最終更新日:2008年2月25日

2008年スマトラ島西方沖シムルエ島の地震

合成開口レーダー(SAR)解析による地震に伴う地殻変動

地殻変動

干渉画像[PNG: 514KB]
  1. 2008年2月20日にスマトラ島西方沖のシムルエ島(シムル島、シムルー島、Plau Simeulue)でマグニチュード7.4の地震が発生し、3名の死者がでました(2008年2月22日現在)。
  2. この地震による地殻変動を明らかにするため、日本の地球観測衛星「だいち」搭載の合成開口レーダーPALSARで(2006年10月3日と2008年2月21日に)撮影した画像データを干渉解析し、SAR干渉画像を作成しました。
  3. 作成した干渉画像から、西南西上空(仰角約42°)の人工衛星に向かう向きに最大約59cmの地殻変動が観測されました。
  4. この干渉画像を元に震源断層モデルを作成しました。NW-SE方向に伸びるスンダ海溝沿いの長さ約45kmの領域が約2.6m滑ったと推定されました。
  5. 今回の地震の震源域は、2004年と2005年のスマトラ巨大地震の2つの震源域の間に位置します。私達の研究グループは、2つの地震の震源域には約50kmの隙間があることを、2005年10月の地震学会で発表していました。今回はその隙間付近で長さ約45km(暫定値)の断層が動いてMw7.4の地震が発生し、隙間を埋めたことになります。これで、約1,670kmの長大な破壊域がつながったことになります。
  6. 2007年9月12日には、南側のスマトラ島南部沖でMw8.4の巨大地震が発生しました。
  7. 2004年から2008年のわずか3年2ヶ月間に、スンダ海溝沿いの約2,300kmの長大な領域の大部分が巨大地震や大地震の震源断層の活動域となりました。
  8. パダン(Padang)沖の長さ約370kmの領域だけが、最近では活動していないことになります。この付近では、1797年にマグニチュード8クラスの地震が発生しています。
  9. また、合成開口レーダー画像を用いた破壊域位置の分析が有効であることが裏付けられました。

震源断層モデル

矩形断層と一様滑りを仮定した暫定的な震源断層モデルを示します。
Strike, Dip, RakeをHarvard CMT解を初期パラメータとして弱く拘束し、断層パラメータを推定しました。
震源断層モデル

推定された断層パラメータは、次のとおりです。
2.519N, 96.130E, D=18.4km, L=44.8km, W=50.6km, Strike=302, Dip=4, Rake=96, Slip 2.64m, Mw=7.52 (Rigidity=40GPa)

スンダ海溝沿いの地震

地震の空白域

分析に使用した人工衛星 と センサー

日本の地球観測衛星 「だいち」(ALOS)に搭載されたPALSARセンサー

地震概要

地震発生時刻 2008年2月20日 15時08分 (現地時間)、17時08分 (JST)、08時08分 (UTC)
震源位置 2.778°N, 95.978°E 深さ:35 km(USGS, 2008年2月22日現在)
マグニチュード 7.5 (USGS, 2008年2月22日現在)
死者数  3名(USGS, 2008年2月22日現在)

広報・講演・論文発表

飛田幹男・小沢慎三郎・矢来博司・西村卓也・水藤尚・宇根寛・今給黎哲郎・雨貝知美・林文,2007年スマトラ南部地震の地殻変動・地震断層と断層モデル,月刊地球,354,181-188,2009.

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