GIS次世代情報基盤の構築手法及び活用に関する調査研究
GIS次世代情報基盤の構築手法及び活用に関する調査研究(5/7)
内容
4.1 概要
国や地方公共団体が業務で利用する地図、例えば、管内図や都市計画図、河川管理図、道路管理図、あるいは各種の業務用GISで利用される基盤地図データは、それぞれの事業主体が、整備範囲や業務に必要なコンテンツを定め、更に必要な精度を確保するため作業の方法を規定して民間の測量会社に発注するのが一般的である。
しかし地図の利用目的によっては、例えば、単なる背景図や参考付図程度の利用ならば、それほどの精度を必要しない。
そのような場合、住宅地図等の市販の地図データや民間企業が業務で使用している地図データを利用できれば、迅速にデータを準備でき、経費も安く済む。
このように、行政で民間地図データを利活用するにはどうしたらよいか、民間データの利活用の方法について、調査研究を行った。
4.2 品質クラス及びガイドライン(案)の作成
国土地理院では「品質要件及び品質評価手順の基準(案)」で、完全性、位置正確度、時間正確度、主題正確度といった空間データに要求される品質要素ごとに地物を分類する「地物分類基準(案)」を示しているが、本研究ではこの「地物分類基準(案)」に倣い、また、都市計画GISデータの品質クラスをモデルにして、都市計画基礎調査、危機管理、固定資産調査、道路施設管理、建築指導、国勢調査の6つの行政実務について業務分析を行い、それぞれの業務に利用できる民間地図及び要求される品質要素の検討結果より、主題データ及び白地図について求められる品質クラス(案)を作成した(表-4、表-5)。
これらの結果をもとに、行政機関がその業務に利用するために必要な品質評価基準の定義方法や手順をまとめた「民間データの利活用に関するガイドライン(案)」を作成した。
また、上記「民間データの利活用に関するガイドライン(案)」をもとに、民間地図会社の地図データが持つ属性情報を利用する例(図-8)、民間の衛星画像データを業務用地図背景として利用する例、民間企業が自らの業務のために整備した地図データを利用する例について、品質評価の定義方法や手順を示しながら、実例を紹介した。
図-8 属性情報利用のための建物重心位置の比較(大垣市)
4.3 適合性水準品質ツールの作成
先に示した「民間データの利活用に関するガイドライン(案)」の評価手順によると、行政が民間地図データを調達する際、その品質基準を具体的な数値で定義する必要がある。
この定義は、例えば「完全性が90%なら合格」と、数値で要件を定義するわけであるが、この数値で定義された品質の地図とはどのような地図なのか、行政の担当者が実際に頭の中でイメージするのは難しい。
このため、地図の品質要件で定義した数値を視覚的に表示するソフトウェア「適合性水準品質ツール」を開発した(表-6、図-9、図-10)。このツールは、品質要素のうち、完全性、論理一貫性、位置正確度の3つについて、地図の品質、精度の誤差率を視覚化し、分かりやすくイメージできるようになっている。また、建設行政業務に携わる地方公共団体職員から本ソフトウェアの評価を受けると同時に、品質要件の定義等に関するヒアリング調査を行なった。その結果、品質要件を理解する上である程度有効であるという意見があると同時に、機能面での改良が必要との声もあった。
図-9 適合性水準品質ツールの画面(不完全ポリゴン)
図-10 適合性水準品質ツール画面(建物と道路の交錯)
国や地方公共団体が業務で利用する地図、例えば、管内図や都市計画図、河川管理図、道路管理図、あるいは各種の業務用GISで利用される基盤地図データは、それぞれの事業主体が、整備範囲や業務に必要なコンテンツを定め、更に必要な精度を確保するため作業の方法を規定して民間の測量会社に発注するのが一般的である。
しかし地図の利用目的によっては、例えば、単なる背景図や参考付図程度の利用ならば、それほどの精度を必要しない。
そのような場合、住宅地図等の市販の地図データや民間企業が業務で使用している地図データを利用できれば、迅速にデータを準備でき、経費も安く済む。
このように、行政で民間地図データを利活用するにはどうしたらよいか、民間データの利活用の方法について、調査研究を行った。
4.2 品質クラス及びガイドライン(案)の作成
