する誤差等の影響(Q4-2. 参照)により、 地表の変動と関係無く水色以外の色となる場合があります。
大気に起因する誤差等の影響の説明画像

Q3-12.離島の色が、全体的に周辺の陸域と比べて異なります。離島全体が周辺の陸域に対して変動しているですか?

離島は大気の影響の受け方が周辺の陸域と異なることがあり、この影響を取り除けない場合に色に違いが出ることがあります。 離島は周辺の陸域と連続的に色(位相差)をつなぐことができないので、周辺の陸域に対する変動を見ることは困難です。 ただし、離島内の変動は、島内の色の変化から捉えることができます。
離島の色の説明画像

Q3-13.同じ地域で、隣り合うSAR干渉画像を表示したところ、画像のベースの色が異なります。色の違いは変動によるものですか?

変動によるものではありません。SAR干渉画像は画像単位で相対的な色(位相差)の変化を見るためのものなので、通常隣り合うSAR干渉画像を比較しても変動の範囲や変動量を言及することはできません。 色の違いは地表の変動ではなく、それぞれのSAR干渉画像に含まれる大気に起因する誤差などの違いによると考えられます。 隣接画像間で位相差が連続になるように画像間のオフセットを調整することで自然な表示にすることが可能です。
隣り合うSAR干渉画像の色の違いの説明画像

Q3-14.山間部や海岸付近で、ピクセルが欠落したりカバーされていない箇所が見られますが、これはどういうことですか?

以下の2つの理由が考えられます。
  • (1)電波の入射角と地形勾配の大小関係によって生じるもの
  • (2)解析に使用する数値標高モデル(DEM)が存在しない場合

(1)電波の入射角と地形勾配の大小関係によって生じるもの
SAR画像の選択において、斜面の傾斜・撮影(観測)方向・入射角を考慮することで、SAR干渉画像中のピクセル(画素)の欠落を抑えることができます。

レイオーバー
電波の入射角より勾配が急な斜面では、衛星の手前側斜面において、手前に位置する標高の低い場所(谷部)より奥側の標高の高い場所(稜線部)の方が衛星との距離が近くなります。 衛星は反射波を受信する順に記録しますので、手前にある標高の低い場所より高い場所の方が先に記録され、受信順序が逆転する現象が起きます。 この電波を画像化すると、標高の高い場所と低い場所で位置関係が逆転した圧縮された画像となり、その場所のデータは欠落します。
この現象をレイオーバーと呼びます。レイオーバーは入射角が小さいと生じやすい性質があります。
レイオーバーの説明画像
電波の入射角が地形の勾配より急な場合の説明画像
レイオーバーの例 東京都新島(2014年12月21日~2015年3月1日)

シャドウ
電波の入射角の補角より地形の勾配が急な斜面では、衛星から見て反対側斜面(稜線の裏側)において、電波が稜線に遮蔽され影となって観測できないことから、この場所のデータが欠落します。
この現象を現象をシャドウと呼びます。シャドウは入射角が大きいと生じやすい性質があります。
シャドウの説明画像

(2)解析に使用する数値標高モデル(DEM)が存在しない場合
沿岸域に代表されるような埋立による新たな陸地は、DEMが未整備な領域で、海域として処理されるため解析結果を得ることができません。
SAR干渉解析に使用する数値標高モデル(DEM)が存在しない場合の説明画像
例 羽田空港(2016年5月3日~2016年8月9日)

Q3-15.ある地域に見られる色の変化が変動かどうかを判断するポイントを教えてください。

SAR干渉画像に見られる色の変化が実際の変動かどうかを判断するためには、次の点について確認してください。

  • 1つのSAR干渉画像から変動の確実性を判断することは困難なため、複数のSAR干渉画像を比較し、変動の場所が時間的・空間的に整合しているかを確認します。 色の変化が他のSAR干渉画像に見られない場合は、多くは誤差と考えられます(Q4-2.Q4-4. 参照)。
  • 変動する方向がその他の関連情報と比較して実現可能な方向かを確認します。 関連情報として、地形図や空中写真などの基本的な情報のほか、火山土地条件図や都市圏活断層図、地すべり分布地形図などの地理空間情報があります。 また地域の防災ハザードマップ、経済的な活動圏であれば埋立てなど人工的な改変事業の情報などを参照し、その地域にどのような地表の変化・変動の要因があるかを知ることも重要です。

Q3-16.SAR干渉画像全体が水色の場合は、変動がないと判断してよいのですか?

