合成開口レーダー(SAR)解析による地殻変動と断層
地殻変動の特徴
2010年4月14日に中国青海省でMw6.9(USGS)の地震が発生しました.日本の地球観測衛星「だいち」(ALOS)に搭載された合成開口レーダー(PALSAR)のデータを干渉解析して,大地震に伴う地殻変動を面的に把握しました.
- 最大の被害が生じたと報じられている青海省玉樹(ぎょくじゅ)から西北西に約65kmの範囲に地殻変動が集中しています.
- 最大の地殻変動は玉樹の西北西約10~20kmの区間で0.4m以上です.
- 玉樹付近から西北西約30kmに至る線上の地域で震源断層の一部が地表に達していることが分かりました.
- 今回の地震は,長さおよそ1000kmに及ぶ鮮水河(せんすいが)断層帯の一部である甘孜(かんし)—玉樹断層で起きたと考えられます.
- 干渉画像をもとに推定した矩形断層一様すべり(3枚のセグメントを仮定)の震源断層モデル(暫定)によると,長は約65km,幅は約12~15kmで,鉛直の断層面が左横ずれを生じたと推定されました.最大のすべり量は玉樹に近い断層面の約1.2mです.この断層運動から導かれるモーメントマグニチュードは約6.8となりました.
なお,今回の結果は速報であり,今後観測されるデータを用いた,より詳細な分析により,内容が更新されることがあります.
地震概要
地震発生時刻 |
2010年4月14日 07時49分 (現地時間)、2010年4月14日 08時49分 (JST)
2010年4月13日 23時49分 (UTC) |
震源位置 |
33.224°N, 96.666°E 深さ:17 km(USGS, 2010年4月26日現在) |
マグニチュード |
6.9 (USGS, 2010年4月26日現在) |
死者数 |
2220名(2010年4月26日現在) |
分析に使用した人工衛星 と センサー
日本の地球観測衛星 「だいち」(ALOS)に搭載された合成開口レーダー(PALSAR)
広報・講演・論文発表
- Tobita, M., T. Nishimura, T. Kobayashi, K.X. Hao, and Y. Shindo (2011), Estimation of coseismic deformation and a fault model of the 2010 Yushu earthquake using PALSAR interferometry data, Earth Planet. Sci. Lett., 307, 430-438, doi:10.1016/j.epsl.2011.05.017
- 飛田 幹男,西村 卓也,小林 知勝,PALSAR干渉画像による2010年青海省の地震に伴う地殻変動(日本地震学会2010年度秋季大会).
- Mikio, Tobita, Takuya Nishimura, and Tomokazu Kobayashi, Coseismic Deformation of the 2010 Yushu Earthquake from PALSAR interferometry (8th Joint Meeting of UJNR Panel on Earthquake Research).
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室長 飛田 幹男(TOBITA Mikio)
主任研究官 西村 卓也(NISHIMURA Takuya) 029-864-6549
研究官 小林 知勝(KOBAYASHI Tomokazu) 029-864-6156