GIS次世代情報基盤の構築手法及び活用に関する調査研究

GIS次世代情報基盤の構築手法及び活用に関する調査研究(4/7)

3.5 モデルデータの試作と実証実験
平成14年度に改訂した「建設行政空間データ基盤製品仕様書(案)」に基づき、同年、運用実験用モデルデータの試作と実証実験を行った。
対象地域は、岐阜県大垣市内の国土交通省の直轄河川及び直轄国道が交わる約3km2の範囲(図-5)である。
データ試作に使用した基盤地図データは表-3のとおりである。

大垣市の対象範囲
図-5 データ試作の対象範囲(岐阜県大垣市)

表-3 データ試作のための基盤地図データ
資料 提供者
河川基盤地図データ 国土交通省中部地方整備局木曽川上流工事事務所
道路台帳附図 国土交通省中部地方整備局岐阜国道工事事務所
大垣市都市計画基本図データ 岐阜県大垣市
大垣市地番現況図データ 岐阜県大垣市


この実証実験では「建設行政空間データ基盤」の有効性を確かめるため「建設行政空間データ基盤管理システム」の開発を行った。建設行政空間データ基盤管理システムとは、「建設行政空間データ基盤製品仕様書(案)」に定義されたデータ(共通データ)を運用管理するための仕組みであり、ネットワーク上に分散配置された各事業者のデータサーバのデータを、クライアントの要求に応じて提供するもので、図-6に示す構成となっている。
システムのイメージ
図-6 建設行政空間データ基盤管理システム

大垣市の表示結果
図-7 実証実験の表示結果(大垣市)


今回の実証実験の結果から、建設行政空間データ基盤製品仕様書(案)のデータ仕様に基づく、応用スキーマの有効性やXML形式によるデータ交換が可能であることが実証され、また、ネットワーク上に分散するサーバ群に存在している各基盤データを、クライアント側で意識することなく表示できることが確認された(図-7)。

表示されたデータそのものに注目してみると、各データが持つ個々の内容は、個別の事業に特化したデータのため、それぞれの事業が要求するデータレベルとは違うものとなることが分かった。
例えば、道路基盤データの道路部分のデータは、道路管理用に特化されたものであるため、車道、歩道、中央分離帯など詳細な構成要素に細分された仕様となっている。
一方、他の事業者は、道路縁またはそれで構成される領域のデータをのみを必要としている。このため今回は、道路基盤データの詳細な構成要素からシンプルな道路データを自動的に生成する処理をゲートウェイサーバで行った。

また、植生界データについては、大縮尺数値地形データ製品仕様書(案)に従い、建設行政空間データ基盤上でも植生界と植生記号で構成されるデータ仕様、すなわち、各地物データ相互の幾何学的関係の無いデータとした。
しかし、実際にGISのデータとして利用するには、このようなデータでは不十分であり、植生区域として定義できるデータ仕様にすることが望ましい。
このように、各事業者のデータ仕様に起因する課題をどのように解決していくか検討が必要である。

今回、実証実験で示された結果は、面積が約3平方kmのごく狭い範囲であり、また試作したデータ群も4つに限定されていたため、データ容量は微少で、実験システムの規模も小さいものであったが、実際には、今回の実験とは比較にならないほど巨大なデータを取り扱わなければならず、またシステムも相当大規模なものになるので、実証実験で得られた結果をそのまま適用しても、様々な問題が発生することが予想され、解決しなければならない課題も少なくないと思われる。