上空で重力を測る

航空重力測量

 航空重力測量は、航空機に重力計を搭載し、上空から重力を測定する測量です。

 地上重力測量と比べて、広範囲を効率的に測量することができ、山岳部や沿岸域などの地上重力測量では測定が困難な場所でも測量することができます。

 国土地理院は、高品質な重力データを効率的に整備するため、2018年度から2023年度まで航空重力測量を行いました。

 航空重力測量で取得した重力データは、ジオイド・モデル「ジオイド2024日本とその周辺」の構築に活用されました。

測定方法

航空機による測定の条件を示す模式図

 全国をブロックに分け、飛行場を拠点に日本全国において沖合約 40 km まで航空重力測量を行いました。

 各飛行場には、航空重力測量の基点となる飛行場重力点を地上の相対重力測定によって設置しました。

 航空機が飛行し、重力を測定する経路を「測線」と呼びます。

 「主測線」は重力を測定することを目的とした測線で、「副測線」は主測線の品質を評価するための測線です。

 航空機による測定は、以下の条件を標準として行われました。

  • コース間隔:主測線 10 km
  • 沿岸域 :沖合 40 km
  • 測定高度 :1500 ~ 5000 m
  • 飛行対地速度 :300 km/h

計画・準備・測定

飛行場における重力測定の様子

飛行場重力点の設置

 各飛行場に航空重力測量の基点となる重力点を設置します。

 重力点の設置作業では、飛行場内での安全を確保するとともに、航空機の離着陸による振動や風圧が重力測定に影響を及さないよう、主に夜間に行いました。


ブロック区分

飛行計画

 複数の飛行場を拠点とし、全国をブロックに区分して測定を行います。

 ブロック区分の設定では、航空重力測量を先行して行っていた米国国家測地測量局(NGS)の助言、実際の測定による経験、得られたデータの解析結果等をもとに、より有効かつ効率的な測定ができるよう、改良を重ねました。


上空における航空機内の様子

航空機による測定

 航空機に航空重力計を搭載して上空から重力を測定します。

 また、GNSS/IMU装置を搭載し、航空機の位置や加速度、姿勢を測定します。

 航空重力測量を行う際は、パイロット及び測定者が航空機に搭乗し、測定者は、測定する測線をパイロットに指示し、測定機器の操作を行います。


航空重力計TAGS-7

航空重力計TAGS-7
写真中央の赤色のボックスがセンサー

航空重力計 TAGS-7

 航空重力計は、バネの伸縮を利用して重力値の変化量を求める相対重力計です。

 飛行場重力点を基点として上空で重力の変化量を測定し、その変化量を飛行場の重力値に加えることで、上空の重力値を求めることができます。

 さらに、航空機の中で重力を測定するための仕組みとして、センサー部の水平を保つジンバルや、機体の振動を吸収するダンパーなどを備えています。


GNSS/IMU装置 POS AV 610

GNSS/IMU装置 POS AV 610
左の写真がIMU装置、右の写真がGNSSアンテナ

GNSS/IMU装置 POS AV 610

 GNSS/IMU装置は、以下の二つの機器から構成されています。

  • GPSやみちびきなどの測位衛星からの電波を受信して、航空機の位置(緯度・経度・楕円体高)を測定する機器
  • 加速度センサー、ジャイロスコープからなる慣性計測装置(IMU)で、航空機の加速度、姿勢を測定する機器

 GNSS/IMU装置で得られたデータを使って、重力が測定された位置を正確に求めます。


航空機 Textron Aviation 208

航空機 Textron Aviation 208

 民間企業が所有するTextron Aviation 208をチャーターしました。

 なお、2019年12月までは、Cessna 208B Grand Caravanをチャーターしていました。

 いずれの航空機もオートパイロット機能を備え、時速 300 km以上、高度 25000 ft(約 7600m)までの飛行が可能です。


GNSS/IMU解析・重力解析

関東地区(KT03ブロック)の解析例

 航空機に搭載したGNSS/IMU装置のデータを使って、航空機の位置情報を求めます。

 電子基準点を基準とした後処理キネマティック方式により解析を行います。

 GNSS/IMU解析で得られた航空機の位置情報と航空重力計で得られた重力値を結び付け、航空機が飛行した位置における重力値を算出します。

 右図は解析の一例です。

 関東地区(KT03ブロック)の測定で得られた重力分布を表しており、赤いほど重力が大きく、青ほど小さいことを示しています。

 赤石山脈や関東山地などの山岳域で重力が大きく、駿河湾や東京湾などの沿岸域で重力が小さいといった傾向が分かります。


観測実績

 2018年度に航空重力計を調達し、2019年度から2023年度まで航空重力測量を行いました。

 計画したブロックに加えて、航空重力測量の効果が高い沿岸海域において、低高度での測定を行いました。

 取得した重力データを基に、ジオイド・モデル「ジオイド2024日本とその周辺」を構築しました。

 取得した「航空重力データ」と構築した「ジオイド2024日本とその周辺」は、以下のページに掲載しています。

航空重力測量の観測実績


航空重力測量の効果

 構築した「ジオイド2024日本とその周辺」は以下の左図のとおりです。

 航空重力データの有無によるジオイド高の差の図が右図になります。沿岸海域において航空重力測量の効果が顕著であることが分かりました。

「ジオイド2024日本とその周辺」(左)、航空重力データの有無によるジオイド高の差(右)