最終更新日:2016年9月2日

2016年8月24日イタリア中部の地震に伴う地殻変動

合成開口レーダー(SAR)解析による地殻変動

作成:2016年8月26日 最終更新日:2016年9月2日 English version of this page

地殻変動の特徴

2016年8月24日にイタリア中部でMw6.2(USGS)の地震が発生しました。震源域では建物が倒壊し死者が出るなど、大きな被害が生じています。
この地震に伴う地殻変動を把握するため、日本の地球観測衛星「だいち2号」(ALOS-2)に搭載された合成開口レーダー(PALSAR-2)のデータを使用してSAR干渉解析を行いました。

2016年8月31日までに観測されたデータから、以下のことがわかりました。
  • 震央付近で衛星から遠ざかる向きの変動が見られます(図1、図2)。
  • 2.5次元解析による準上下成分(図3)では、震央付近では沈降が見られます。沈降量はアックーモリ(Accumoli)付近で最大となり、約20cmです。変動の準東西成分(図4)では、沈降域の東部で最大約20cmの西向きの変位が見られます。また、沈降域の東側では東向き、西側では西向きの数cmの変位が見られます。
  • 5cm以上の沈降が見られる範囲はノルチャ(Norcia)のやや東からアマトリーチェ(Amatrice)付近にかけて、北北西-南南東方向の約20kmにわたっています。震源断層の長さも同程度と考えられます。
  • 変動域の北東部では、変位の不連続線が約5kmにわたって見られ、地表地震断層が現れていると考えられます。
  • 観測された地殻変動の特徴は、今回の地震のメカニズムが北北西-南南東走向の節面を持つ正断層型であったことと調和的です。

※ より詳細な分析等により、今後内容が更新されることがあります。

なお、今回の地震の南側では、2009年4月6日にラクイラ(L'Aquila )付近でM6.3の地震が発生しており、「だいち」(ALOS)のデータの解析により地殻変動が捉えられています(関連リンク参照)。

干渉画像

(画像をクリックすると拡大表示できます。)

図1北行干渉画像

図1 [PNG: 1.38MB]

図2南行干渉画像

図2 [PNG: 1.30MB]


番号
観測日 観測時間
(UTC)
衛星
進行
方向
電波
照射
方向
観測
モード
*1
入射角
(震央)
垂直
基線長
KMZ
1 2015-09-09
2016-08-24
23:00頃 北行 F-F 41° +199m 4.24MB
2 2016-05-25
2016-08-31
11:15頃 南行 F-F 36° -88m 2.43MB

*1 F:高分解能(10m)
(参考: ALOS-2プロジェクト/PALSAR-2(JAXA)

解析:国土地理院   原初データ所有:JAXA
本成果は、地震予知連絡会SAR解析ワーキンググループの活動を通して得られたものです。

変動の準上下成分及び準東西成分

(画像をクリックすると拡大表示できます。)

図3準上下成分

図3. 準上下成分 [PNG: 1.38MB] [KMZ: 0.99MB]

図4準東西成分

図4. 準東西成分 [PNG: 1.30MB] [KMZ: 1.16MB]

 

【2.5次元解析】
複数の方向からの観測データによる干渉画像を利用して、変動を準上下・準東西方向に分離することができます。
図52.5次元解析の概念図
図5. 2.5次元解析の概念図

地震概要

地震発生日時 2016年8月24日 3時36分(現地時間)、10時36分(JST)
2016年8月24日 1時36分(UTC)
震源位置 42.707°N、13.176°E、深さ10.0 km (USGS、2016年9月2日現在)
マグニチュード Mw=6.2 (USGS、2016年9月2日現在)
死者 294人(2016年9月2日現在)

分析に使用した人工衛星

日本の地球観測衛星 「だいち2号」(ALOS-2)

広報・講演・論文発表

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