最終更新日:2021年7月8日

地理地殻活動研究センター談話会 講演要旨集(2021年)

1.科学的・非科学的カラーマップ
  森下 遊 (宇宙測地研究室)

Crameri et al. (2020, Nat. Commun.) は、jetに代表される旧来のカラーマップは視覚的不均等であり、誤解釈につながるおそれがあることを指摘した。近年、視覚的均等なカラーマップが複数開発されているが、広く認知・利用されているとは言い難い状況である。本発表では、科学的カラーマップの普及を目的として、カラーマップの理論的背景や、適切なカラーマップの選択基準、利用可能な科学的カラーマップを紹介する。また、干渉SARで使用する循環型カラーマップについても議論する。

2.液状化の事前防災・被害軽減に向けた液状化ハザードマップの作成手法の検討と手引き策定
  中埜 貴元 (地理情報解析研究室)

国土交通省(都市局,国土地理院,国総研)では、液状化の事前防災を促し、被害を軽減することを目的として、H30~R2年度にかけて総合技術研究開発プロジェクト「リスクコミュニケーションを取るための液状化ハザードマップ作成手法の開発」を実施した。本研究開発では、液状化ハザードマップを事前のリスクコミュニケーションツールとして位置づけ、その作成手法を検討し、地方公共団体向けの手引きとして策定した。本報告では、この手引きの概要とポイントを紹介する。

日時:令和3年7月16日(金)
開催方法:ウェブ会議形式

1.高校地学における国土地理院の教育支援について
  田中 宏明 (地理情報解析研究室)

 国土地理院では新学習指導要領における社会科の地理の必修化等を受け、主に地理における教育支援を実施している。特に自然災害伝承碑の新設やハザードマップのポータル運営等の防災対応についてはより力を入れて業務を行っているところである。これらの内容は社会科の地理だけにとどまらず、共通部分の多い理科の地学においても応用できると考えている。本日は高校の地学を対象にした地理院地図等の認知度向上に向けた活動などを紹介する。

2.DEMを用いた地形の中分類およびその周辺
  岩橋 純子 (地理情報解析研究室)

 数値地形解析は、地形量(傾斜などの物理量)や、それらを組み合わせてゾーニングしたデータを使って、地形と関係がある事が分かっている様々な事柄のモデリングと推計を行うこと、または、それに役立つデータを作る事を目指している。本発表では、後者の事例の1つとして、数値標高モデル(DEM)を用いた地形の中分類を取り上げ、最近公開した30mメッシュの日本全国の地形分類を紹介すると共に、今後の展望を考察する。

3.東北地方太平洋沖地震の余効変動における粘弾性効果の検討
  桑原 將旗 (地殻変動研究室)

 2011年の東北地方太平洋沖地震の発生後、GNSS連続観測による地表変位の時間発展データから、地震直後の余効変動メカニズムにおける、粘弾性緩和の寄与に関する議論がなされてきた。今回は、Barbot and Fialko(2010)を元に実装された、Relaxというプログラムを用いて、生じた余効変動について、様々なレオロジーを仮定して計算を行い、比較検討を行う。

日時:令和3年3月19日(金) 14時00分~16時00分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)

1.国際測地観測と国連の活動ー全球統合測地観測システム(GGOS)と国連測地準委員会ー
  宮原 伐折羅 (宇宙測地研究室長)

 測地学の目的は、地球の形状、回転、重力場とその時空間変化(GGRF:地球規模の測地基準座標系)を構築し、社会・科学の基盤として提供することである。そのために欠かせない地球規模での測地観測を連携強化する枠組が全球統合測地観測システム(GGOS)である。発表者は、2019年よりGGOS議長を務め、また、測地の連携のために国連が設けた測地準委員会にもメンバーとして参加している。講演では、国土地理院のGGOSと国連における活動を報告する。

2.マルチGNSS-PPPによる電子基準点の迅速な位置座標算出技術の開発
  中川 弘之 (宇宙測地研究室)

 近年の衛星測位の精度・リアルタイム性の向上により、地理空間情報を任意の時期で管理する測地基準座標系への対応が求められている。そこで測地基準座標系の時空間変化を正確に把握するために、本年度より複数の衛星測位システム(マルチGNSS)によるPPPを用いて、迅速に電子基準点の位置を計測するための技術開発を開始した。本講演では、マルチGNSS-PPPのための軌道推定等の現状と、電子基準点のマルチGNSS-PPP試験解析結果について報告する。

★2月13日に発生した福島県沖の地震を受け、2月16日の開催予定より下記の日程に延期いたしました。
日時:令和3年3月10日(水) 14時00分~15時40分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)

1.草津白根山・浅間山の火山性地殻変動モニタリング
  宗包 浩志 (地殻変動研究室長)

 2014年-2020年のGNSSデータを用い、互いに隣接する草津白根山および浅間山の地殻変動の力源の決定およびその体積変化の時間推移の推定を行った。その結果、暫定的であるが、草津白根山については渋峠付近の開口クラック状の力源、浅間山については山体直下の深部力源と浅部の開口クラック状力源で地殻変動がほぼ説明できること、また、草津白根山の力源および浅間山の浅部力源の体積変化は、それぞれの山の火山活動とよく対応することが分かった。

2.南海トラフ沿いの長期的SSE
  小沢 慎三郎 (地殻変動研究室)

 GNSS観測により、2018年以降、西南日本で遷移的な地殻変動が観測された。観測された地殻変動から南海トラフ域のプレート間滑りを推定した。その結果、2018年6月頃から2019年8月頃にかけて、日向灘北部・豊後水道域で、2019年初めころから2020年7月にかけて四国中部で、2019年4月頃から2020年末にかけて紀伊水道で、2019年初めころから2020年4月頃にかけて志摩半島でSSEの発生が推定された。また2020年7月頃から日向灘北部及び南部でSSEが発生している。

3.矩形行列の行列式と一般逆行列
  小清水 寛 (地殻変動研究室)

 観測方程式を解くという操作は、測地・測量・地図作成を含めて様々な場面で出現すると思われるが、その背景にある一般逆行列式の理論に対して、長らく歴史にうずもれていた非正方行列に対する行列式(以下「矩形行列式」)の理論が関連することが20世紀末頃にわかってきた。矩形行列式は正方行列に対する行列式(以下「正方行列式」)の概念を拡張したものであり、正方行列式に対する場合とよく似た性質や公式が置換演算などを通じて導かれる。さらに観測方程式を解くうえで鍵となる一般逆行列の解や存在を、矩形行列式を用いて表現することができる。本談話会では演算や証明にはなるべく立ち入らずに、矩形行列式と一般逆行列に関連する代数的な知識の概要を紹介したい。

日時:令和3年1月15日(金) 14時00分~16時00分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)