最終更新日:2005年5月27日

2004年スマトラ島沖地震・インド洋津波 ニコバル諸島における地震・津波に伴う海岸線変化

衛星レーダ画像(ERS-1/2)によるニコバル諸島の海岸線変化(沈降)

画像 手作業により海岸線を判読し、海をマスクした変化抽出判読画像
手作業により海岸線を判読し、海をマスクした変化抽出判読画像
画像 加色混合後の変化画像。この画像を元に左の画像を作成
加色混合後の変化画像。この画像を元に左の画像を作成。
画像をクリックすると、より鮮明な画像が見られます。

海岸線付近の赤色の部分は、浸水域を表します。
濃い赤色部分は、陸地が海に変化した場所です。海になった原因は、地震断層の動きに伴う沈降及び津波による海岸浸食と考えられます。
また、薄い赤色部分は津波の遡上域を表します。津波による植生・人工構造物の破壊により、地震後に滑らかになった場所に相当します。

解説

 図はERS-1及びERS-2衛星が1992年12月27日(地震前)と2005年01月12日(地震後)に撮影したニコバル諸島(インド)のデータから作成したレーダー反射強度変化を表す画像です。反射強度は、表面の粗度(滑らかさ)に依存します。例えば、水面の反射強度は小さく、画像上で黒く表されます。
 地震前後の画像の色を変換した後、加色混合法を用いて反射強度の変化を表しました。
 赤色で示した部分は地震後に反射強度が減少した地域であり、主に大ニコバル(Great Nicobar)島の西部の海岸線に分布しています。特に、濃い赤色部分は、地震の断層運動により生じた地殻の沈降を示しています。
画像 大ニコバル島最南端のIndira Point灯台の位置
 大ニコバル島最南端のIndira Point灯台(右図参照)は、2004年スマトラ島沖地震に伴う地殻変動によって「約4m沈降し、灯台の基礎部分が水没したという報告」があります。上記の変化抽出判読画像からも島最南端の灯台付近の海岸が約600mの幅で水没(沈水)しているのがわかります。

 オリジナルのレーダー画像を使った変化抽出画像では、海面や陸上で、赤または水色になっている場所が見られますが、波の高さや地表面の状況の変化により、反射面の滑らかさが変化したこと等に起因しています。今回のように、海岸線変化抽出が目的の場合には、海岸に着目し、反射強度の変化を調べます。
 シムルエ島の画像の場合には、海面は黒いのに、こちらの画像では黒くありません。このような違いは、レーダー電波の入射角と偏波に起因しています。入射角が小さいほど、海面からの反射強度は強くなります。また、偏波がHHよりもVVの方が海面からの反射強度が大きい性質があります。ここで使用したレーダー画像は、入射角が小さい上、VV偏波なので、海からの反射が無視できず、今回のような海岸線変化抽出には不向きな条件となっています。
 しかし、人間が会話的に海岸線を判読し、海面部分を黒く塗りつぶす作業(所要時間:約2日)を丹念に行うことにより、海岸線変化判読図を作成しました。

レーダー画像諸元と潮位

ここで使用したレーダー画像は、ESAのERS-1及びERS-2衛星搭載のSARセンサーが取得したものです。
解析処理は、スイスのgamma社のSAR解析処理ソフトウェアを用いて、国土地理院が行いました。

人工衛星 ERS-1 ERS-2
観測時刻 1992-12-27 04:08UTC 2005-01-12 04:06UTC
軌道方向 Descending
マイクロ波入射角 約23度(range依存)
マイクロ波周波数 5.30GHz(Cバンド)
マイクロ波波長 5.6564615cm
偏波 VV
衛星高度 約786km
入手データレベル Signal Data (raw)
潮位@Great Nicobar 24cm 32cm

この記事・画像を引用される方へ

著作権等についてはこのページを参照してください。
上画像を引用するときは、その傍に"Analysis by GSI from ENVISAT ASAR raw data"等のクレジットを必ず入れてください。なお、英文表記が不適な記事の場合は、画像の傍に「国土地理院提供」、本文に「ENVISATのデータを使用して・・・」等の文言を入れてください。