最終更新日:2023年3月28日

地磁気を知る

地磁気とは

地磁気(偏角)の世界磁気モデルを表しています。(出典:アメリカ海洋大気庁(NOAA)HP)

地磁気(偏角)の世界磁気モデル(青:西偏、赤:東偏)
(出典:アメリカ海洋大気庁(NOAA)HP)

 地球がもつ固有の磁場を地磁気と呼びます。地磁気の99%は地球内部を起源とする主磁場で構成されていますが、主磁場は数年から数百年の時間スケールで変化しています。また、地球の極と地磁気の極は一致しないため、地図の北と方位磁石が指す北(磁北)は場所によって大きく変わります。磁北が真北より東側にある場合を東偏、西側にある場合を西偏と呼び、現在日本では南鳥島(偏角0度)を除く全ての地域で西偏となっています。

偏角とその活用

電子地形図25000を例として、地図の北と磁北のずれを表しています。

電子地形図25000の例から見る地図の北と磁北のずれ

 地球が磁石の性質をもっているおかげで、私たちは方位磁石を使って方角を知ることができます。しかし、実は方位磁石が示す北(磁北)は地図の北からずれており、しかもそのずれ(偏角)は場所や時間によって変わります。例えば、磁気図2020.0年値において、札幌では磁北の向きが地図の北よりも約10度西にずれますが、那覇ではそのずれは約6度になります。日本の偏角の分布は、地理院地図でいつでもどこでも確認できます。また、国土地理院発行の2万5千分1地形図及び電子地形図にも記載されています。
 このような正しい偏角の情報を知らなければ、登山などをする際に地図の向きが合わずに道に迷うおそれがあります。また、飛行機の航路を決めたり、日影制限のための建物の北側を決めたりする際にも、偏角の情報が利用されています。国土地理院が提供する地磁気データをGISのソフトウェアやスマホのアプリなどで活用することで、地図がより安全・安心に使いやすくなります。

地磁気の変化

 地磁気は、時間によって変化します。地磁気は、擾乱のない日では、1日周期で規則的な変化を繰り返しています。時間変化は、測地観測所における地磁気連続観測毎分値グラフ地球電磁気連続観測毎分値グラフから見ることができます。また、地磁気は、長期にわたってゆったりと変化しています。これは、永年変化と呼ばれています。

1970年からの永年変化のアニメーション

 1970年から2020年の偏角の永年変化の様子を表したアニメーションです。図中の赤線は、日本列島における標準的な地磁気分布を等値線で描画したものです。

 全国平均で、過去50年では約1.4度、西向きの偏角がそれぞれ大きくなったことが分かりました。また、変化の割合が一定ではなく、東日本では2000年から2010年の間は変化が一旦停滞しているのに対し、西日本では1970年から2020年まで停滞することなく増加し続けていることが分かります。
 *永年変化のアニメーションは、真北を基準に反時計回り(西回り)を正として表現しています。

 
1970年から2015年までの偏角の変化を表しています

永年変化のグラフ

 測地観測所における偏角の永年変化を表したグラフです。
 1960年から2000年まで西向きの偏角が大きくなっていますが、2000年から2010年の間は一旦停滞し、2010年以降再び西に傾き始めました。
*永年変化のグラフは、真北を基準に反時計回り(西回り)を正として描画しています。
測地観測所における偏角の永年変化を表したグラフです。

地磁気の要素(成分)

地磁気の要素を表した模式図です。
 地磁気の成分は、偏角、伏角、全磁力、水平分力、鉛直分力の5種類で表現されます。特に、真北と磁北のずれを表す偏角は、方位磁石と地図の向きを合わせるために利用され、私たちの生活に直結する重要な情報です。例えば、国土地理院の電子地形図25000には偏角が記載されており、磁北と地図の向きとを正確に合わせることができます。
 地磁気は、大きさと方向を持つベクトル量ですので、 ある場所の地磁気を表すためには、下の要素のうち独立な3つの要素を使わなければなりません。 例えば、(F,D,I)、(H,D,Z)、(X,Y,Z)などの組み合わせが使われます。
F 全磁力 地磁気の大きさ 地球磁場の強さ
D 偏角 Fが水平面内で真北となす角度 時計回りを正とする(*)
I 伏角 Fが水平面となす角度 水平面より下方を正とする
H 水平分力 水平面内での地磁気の大きさ 磁北方向を正とする
Z 鉛直分力 鉛直面内での地磁気の大きさ 鉛直下方を正とする
X 南北成分 南北方向軸上での地磁気の大きさ 真北を正とする
Y 東西成分 東西方向軸上での地磁気の大きさ 東を正とする









*一般的に偏角は時計回り(東回り)を正として表現されますが、日本周辺は西偏であるため、
当院が公開している磁気図や地磁気値計算サイトは、反時計回り(西回り)を正として表現しています。

地磁気の単位

 地磁気の大きさの単位には、SI単位系の磁束密度の単位である、テスラ(T)を使います。 地球の磁場はとても弱いので、テスラの10の-9乗のナノテスラ(nT)をよく使います。1992年以前の日本では、CGS単位系のガウス(G)と呼ばれる単位を使っていました。ガウスの10の-5乗はガンマ(γ)と呼ばれていました。SI単位系のナノテスラとCGS単位系のガンマは同じ大きさを示します。
 地磁気の方向の単位には、一般に使われている角度の単位の度(°)、 または分(′)を使います。度と分の両方で表示する場合もあります。