最終更新日:2019年3月7日

地理地殻活動研究センター談話会 講演要旨集(2019年)

1.低価格GNSSアンテナ・受信機を用いたGNSS連続観測の検討
  小門 研亮 (宇宙測地研究室)

近年、衛星測位技術の進展により、低価格のGNSSアンテナや受信機でcm精度の測位が可能となり、これらを用いたRTK基準局も年々増加している。国土地理院では既存の電子基準点に加え、民間等が設置したGNSS連続観測局を測量や測位、地殻変動監視等で活用するための検討を進めており、低価格のアンテナや受信機の性能評価も実施している。
本発表では、低価格のアンテナ及び受信機の概要とこれらを用いて実施した測位性能評価及びGNSS連続観測の結果を報告する。

2.MCMC法による震源断層モデルの推定
  川畑 亮二 (地殻変動研究室)

国土地理院では、大きな地殻変動を伴う地震が発生した際に、地殻変動量から震源断層モデルを推定している。震源断層モデルの推定は、周辺の地殻変動量の面的な把握や以後の余震活動への評価等に必要な情報であるため、信頼性の高いモデルを迅速に構築する必要がある一方、モデルパラメータに対する非線形性や観測点の配点等による観測データの制限のため、一意的に最適解を求めることは困難であることが多い。
そこで、本研究では、モデルパラメータを確率的に評価するため、マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法を用いた震源断層モデル推定プログラムを開発した。 本プログラムを、いくつかの地震に対して適用した結果を報告する。

日時:令和元年12月20日(金) 14時00分~15時40分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)

1.地理院地図を活用した教育支援について  教材開発の事例紹介
  小白井 亮一 (地理空間情報国際標準分析官(前 測量新技術研究官))

最近2カ年の地球惑星科学連合大会(JpGU2018,2019)の教育関係セッションにおいて、地理院地図を活用した教材開発に関する発表を行い、現在、この内容も含めて教育関係者へのアウトリーチ活動を展開している。
教材開発の対象としたレベルは高校や大学(共通教育程度)、また教科は地学や地理あるいは両者横断的な科目である。開発の視点(テーマ)については、2018年は「地理院地図で提供している災害情報の活用」、2019年は「地理院地図3Dで地形を楽しみながらの活用」とし、できるだけストーリー性のある具体的な事例の発掘に努めた。
今回の発表では、これらの事例を紹介する。

【都合により一部発表を延期】

★都合により、以下の発表については延期いたします。

2.干渉SARで捉えた2019年カリフォルニアの地震
  山田 晋也 (地殻変動研究室)

2019年7月6日に発生したカリフォルニア州の地震(M7.1)について、だいち2号によるSAR干渉解析で検出された地殻変動について報告する。干渉画像には7月4日に起きたM6.4の地震と併せた複雑な変動が見られ、震央の周囲には位相が不連続となる境界線が確認できた。複数回行われた観測の解析結果を通して、その特徴を紹介する。

日時:令和元年11月14日(木) 14時30分~15時30分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)

1.夜間に浸水域を上空から把握する手法の検討
  中埜 貴元 (地理情報解析研究室)

河川氾濫による浸水が発生した際には、避難や排水の計画を立案するうえで時々刻々と 変化する浸水域の特定が重要であり、その特定には迅速性が求められるが、夜間の水域を 上空から観測する手法は十分に確立されていない。そこで、ヘリコプターに搭載可能で、 夜間における浸水域把握に有効なセンサとして超高感度カメラと熱赤外線カメラを選定し、 夜間に性能試験を実施した。本発表ではそれにより得られた知見を報告する。

日時:令和元年10月18日(金) 14時00分~14時50分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)

1.国土地理院の地理教育 ~地理地殻活動研究センターの取り組みの一部について~
  田中 宏明 (地理情報解析研究室)

国土地理院の主要施策GKKの一つである「教育」は昨年度までの有志で実施する体制から応用地理部を統括部とする院全体で業務として実施し、各施策を担当課で分担して行う体制に改められた。この体制のもとで応用地理部を中心として幅広く地理教育のコンテンツを作成し、地理院地図の機能追加等を行っている。本日は、その活動の基となった地理教育支援検討部会の検討概要と現在行っている活動について紹介する。

2.Minecraftを用いた地形・地質の学習モデル作成
  岩橋 純子 (地理情報解析研究室)

科研費(挑戦的研究(萌芽))「ゲーミフィケーションを用いた地理・地学の学習支援に関する研究」では、子供達に地理的な見方や、地形・地質に関する関心と問題意識を持ってもらう事を目的とし、若年層にポピュラーなコンピュータゲームであるMinecraftを材料とした教材作りと、その教育効果の検証を行っている。本日は、昨年度~8月までに行った授業実践と実習について報告する。

日時:令和元年9月13日(金) 14時00分~15時40分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)

1.測地データから推定される2018年北海道胆振東部地震の断層の位置と形状
  小林 知勝 (宇宙測地研究室)

2018年9月6日に発生した平成30年(2018年)北海道胆振東部の地震について、だいち2号の干渉SARとGEONETにより捉えられた地殻変動に基づいて推定された震源断層モデルとその特徴について報告する。さらに、石狩低地東縁断層帯や地震波速度構造との空間的な関係についても議論する。

2.ALOS-2 SARでみる2018年北海道胆振東部地震で地表に現れた各種現象 -お付き合い地震断層・地すべり・液状化-
  藤原 智 (地理地殻活動研究センター長)

