SARは、「サー」と発音します。
Synthetic
Aperture
Radar の頭文字をとっています。直訳すると、「合成」「開口」「レーダー」です。
詳しくは
干渉SARの原理を御覧ください。
合成開口とはレーダーの分解能を向上させるための処理です。
詳しくは
干渉SARの原理を御覧ください。
電波、光、音などは「波」の性質をもっており、2つ以上の同じ種類の「波」が同じ場所で出会った場合に、波同士が相互作用を起こして、強め合ったり弱め合ったりします。この現象を広く「干渉」と呼んでいます。
電波を使って、対象物までの距離を測定する場合、対象物までの間に電波の波の「山」と「谷」が何個あるかを数えるのは困難です。しかし、2回の観測を干渉させて差をとることで、その差に含まれる波の「山」と「谷」の数を数えるだけで、どれだけ移動したかが分かります。
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SAR干渉画像の見方を御覧ください
虹色の縞がくっきりと出ている場所ではなく、砂目模様のような場所は、「干渉していない」場所です。
そもそも干渉するためには、1つのピクセル(画素)が、2回の計測でほぼ同じ状態でSARの電波を反射する必要があります。このピクセル内が一様に移動すればよいのですが、ピクセル内で凸凹になったり、表面の状態が火砕物等の堆積、積雪、植生の変化、土地の造成、土砂崩れなどで変化すると、2回のSAR信号が干渉しなくなってしまいます。水面も、水の揺らぎにより、表面が変化するため、干渉しません。
またピクセル内の変化が小さくても、山地などで斜面の傾斜がある場所では、干渉しにくくなる場合があります。
こうした干渉しない場所では、ピクセルごとにランダムな数値になってしまいますから、隣接するピクセルと同じ色ではなくなります。そのため、干渉しない領域全体はいろいろな色の集まり(砂目)になってしまいます。
SAR干渉画像は色のついたピクセル(画素)の集合体であり、空間分解能はピクセルの大きさによって異なります。そのため、ピクセルの大きさは、使用したデータ自体の分解能や解析手法の違いによって異なりますので、一概には言えませんが、だいち2号の高分解モードのデータを国土地理院が解析したSAR干渉画像の1ピクセルの大きさは、およそ11メートルです。
SAR干渉画像は様々な要因によってピクセル単位で色が変化してしまうことから、変動の有無は、周辺の色と異なる色のピクセルが連続して分布しているかどうかを見て判断しており、目安として十数個以上連続して周辺の色と異なっている場合は、何らかの変化があると言えます。例えば、色が異なるピクセルが15行×15列(東西南北に連続して15個)で連続している場合、幅180メートル×長さ180メートルの範囲で変動があったことが分かります。したがって、SAR干渉画像から検出できる変動のサイズは、百数十メートルと言えるでしょう。
地理院地図で閲覧できるSAR干渉画像は地理院地図の地理院タイル仕様に基づく投影法となっています。
計測自体の精度は、原理的にmmオーダーまで可能です。しかし、SARデータには、気象条件や観測条件等により、様々な誤差が含まれているため、すべてのSAR干渉画像が同じ精度を持っているわけではありません。一般的には数cm程度の精度になります。
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誤差ではありませんが、一番影響があるのは「干渉しない」ことです。「干渉しない」ことを「非干渉」といい、非干渉の領域では、SAR干渉画像から変動を計測することはできません。
干渉SARの誤差としては、軌道による誤差、地形による誤差、電離層による誤差、大気中の水蒸気擾乱による遅延誤差などさまざまな要因による誤差があり、場合によって10cmを超えることがあり、注意が必要です。
詳しくは干渉SARの誤差を御覧ください。
干渉SARの大気中の水蒸気による誤差については
干渉SARの誤差を御覧ください。
だいち2号は、北行軌道の場合は午前0時頃、南行軌道の場合は正午頃、日本上空を観測します。この時間帯の気象を確認することで、大気による誤差がSARデータに含まれているかを推定することができます。地理院地図の詳細情報の日付をクリックすると、観測日の雨雲の動きを示す日本気象協会のホームページにジャンプし、観測時間帯の気象条件を確認することができます。降雨がある、湿度が高いといった場合には、大気による誤差が含まれている可能性が高くなります。 特に、日本の夏は高温多湿のため、大気による影響が頻繁に発生します。
SAR衛星から照射される電波は、Xバンド(波長約3cm)、Cバンド(波長約6cm)、Lバンド(波長約24cm)が用いられます。波長が短い電波ほど分解能は高くなりますが、電波の透過性が悪くなって干渉性は低下する性質があります。波長の短いXバンドやCバンドで森林地域を観測すると、電波が地表まで到達せず枝葉で反射することになり、地表面を観測することはできません。しかも、樹木の枝葉は、揺れたり、生長によって絶えず変化することから干渉性が著しく低下し、非干渉になります。
だいち2号は、波長約24cmのLバンドという波長の長い電波を用いており、森林地域に照射した場合、電波の一部は枝葉を透過し、幹や地表面からの反射を受信します。そのため森林地域でも干渉する場合がありますが、繁茂の状態や密集度によって、透過性が変わることから植生の影響を受けることがあります。また、田畑では耕作や田に水を張る等、短期間で地表面の状態が大きく変化するため、干渉性が低下します。
SAR干渉解析では、干渉画像を作成する過程で地表面の起伏による干渉縞(地形縞という)を含んだ画像が得られます。この地形縞は、DEMをもとに作成したシミュレート画像を利用することで除去することができます。DEMから作成したシミュレート画像とSARで観測した画像が異なる場合、その場所ではその差が位相差として画像に表われ、変動があるかのように見えます。
