最終更新日:2014年5月7日

2013年10月15日フィリピン・ボホール島の地震に伴う地殻変動

合成開口レーダー(SAR)解析による地殻変動

作成:2013年11月8日 English version of this page

地殻変動の特徴

2013年10月15日にフィリピン・ボホール島でMw7.1(USGS)(Mw7.2: PHIVOLCS)の地震が発生しました.カナダ宇宙庁(CSA)のRADARSAT-2の合成開口レーダー(SAR)画像を用いて,地震前後の画像を精密に比較する手法(ピクセルオフセット法)を適用することにより,面的な地殻変動を捉えることに成功しました.
  • 最大1mを超える地殻変動が,島の北西部に集中しています.
  • 地殻変動集中域は,東北東-西南西の方向に長さ約50kmの帯状に見られます.
  • 地殻変動集中域の南側(赤色)では地面が衛星に近づき(隆起もしくは西向きの動きで説明可能),北側(青色)では地面が衛星から遠ざかっています(沈降もしくは東向きの動きで説明可能).
  • 北東部に,長さ約5kmの変位の不連続が見られます.その付近では、南側が隆起する地表地震断層が出現していることが報告されています.
  • 観測された地殻変動の特徴は,南南東傾斜の断層による逆断層滑りによって生じるものと調和的です.
  • SAR振幅画像を利用した加色混合法による解析から,震源領域西側のLoonからMaribojocにかけて約10kmの海岸線が,海側に移動(離水)したと推測されます.
なお,今回の結果は速報であり,より詳細な分析により,今後内容が更新されることがあります.

ピクセルオフセット画像[PNG: 1.43MB]
赤色の領域は衛星に近づく変動(隆起もしくは西向きの動きで説明可能)を,青色の領域は衛星から遠ざかる変動(沈降もしくは東向きの動きで説明可能)を示しています.本解析で使用した衛星は,西側上空から地上を見下ろしてレーダーを照射しています(入射角:約34°,衛星進行方向:約N11°W).

ピクセルオフセット画像拡大図と変位断面図[PNG: 291KB]
左図は地殻変動域の北東部(図1白枠)の拡大です.右図は,図1の測線A-B及びC-Dにおいて観測された地表変位(赤線)の断面図です.測線A-Bには,変位に大きな跳びが見られます.地表地震断層による変位の食い違いを示唆していると考えられます.

加色混合法画像[PNG: 1.98MB]
【加色混合法により捉えられた海岸線変化】
地震前に海だったところが地震後に陸となった場合(散乱強度が増加)には赤色に,陸だったところが海となった場合(散乱強度が減少)には水色で表されています.

地震概要

地震発生時刻 2013年10月15日 00時12分 (UTC)
震源位置 9.877°N,124.118°E 深さ:20.7km (USGS)
9.86 °N,124.07°E 深さ:12km (PHIVOLCS)
マグニチュード Mw=7.1 (USGS), Mw=7.2 (PHIVOLCS)

分析に使用した人工衛星

RADARSAT-2(カナダ宇宙庁)

広報・講演・論文発表

Kobayashi, T. (2014), Remarkable ground uplift and reverse fault ruptures for the 2013 Bohol earthquake (Mw 7.1), Philippines, revealed by SAR pixel offset analysis, Geoscience Letters, 1:7, doi:10.1186/2196-4092-1-7. [html] [PDF: 1.81MB]

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研究官 小林 知勝 (KOBAYASHI Tomokazu)029-864-6156
総括研究官 飛田 幹男 (TOBITA Mikio) 029-864-2477

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関連リンク

過去のピクセルオフセット法適用事例(2005年パキスタン北部地震)1
過去のピクセルオフセット法適用事例(2005年パキスタン北部地震)2
過去の加色混合法適用事例1(2004年スマトラ島沖地震・インド洋津波)
過去の加色混合法適用事例2(2007年スマトラ島南部沖地震)

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