地上で重力を測る

 重力の測定は、絶対的な重力値を正確に測定する「絶対重力測定」と、相対的な重力の差を求める「相対重力測定」に分けられます。
 国土地理院では、全国に重力の基準となる2種類の重力点(基準重力点及び一等重力点)を設置しており、基準重力点の重力を絶対重力測定で、一等重力点の重力を基準重力点からの相対重力測定でそれぞれ測定しています。また、南極観測隊にも参加し、定期的に重力測定を実施することで南極氷床の質量変化の監視などに貢献しています。
 国土地理院が定めた重力値を基準とすることで、誰でも同じ基準に基づく重力値を決定することができます。
絶対重力測定とは、絶対的な重力値を求める方法です。真空中で物体を静かに落とすと、物体は地球の重力に従って自由落下します。 この自由落下運動をたくさん観測することで、重力値を求めることができます。国土地理院は、特殊な鏡を落下させる絶対重力計FG5 と、原子を落下させる量子型絶対重力計AQGを所有しています。

絶対重力計FG5

国土地理院は、絶対重力計FG5を3台所有しています(図1)。 落下槽と呼ばれる筒状の部分の内部が真空に保たれており、この落下槽の中で特殊な鏡を落下させ、落下距離をレーザーで、落下に要した時間を原子時計で計測し、重力値を求めます。

量子型絶対重力計AQG

量子型絶対重力計AQG(図2)は原子干渉を用いた次世代型の測定装置で、真空槽内でルビジウム原子を自由落下させて重力値を求めます。実用化された量子型絶対重力計としては、我が国で初めて導入されました。FG5と異なり落体を自由落下させるための機械的な構造がないため、系統誤差の低減が期待出来るほか、取扱いが容易で可搬性に優れています。また、屋外での運用が可能であり、今後幅広い活躍が期待されます。

絶対重力計FG5の写真

図1 絶対重力計FG5

量子型絶対重力計AQGの写真

図2 量子型絶対重力計AQG

重力値から読み取れる情報

これらの絶対重力計は、1μGal(マイクロガル)単位で重力を計測することができます。重力の測定では大きな値から小さい値まで測る必要があるため、通常、重力の単位「Gal」に100万分の1をかけた「μGal」という単位を使用しています(図3)。単位については、重力の単位をご覧ください。また、このような測定を繰り返し行うことで、重力の時間変化を捉えることができます。

図3 重力値から読み取れる情報

計測した重力値の各桁から読み取れる地球物理に関する情報は、おおよそ以下のとおりです。

3, 4桁目
緯度と標高で決まる。時間的変化はない。
5桁目
地下の構造に関する情報が分かりはじめる。
7桁目
測定する高さを1m高くすると、約3程度減少する。
月や太陽の引力による潮汐の効果が見えはじめる。
8桁目
地殻変動、地下水移動や火山活動に伴うマグマの移動等の影響が分かりはじめる。
 相対重力測定とは、ある点と別の点との重力の差を測定する方法で、相対重力計と呼ばれるバネの伸びを利用した装置を用いて行います。 相対重力測定ではその場の絶対的な重力値は分からないので、重力値が分かっている参照点と重力値を求めたい点との重力の差を測り、参照点の重力値に足し合わせることで、その点の重力値を決定します。

【国土地理院で使用している相対重力計】
 
国土地理院では、ラコスト重力計(LaCoste&Romberg gravimeter)を使用しています。バネに「おもり」を吊り下げると、バネの伸び(弾性力)と重力が釣り合ったところで静止します。 重力の変化によりバネの伸び方も変わるので、その差を計ることによって重力の差を求めます。
 絶対重力計に比べ小型で運搬が容易ですが、測定精度は10μGalで絶対重力計より1桁落ちます。相対重力計でも、繰り返し観測を行うことにより重力の時間変化を求めることができます。

ラコスト重力計


 絶対重力計の国際標準との整合は、国際度量衡委員会と国際測地学協会が協力して定期的に開催される国際比較観測において確認されます。日本からは、産業技術総合研究所(産総研)が参加し、同研究所が所有する絶対重力計の国際標準との整合を確認しています。国内の絶対重力計については、国土地理院が主体となり、産総研を含む絶対重力計を所有する機関を集め、2002年から毎年国内比較観測を実施しています。2016年からは、新たに開設した国土地理院の石岡測地観測局(茨城県石岡市)内の重力観測室で開催しています。産総研と各機関の絶対重力計との整合を確認することで、国内における国際標準に基づく重力の測定を可能にしています。

石岡測地観測局全体(左)及び絶対重力計の国内比較観測風景(右)