詳しくはは干渉SARの誤差を御覧ください。
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特に注記がない場合は、SARデータは宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運用する陸域観測技術衛星「だいち2号」のLバンド合成開口レーダー(PALSAR-2)、又は「だいち」のLバンド合成開口レーダー(PALSAR)を使用しています。解析に利用したDEMは国内国土地理院の基盤地図情報(数値標高モデル)のうち10mメッシュ(標高)、海外はSRTM3秒メッシュ等を使用しています。
国土地理院では、独自で開発した解析ソフトウエアを使用しています。この解析ソフトウエアの一般への公開・提供は行っておりません。
SAR干渉解析を行うに必要なのは以下の3つです。
SARデータ
SAR衛星は、日本だけではなく海外にも干渉SAR用の人工衛星の運用や計画があります。これらのデータは購入することができます。
解析に必要なハードウエア(コンピュータ)とソフトウエア(プログラム)
解析用のコンピュータは、以前は高価な機器でなければ実用になりませんでしたが、現在は普通のパソコンでも解析できるようになり、市販されているものやフリーで公開されているソフトウェアもあります。
干渉SARの知識
リモートセンシング、画像処理、気象、地殻変動といったさまざまな分野の基礎知識は必要になります。また、解析の流れやどういった誤差があるのかを知っておく必要があります。
定常解析では、日本全国を一年に10回程度解析を実施し、4半期に1回頻度で公開する予定です。 さらに、観測データが蓄積され次第、データの取得期間が数年にわたる解析も行う予定です。
なお、社会的な影響が大きい地震や火山等の災害が発生した場合には、速やかに緊急解析を実施し、その解析結果を公表します。
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地上観測装置がなくても地表面を面的に測定できることから、地震、活火山、地盤沈下、斜面変動といったさまざまな変動を捉えることができます。
地震
干渉SARは、地震に伴う広い範囲に及ぶ地表面の変動を面的に捉えることができることから、どこに変動が集中したかを把握することができます。一般的に変動の大きな箇所で大きな被害が発生するため、地震の発生直後に変動が集中した範囲を提示することで、現地での被害状況を優先的に確認する必要がある範囲を推定するために役立ちます。
火山
干渉SARは、火口付近がガスで覆われるなど、人が近寄れずに地上での観測が困難な状況でも、火山活動に伴う地殻変動を捉えることができます。また、高い空間分解能で変動を捉えることから、非常に狭い範囲の変動も見逃すことなく、どの範囲が防災対応の上で最も注意すべきかを判断する材料として役立ちます。
地盤沈下
干渉SARは、水準測量などによる監視が行われていない範囲でも、地盤沈下の状況を把握できることから、地方公共団体等による効率的な地上監視・観測計画の策定に役立ちます。また、年に数回の観測結果が得られることから、季節的な変動などを捉えることができるので、沈下の原因についての手がかりを与えてくれます。
斜面変動
干渉SARは、現在進行している「目に見えない」わずかな地表の変化を捉えることから、斜面変動の発見や、そこでの対策の効果を確認することに有効です。また、様々な地理空間情報と重ね合わせることで、今後注視する必要性が高い箇所を示す防災の情報の一つとして役立ちます。
公開しているSAR干渉画像を引用する際には国土地理院コンテンツ利用規約に従う必要があります。
また、ここで公開しているSAR干渉画像は、国土地理院が解析したものであり、だいち(ALOS)/PALSARデータの所有権は経済産業省(METI)及び宇宙航空研究開発機構(JAXA)に、だいち2号(ALOS-2)/PALSAR-2データの所有権はJAXAにあります。SAR干渉画像を引用する際には、その旨を明記し、SAR干渉画像には、次の例のようにクレジットを明記してください。
だいち(ALOS)/PALSARの場合:
『解析:国土地理院 原初データ所有:JAXA、METI』
『 Analysis by GSI from ALOS raw data of JAXA, METI 』
だいち2号(ALOS-2)/PALSAR-2の場合:
『解析:国土地理院 原初データ所有:JAXA』
『 Analysis by GSI from ALOS-2 raw data of JAXA 』
GNSSは地表の変動を3次元(東西、南北、上下)で捉えるのに対し、干渉SARが計測できるのは、人工衛星と地表を結ぶ直線の方向(衛星-地表視線方向)の1次元です。したがって、GNSSから得られる変動量を、SAR衛星の視線方向に変換する必要があります。
SAR干渉画像から得られる変動が、全て地盤沈下のみの変動であり、水平成分の変動はゼロと仮定します。その場合の沈下量は、地表への電波の入射角と、地表の変動の向きの幾何学的関係から求められます。
例えば入射角が32.5度の場合は、衛星視線方向の変動量の約1.2倍、39.5度の場合は約1.3倍が沈下量と考えられます。
地理院地図で見ることができます。地理院地図のSAR干渉画像の格納場所は 情報 >全て >基準点・測地観測 >干渉SAR です。
そのほか多くのGISソフトウェアは地理院タイルを追加して利用することが可能です。詳しくは地理院タイルの仕様を御覧ください。
また、だいちの干渉SARのGeoTIFF形式の画像は、地理院地図からダウンロードできます。地理院地図の干渉SARの各画像のレイヤの右端の「解説」を選択すると諸元情報の画面が開き、その表からGeoTIFF形式を選択するとダウンロードできます。他の形式の画像の提供の希望する場合は、国土地理院技術資料とその提供についてを御覧ください。