いいえ、一概に変動がないとは言い切れません。理由は以下のとおりです。

  • 干渉SARで捉えられる変動は領域サイズが概ね100m×100m以上で、変動量が3cm以上のものです。これより狭い範囲もしくは小さい変動があっても水色になります(Q3-5.参照)。
  • 変動が、SAR干渉画像に含まれる誤差(電離層や大気中の水蒸気の影響、Q4.参照)に隠れて見えない場合があります。
  • 南北方向の変動があっても水色になります。だいち2号のSAR干渉画像は南北方向の変動を捉えにくい特徴があります(Q1-18.(3)参照)。
  • 変動の水平成分と上下成分の大きさ・向きによっては、変動が衛星-地表視線方向の距離の変化に現れないことがあります(Q1-18.(1)Q1-18.(2)参照)。

SAR干渉画像全体の水色は、顕著な衛星-地表視線方向の距離の変化がないことを意味しています。 1つのSAR干渉画像で変動が捉えられていない場合は、解析期間の長い画像や観測方向の異なる画像など、複数の画像を比較して判断することが重要です。

Q3-17.過去に変動の見られた箇所では、今後も変動しやすいのですか?

SAR干渉画像は、あくまでも2時期の観測の期間内の変動を見るものであり、その期間外の時期の変動については分かりません。 一般的には過去に変動があった場所では、その変動の原因が取り除かれない限り、変動が繰り返し発生したり継続したりすることはあり得ます。

Q3-18.同じ地域の水準測量やGNSSによる変動結果と干渉SARによる結果で値が異なるのですがなぜですか?

地表の変動を、GNSSでは3次元(東西、南北、上下)で、水準測量では上下方向で捉えるのに対し、干渉SARが計測できるのは、衛星-地表間の直線の方向(衛星-地表視線方向)の1次元です(Q1-5. 参照)。 同一の変動を異なる方向から観測すると計測される変動量は異なります。 また、地上の観測は、基準点における変動を捉えるのに対し、干渉SARは、画像の各ピクセル内の地表の平均的な変動です。
これらの違いとSAR干渉画像の計測の精度を考慮した上で、水準測量やGNSSと直接比較したい場合は、Q3-19.Q3-20. の方法を参照してください。

Q3-19.GNSSの変動量を干渉SARの結果と比較したいのですが、どうすればよいですか?

GNSSから得られる3次元の変動量を、SAR干渉画像の衛星-地表視線方向の変動量に換算(その方向の成分を抽出)すると比較できます。

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Q3-20.水準測量の結果と干渉SARを比較したいのですが、どうすればよいですか?

水準測量による上下変動とSAR干渉画像による変動量を比較したい場合、以下の仮定を設定したとき、SAR干渉画像から読み取った変動量を仮定の上下変動量に換算できます。

(仮定) SAR干渉画像中の水平変動は同一で、局所的な変動の要因は上下変動のみである

仮定の上下変動量は、地表への電波の入射角(Q1-14. 参照)と、地表の変動の向き(衛星に近づく/衛星から遠ざかる)の幾何学的関係から求めることができます。SAR干渉画像から読み取った、衛星-地表視線方向の変動量をx cm、地表への電波の入射角をθとした場合の仮定の上下変動量y cmは、

y=x/cosθ

で求められます。
例えば入射角が34.3度の場合、干渉SARの変動量xの約1.2倍、41.5度の場合は約1.3倍が仮定の上下変動量となります。 また同じ式を用いて、水準測量による上下変動量を干渉SARの変動量に換算することも可能です。
仮定の上下変動量に変換するための説明画像

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