重力とは
![]() 引力、遠心力及び重力の関係 ニュートンの万有引力の法則でよく知られるように、全ての物体は「引力」で互いに引き合っています。 したがって、地球上の物体にも、地球の引力が働きます。 一方、円運動をしている物体には回転軸から遠ざかる向きに遠心力が働きます。 地球は自転しているため、地球上の物体には、自転による遠心力が働きます。 以上から、地球上の物体には、地球の引力と地球の自転による遠心力が働いており、この引力と遠心力の合力が重力になります。 重力の大きさは時間や場所によって異なります。 例えば、遠心力は自転軸からの距離が遠くなるほど大きくなり、引力は地球の重心から離れるほど小さくなることから、赤道上の重力は北極や南極よりも約0.5%小さくなります。 また、重力の大きさは、地下の密度構造の違いでも変わります。 さらに、同じ場所であっても、月や太陽の引力(潮汐)、地殻変動などによって時間的にも変化します。 重力の大きさは、それによる加速度(重力加速度)の大小によって表現されます。 高校の物理では、地球の重力加速度をg=9.8m/s2(=980Gal)の定数として扱うことがほとんどです。 測地学や地球物理学では重力加速度を表す際には「Gal(ガル)」(=0.01m/s2)という単位を用います。 これは、落体の法則を発見した「ガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei、1564~1642)」にちなんで名付けられました。 時間や場所によって変化する重力を正確に測定するためには、より細かい単位での表現が必要です。 国土地理院が行う絶対重力測定では、1Galの100万分の1を表す1µGal(マイクロガル)の桁まで重力値を測定し、日本全国の重力の基準を定めています。 単位の関係 g = 9.8m/s2 = 980 Gal 1 Gal = 1 cm/s2 = 0.01 m/s2 1 Gal = 1 000 mGal = 1 000 000 µGal ![]() 国土地理院が行う絶対重力測定では、1µGal(マイクロガル)の桁まで数値が得られます。 測定した重力値の各桁から読み取れる地球物理に関する情報
重力値の提供国土地理院では、土地の標高を正確に決めることを目的として、全国に設置した重力点において重力測量を行い、基準となる重力値を整備しています。 また、南極地域観測隊にも参加し、南極地域の重力の基準を定め、維持するとともに、南極地域の重力場を把握することを目的として定期的に重力測量を行っています。 これらの重力値は、国際的に合意された基準に整合した重力計を用いて測定した値です。 整備した重力値は、土地の標高を正確に決めるほか、伏在活断層や地下資源の探査などの地球科学の分野から、質量計、気圧計、圧力計などの計量機器の校正といった生活に密接に関わる分野まで広く活用されています。 重力値によるはかりの校正![]() 各地の重力値(理科年表より) 私たちの生活の中で「重さ」をはかることはとても身近ですが、実は物の重さは重力の大きさによって変わります。 地球の遠心力は高緯度ほど小さくなるので、北海道と沖縄を比べると北海道の方が少しだけ(約0.15%)重力が大きくなり、同じ物でもその分重くなります。 例えば、沖縄で1kgの金を北海道に持っていくだけで約1g重くなるのでとてもお得に感じます。 しかし、そのような状態では社会が混乱するため、同じ物が日本どこでも同じ重さとしてはかれるように、各地の重力値によってはかりを校正しています。 このはかりの校正に国土地理院が測定した重力値が使用されています。 地下の構造探査鉱床のような周囲より密度の高い物体が地下にあると、その物体の引力の影響で地上の重力は増加します。 また、活断層などによる地層の不連続でも、断層の両側で密度が変わるため地上での重力に変化が生じます。 地表の重力の分布を調べることで、このような地下構造の様子が分かるため、重力の測定結果は地下資源の探査や、地下の活断層の分布、形状、規模の推定などの防災・減災分野にも活用されています。 また、同じ場所で重力を継続して測定することで、火山のマグマの動きなども監視できます。 ![]() 平成28年(2016年)熊本地震の震源付近の重力分布(左)及び地下構造と重力の関係(右) |