衛星と地表を結ぶ視線方向(衛星-地表視線方向という。)に直交する方向の変動の場合、衛星-地表間の距離が変わらないため、干渉SARでは捉えることができません。典型的な例としては以下のようなものがあります。
- (1)衛星-地表視線方向の距離変化が打ち消される変動
- (2)人工衛星から見て手前側斜面の変動
- (3)南北方向の変動
これらの詳細を以下で紹介します。
(1)衛星-地表視線方向の距離変化が打ち消される変動
上下(隆起/沈降)と東西(東向き/西向き)の変動の組み合わせによって、衛星-地表視線方向の距離の変化が打ち消され、変化を捉えられない場合があります。
例えば、観測のパターンが北行軌道・右観測の場合では、東向きと隆起が同時に生じた変動、西向きと沈降が同時に生じた変動は、衛星との距離が変わらないため色の変化は現れにくくなります。
上の図は複数のSAR干渉画像を組み合わせて解析することによって得られた2016年鳥取県中部の地震に伴う地表変動です(
Q3-7.参照)。
2016年鳥取県中部の地震では、衛星-地表視線方向の距離変化が打ち消される効果により、同じ地表変動でも観測方向によって検出される変動の領域・変動量に違いが見られました。
例えば図中黒丸内の東向き・沈降の変動は、西からの観測(AR)では検出されていますが、東からの観測(DR)では検出されていません。
(2)人工衛星から見て手前側斜面の変動
人工衛星から見て手前側斜面では、衛星に近づく水平変動と衛星から遠ざかる上下変動の組み合わせによって、衛星-地表視線方向の距離の変化が打ち消され、変化を捉えられない場合があります。
衛星から見て、変動箇所の斜面が手前側か奥側かによって、色の現れ方に違いが見られます。斜面の方向・傾斜量によっては手前側の変動が捉えられないことがあります。
(3)南北方向の変動
人工衛星は電波をほぼ東西方向に照射するため、東西(東向き/西向き)や上下(隆起/沈降)方向の変動は、衛星-地表視線方向の距離の変化として捉えることができます。 しかし、南北(南向き/北向き)方向の変動は、衛星-地表視線方向の距離が変化しにくいため、変化を捉えられない場合があります。