国土地理院では「品質要件及び品質評価手順の基準(案)」で、完全性、位置正確度、時間正確度、主題正確度といった空間データに要求される品質要素ごとに地物を分類する「地物分類基準(案)」を示しているが、本研究ではこの「地物分類基準(案)」に倣い、また、都市計画GISデータの品質クラスをモデルにして、都市計画基礎調査、危機管理、固定資産調査、道路施設管理、建築指導、国勢調査の6つの行政実務について業務分析を行い、それぞれの業務に利用できる民間地図及び要求される品質要素の検討結果より、主題データ及び白地図について求められる品質クラス(案)を作成した(表-4、表-5)。
これらの結果をもとに、行政機関がその業務に利用するために必要な品質評価基準の定義方法や手順をまとめた「民間データの利活用に関するガイドライン(案)」を作成した。
また、上記「民間データの利活用に関するガイドライン(案)」をもとに、民間地図会社の地図データが持つ属性情報を利用する例(図-8)、民間の衛星画像データを業務用地図背景として利用する例、民間企業が自らの業務のために整備した地図データを利用する例について、品質評価の定義方法や手順を示しながら、実例を紹介した。
品質クラス | 品質名称 | 適用範囲 | 品質サブクラス | 備考 | |
A | 現地調査を補助する属性情報として利用できる |
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A-1 | 属性情報を既存の地図と結合処理して利用可能 | 住宅地図の住居属性情報など |
A-2 | 写真、画像にて現況が把握できる | 空中写真、衛星写真画像など | |||
B | 位置・情報の検索に利用できる |
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B-1 | 緊急時の対応ができるよう、すべての情報が網羅されている | 道路規格、重要拠点施設情報など |
B-2 | 位置・情報の検索に効果的である | 代表的なランドマーク表示など |
品質クラス | 品質名称 | 適用範囲 | 品質サブクラス | 備考 | |
C | 交渉記録、苦情対応、図面作成(申請図・管理図・調査基本図など)の基盤図として利用できる |
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C-1 | 調査の現地確認、調査内容記入図面として利用できるよう、現地状況が確認できる | 建物形状ポリゴン |
C-2 | 位置特定が容易に判断できる | 道路形状、建物形状 | |||
C-3 | 法規制(都市計画法・建築基準法)に対応できる精度を有する | すべての現況地形情報 |
図-8 属性情報利用のための建物重心位置の比較(大垣市)
4.3 適合性水準品質ツールの作成
先に示した「民間データの利活用に関するガイドライン(案)」の評価手順によると、行政が民間地図データを調達する際、その品質基準を具体的な数値で定義する必要がある。
この定義は、例えば「完全性が90%なら合格」と、数値で要件を定義するわけであるが、この数値で定義された品質の地図とはどのような地図なのか、行政の担当者が実際に頭の中でイメージするのは難しい。
このため、地図の品質要件で定義した数値を視覚的に表示するソフトウェア「適合性水準品質ツール」を開発した(表-6、図-9、図-10)。このツールは、品質要素のうち、完全性、論理一貫性、位置正確度の3つについて、地図の品質、精度の誤差率を視覚化し、分かりやすくイメージできるようになっている。また、建設行政業務に携わる地方公共団体職員から本ソフトウェアの評価を受けると同時に、品質要件の定義等に関するヒアリング調査を行なった。その結果、品質要件を理解する上である程度有効であるという意見があると同時に、機能面での改良が必要との声もあった。
品質要素 | 品質副要素 | 評価する内容 |
完全性 | 過剰・漏れ | 【データに欠落や重複がないか?】
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論理一貫性 | データ相互の関係 | 【地物が重っていないか? 図形が不完全ではないか?】
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位置正確度 | 平面位置正確度 | 【地物の位置座標や形は正確か?】
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図-9 適合性水準品質ツールの画面(不完全ポリゴン)
図-10 適合性水準品質ツール画面(建物と道路の交錯)