平成30年(2018年)北海道胆振東部地震についてだいち2号によるSAR干渉画像を詳細に調べることによって、震源断層による地殻変動だけではなく、本震に誘発されて受動的に動いたとみられる「お付き合い地震断層」が見いだされた。これは既知の活断層である石狩低地東縁断層帯の南東延長上に存在し未知の活断層である可能性がある。このほか、地すべりや液状化による局地的な変位が数多く見つかっており、地震防災のためのSAR干渉画像の活用策について紹介する。

日時:令和元年7月26日(金) 14時00分~15時40分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)

1.航空重力データを用いた精密重力ジオイドの計算:米国コロラド州を例に
  松尾 功二 (宇宙測地研究室)

日本の標高は水準測量により維持管理されているが、全国規模の水準測量には膨大な時間と費用を要する。そこで、国土地理院では衛星測位と精密重力ジオイド・モデルを用いた効率的な標高の維持管理への移行に向けて、2019~2023年にかけて全国を対象に航空重力測量を実施し、日本列島の重力ジオイド・モデルの精密化を計画している。本研究では、航空重力データを用いて精密重力ジオイド・モデルを構築するための最適な計算手法について海外の既存のデータを用いた検証を行った。検証に用いたデータは、NGS(米国測地測量局)より提供を受けた米国コロラド州のデータである。本発表では、2つの異なる計算手法(ストークス・ヘルマート法とUNB法)で構築したジオイド・モデルについて検証結果を報告する。
 

2.深層学習を用いた画像認識について
  白石 喬久 (地理情報解析研究室)

深層学習を用いた画像認識は現在多岐にわたる分野で活用が進んでいる。本発表では、近年の深層学習による画像認識の事例と、発表者が実施した道路舗装点検における活用事例を併せて紹介する。さらに、現在国土地理院が取り組んでいる研究について述べる。

日時:令和元年6月20日(木) 14時00分~15時40分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)

1.GNSSデータに基づく日本のブロック断層モデリング
  小沢 慎三郎(地殻変動研究室)

日本列島のブロック断層モデリングを行い、2014年以降の西南日本のプレート境界の固着状態の時間変化を調べた。その結果、東海のスロースリップ、九州東岸のスロースリップに加え、2016-2017年に紀伊半島東岸で固着が2014-2015 年に比べて若干小さくなり、2018年に回復したことが推定された。また2018年には日向灘北部及び豊後水道でスロースリップが発生していることが示された。
 

2.高精度測位社会に対応した地殻変動補正の検討
  小門 研亮(宇宙測地研究室)

近年、リアルタイム高精度測位が可能となり、誰もが容易に今現在の位置を計測できる社会が到来しつつある。一方で、測量で整備される地図は、一定の基準日における位置情報を基に作成されており、これらの間には日々の地殻変動によるズレが存在する。発表者は、この地殻変動によるズレを高精度に補正するための研究をしており、本発表ではその研究状況について報告する。
 

3.自然の営みと人の暮らしの間で
  宇根 寛(地理地殻活動研究センター長)

大学で地理学を学んで以来、土地の成り立ちや地殻変動などの自然の営みを明らかにし、その上にある人々の暮らしとの関わりを見つめる地理学の視点を大切にしてきました。そのような観点で国土地理院で関わってきた業務のいくつかを紹介してみたいと思います。

日時:平成31年3月14日(木) 14時00分~16時00分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)
 

1.地理教育 3次元表示の一環として ~安定同位体の雨水の特徴について~
  田中 宏明(地理情報解析研究室)

国土地理院では教育分野での支援活動がある。国土地理院のメインコンテンツである地形以外に3次元表示でき、小学校から高校までの授業で活用できるテーマとして、水の分析にたどりついた。今回の発表では、水の分析を取り組むことになった経緯と、分析の中でも水の安定同位体の特に雨水の特徴について述べる。
 

2.地球規模の測地基準座標系(GGRF)に関する国連の活動
  宮原 伐折羅(宇宙測地研究室長)

国連地理空間情報管理に関する専門家委員会(UN-GGIM)は、2015年の国連総会決議に基づき、人間活動の基盤である「地球規模の測地基準座標系(GGRF)」を加盟国全体で連携して維持するため、2017年から測地準委員会(Subcommittee on Geodesy)を設置し、GGRFロードマップの実施に向けた活動を行っている。発表者は、日本代表として測地準委員会の公式メンバーに加わり、活動に貢献しているため、概要を報告する。

日時:平成31年2月20日(水) 14時00分~15時40分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)
 

1.地図自動作成の実現に向けて
  大野 裕幸(地理情報解析研究室長)

将来の地図自動作成の実現を目指し、人工知能(AI)分野の技術を導入して空撮画像から地物を自動抽出(Feature Detection)する研究に取り組んでいる。しかし、AIで地図を作成するとはどういうことかピンと来る人は少ないのではないだろうか。そこで、研究の流れを紹介してAIの活用方法に対する理解を深めるとともに、最新の研究事例ではどの程度の抽出率にあるのか、それに対し、我々の現在の研究状況、課題について述べる。
 

2.迅速・高精度なGNSS定常解析システムの構築
  中川 弘之(宇宙測地研究室)

GEONET定常解析の迅速性や時間分解能をさらに高めるために、昨年度より後処理PPP-AR法を用いたあらたなGEONET解析手法の構築を行う特別研究を3年計画で実施している。2018年7月から8月にかけての約30日間について、開発中のプロトタイプシステムを用いて1日1回、GEONET全点の24時間スパンの試験解析を行ったので、衛星軌道・クロック推定の品質と座標時系列解の再現性について報告する。

日時:平成31年1月18日(金) 14時00分~15時40分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)