ジオイドのモデリング

ジオイド・モデル作成方法

 ジオイドは、地球の重力による位置エネルギーの等しい面(重力の等ポテンシャル面)の1つであり、地球全体の平均海面に最もよく整合するものとして定義されています。日本においては、東京湾平均海面に一致する等ポテンシャル面をジオイドと定め、標高の基準としています。
 国土地理院では、衛星測位を用いて標高を決定するための基盤として、1990年代からジオイド・モデルを作成し提供してきました。社会からの要求に応えるため、ジオイド・モデルは段階的に改良されており、2016年4月からは公共測量における水準測量にも一部利用されています。

 ジオイド・モデルの作成には大きく分けて、2つの方法があります。
 1つ目が、全国の重力値を積分計算しモデルを作成する方法です。ジオイドの起伏は地下構造の違いによる重力変化が主な原因です。人工衛星による重力測定、地上重力、海上重力など様々な測定方法による重力値を組み合わせ、それらを変換することでジオイドの起伏を計算し、ジオイド・モデルを作成することができます。このようにして作成されたモデルを「重力ジオイド」と言います。
 2つ目が、重力ジオイドを衛星測位と水準測量により実測したジオイド高に合わせこみ作成する方法です。この方法により作成されたモデルは「ハイブリッド・モデル」と言います。衛星測位(GNSS測量)と水準測量を同じ場所で行って、その場所の楕円体高と標高の実測値からジオイド高を求めることができます。この一連の測量をジオイド測量と呼びます。国土地理院でこれまで公表したジオイド・モデルは、衛星重力、海上重力、地上重力から作成された重力ジオイドに、ジオイド測量の結果(実測ジオイド)を組み合わせ構築した「ハイブリット・モデル」です。

ジオイド・モデル作成手法


日本のジオイド2011(Ver2.2)(GSIGEO2011(Ver2.2))

 2023年6月2日に「日本のジオイド2011」(Ver.2.2)を公開しました。
今回の改定では、東京都硫黄島周辺の値を追加しています。その他の地域は「日本のジオイド2011」(Ver.2.1)から数値の変更はありません。
「日本のジオイド 2011」(Ver.2.2)(GSIGEO2011(Ver.2.2))は、データ・資料等から取得できます。

 また、任意の地点のジオイド高を求めたい場合は、ジオイド高計算サービスもご利用いただけます。
計算には、「日本のジオイド 2011」(Ver.2.2)(GSIGEO2011(Ver.2.2))を使用しています。
ただし、海域部や一部の離島等では、ジオイド高データがない無効領域があります。

 「日本のジオイド 2011」の構築の詳細については、国土地理院時報(2018,130集)「ジオイド・モデル「日本のジオイド2011」(Ver.2)の構築」、国土地理院時報(2014,126集)「ジオイド・モデル「日本のジオイド2011」(Ver.1)の構築」、Bulletin of the GSI (Vol.62)「Development of new hybrid geoid model for Japan, "GSIGEO2011"」をご覧ください。

「日本のジオイド2011」(Ver2.2)の提供範囲。赤枠が更新箇所。


「日本のジオイド2011」(Ver2.2)


新しい重力ジオイド「ジオイド2024日本とその周辺」(試行版)の公開

 ハイブリッド・モデルと比較して、重力ジオイドは地殻変動に対して安定的という利点がありますが、高精度な重力ジオイドを構築するには空間分解能の高い均質な重力値が必要です。しかし、既存の地上重力値の大半は1970~80年代に測定されたもので、近年の大規模な地震の影響が反映されていません。また、山岳部や沿岸域など重力測定が困難な地域では重力値の空白域が存在します。そこで、国土地理院では高精度な重力ジオイド(ジオイド2024 日本とその周辺)を構築するために、航空機に重力計を搭載し上空から重力を測定する航空重力測量を実施しました。

 「ジオイド2024 日本とその周辺」(試行版)は、データ・資料等から取得できます。なお、「ジオイド2024 日本とその周辺」(試行版)はまだ測量には使用できません。正式版は2024年度末に公開する予定ですので、それまでの間、測量にジオイド・モデルを使用する場合は「日本のジオイド2011」(Ver.2.2)をご使用ください。

ジオイド2024 日本とその周辺(試行版)



 「ジオイド2024 日本とその周辺」(試行版)は、ジオイド検証により精度評価を行いました。ジオイド検証では、GNSS測量と水準測量を行い、得られた楕円体高と標高の差からジオイド高(実測ジオイド高)を求め、「ジオイド2024 日本とその周辺」(試行版)のジオイド高と比較して評価します。その結果、「ジオイド2024 日本とその周辺」(試行版)の精度は目標精度である3 cmを満たしていることが分かりました。

ジオイド検証の手法


ジオイド検証地域