最終更新日:2008年6月25日

平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震に伴う地殻変動と震源断層

合成開口レーダー(SAR)解析による地殻変動と断層

作成:2008年6月25日 更新: 2008年6月25日

地殻変動の特徴

  1. 岩手県奥州市胆沢区付近から、宮城県栗原市西北部の花山周辺に至る長さ約30km、幅約10kmの帯状の地域に地殻変動の集中を示すまだら模様が見られます。この北北東-南南東方向に走る地殻変動集中帯の中には、1m以上の変位も見られます。

  2. 地殻変動集中帯を挟んで、東(東南東)側は、集中帯に向かう向きに約1m変動し、西(西北西)側は、集中帯に向かう向きに約1m変動したことがわかりました。これは、西北西-東南東方向に地殻が短縮したことを示しています。

  3. 6月23日に気象庁が再計算した6月14日~22日の期間の余震分布と地殻変動集中域は、その水平位置が良く一致します。

  4. 電子基準点(図上で◇印)「胆沢」の東約5kmには、北上低地西縁断層帯の南端である出店(でたな)断層がほぼ南北に走りますが、出店断層の浅部はずれていないことが確認されました。これは、電子基準点「胆沢」で観測された変動量が、3cm未満であることと調和的です。

  5. 東北大学、産業技術総合研究所、国土地理院等が、現地調査で確認した県道49号線沿い地表変状(地表変位)の位置(図上で×印)と、その付近に伸びる地質断層(茶色の点線)は、地殻変動集中帯の東縁に位置します。

  6. GEONETデータを元に推定した矩形断層一様すべりの震源断層モデルは、干渉画像の地殻変動パターンを大局的に説明しており、震源断層をおおむね近似できています(図は準備中)。しかし、断層モデルの長さが短めであり、また、数kmスケールの小さな地殻変動パターンは説明しきれません。今後、断層面上のすべり分布を推定するなど、分析をすすめる予定です。

西南西からの干渉画像と余震分布、矩形断層、活断層、地質断層、地表変状

画像:西南西からの干渉画像と余震分布、矩形断層、活断層、地質断層、地表変状

東南東からの干渉画像と余震分布、矩形断層、活断層、地質断層、地表変状

画像:東南東からの干渉画像と余震分布、矩形断層、活断層、地質断層、地表変状

分析方法

干渉解析における数値地形データは、国土地理院の「数値地図50mメッシュ(標高)」、「日本のジオイド2000」及び「世界測地系移行のための座標変換ソフトウェアTKY2JGD」を用いて作成したDEHM(Digital Ellipsoidal Height Model)を使用した(参考文献1,2)。
 地震後の軌道データは、ALOS軌道情報(予測値)を使用した。これは、RARRによる軌道情報のひとつで、後日提供されるALOS高精度軌道情報と比較して大きな誤差が含まれる。そのため、得られた地殻変動分布図にも数10cmの誤差が含まれることがある。この誤差を軽減するため、GEONET(国土地理院が全国に展開しているGPS連続観測網)とのデータ融合を行った(参考文献1)。

参考文献:
  1. 飛田幹男・宗包浩志・松坂 茂・加藤 敏・矢来博司・村上 亮・藤原 智・中川弘之・小澤 拓(2005):干渉合成開口レーダの解析技術に関する研究,国土地理院時報,106,37-49.[PDF: 1.76MB]
  2. 飛田幹男(2002):日本のディジタル楕円体高データ(DEHM)の作成2),地球惑星科学関連学会2002年合同大会 講演要旨.

分析に使用した人工衛星 と センサー

日本の地球観測衛星 「だいち」(ALOS)に搭載された合成開口レーダー(PALSAR)

広報・講演・論文発表

広報・講演・論文発表一覧(準備中)

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問い合わせ先

地殻変動研究室 担当者
 室長     飛田 幹男(TOBITA Mikio) 029-864-6925 (統括,合成開口レーダー解析,Web作成・更新)
 主任研究官 矢来 博司 (YARAI Hiroshi) 029-864-6156 (合成開口レーダー干渉解析)
 主任研究官 小沢 慎三郎(OZAWA Shinzaburo) 029-864-6262 (震源断層モデル推定)
 主任研究官 西村 卓也(NISHIMURA Takuya) 029-864-6549 (リアルタイムGPS,断層モデル)
 研究官    水藤 尚 (SUITO Hisashi) 029-864-1111(内8241) (余震分布,資料作成)
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