1.国内外の衛星SAR の動向と展望
:森下 遊(地殻変動研究室)
2014 年に打ち上げられたALOS-2 及びSentinel-1 のSAR 観測データが蓄積され、その利用が拡大しているところであるが、今後数年以内にさらに高性能なSAR 衛星の打ち上げが複数国で計画されており、世界的な衛星データのオープン&フリー化の流れも相まって、衛星SAR は新時代を迎えようとしている。本発表では、国内外のSAR 衛星や解析技術、利用分野等の動向を紹介するとともに、新時代に向けた展望や課題についても述べる。
2.キネマティックGNSS に含まれる微小信号の抽出
:宗包 浩志(宇宙測地研究室長)
キネマティックGNSS とは,観測エポック毎に観測局の位置を推定する技術である.キネマティックGNSS は,観測局の位置のダイナミックな変動を記録できるというメリットがある一方,誤差が大きいという弱点があり,比較的大きな変動が期待される現象に活用が限定されていた.本発表では,キネマティックGNSS 時系列にさまざまな処理を加えることにより,その中に含まれる微小な信号を抽出しようと試みた発表者の一連の研究を振り返る.
日時:平成29年12月1日(金) 15時15分~17時00分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)
1.2016 年熊本地震の余効変動モデル
:水藤 尚(地殻変動研究室)
2016 年4 月に発生した熊本地震の余効変動に関して、地震後1 年間のデータから、粘性緩和および余効滑りを考慮した余効変動モデルを構築した。
粘性緩和による変動の特徴を議論した後、粘性緩和と余効滑りが、観測された余効変動に対して、それぞれどの程度の寄与があるのか、その寄与の大小の空間分布について議論する。
2.干渉SAR 時系列解析で振り返る2015 年箱根山・大涌谷の火山活動に伴う地殻変動
:小林 知勝(地殻変動研究室)
2015 年6 月末にごく小規模の噴火をした箱根山・大涌谷における地殻変動について発表する.本発表では,2015 年4 月末から見られた山体膨張等の活動異常より前の期間に着目し,干渉SAR 時系列解析を適用することにより得られた膨張性地殻変動について紹介する.また,Phase Linking 法による干渉SAR 時系列解析が,地熱地帯において局所的にゆっくりと進行する地殻変動の検出に有効であることも示す.
日時:平成29年10月20日(金) 15時15分~17時00分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)
1.3次元総プロまとめ―3次元地図のあり方―
:田中 宏明(地理情報解析研究室)
今年で最終年度となる国土交通省総合技術開発プロジェクトの「3次元地理空間情報を活用した安全・安心・快適な社会実現のための技術開発」では、平成27 年度に引き続き、平成28 年度は準拠すべき国際規格の動向と屋内3次元地図に必要となる要件について調査を行った。今年度については、その調査結果を考慮して、地図仕様や整備マニュアル等の整備を行い、総プロ終了後には誰もが使いやすい屋内3次元地図の標準仕様を公表したい。
2.宅地盛土の地震時安全性評価パラメータの改良
:中埜 貴元(地理情報解析研究室)
H19-21 年度に実施した減災総プロにおいて構築した宅地盛土の地震時安全性評価支援システムでは、過去の地震に伴う事例を基に評価パラメータを設定し、高い適合率を実現していたが、海溝型地震における事例検証が不十分であった。そこで、2011 年東北地方太平洋沖地震に伴う仙台市での宅地盛土被害事例を用いて、従来評価手法の検証を実施するとともに、その結果を受けて新たな評価パラメータを導出した。本発表では、その概要を紹介する。
日時:平成29年9月1日(金) 15時15分~17時00分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)
1.SAR が見つけた「お付き合い断層」は地震断層の概念を変える?
:宇根 寛(地理地殻活動研究センター長)
阿蘇外輪山北西部の線状の位相不連続が現れている地域の現地調査を行ったところ、多数の地点で地表の変位を確認した。すべて位置、走向、変位の向きはSAR による分析とよく整合するものであった。この地域では地震活動は発生しておらず、応力の変化に伴う受動的な地表変動と考えられる。さらに、本報告では、SAR により地表の変位が面的かつ詳細に把握できるようになって以降、「お付き合い断層」がしばしば見られていることを紹介する。地表地震断層は地下の断層活動を推定する重要な手がかりとされてきたが、「お付き合い断層」が地震に伴って普遍的に発生する性質のものだとすれば、地表地震断層の見方を再整理する必要があるかもしれない。
2.2016 年にALOS-2 のSAR が見つけた2つの最大級の水平変位はとても似ている
(1)熊本地震で発生した阿蘇谷での側方流動
(2)北海道豪雨で発生した釧路湿原での水平変位
:藤原 智(地理地殻活動総括研究官)
国土地理院ではALOS-2(だいち2号)のSAR を用いて日本全国の地殻変動・地盤変動の監視を行っている。斜面では地すべり等で地面が大きく動くことはよくあるが、傾斜が極めて小さい場所で地面が2メートル以上動く現象はなかなか見つからない。2016 年に北海道と九州に発生した2つの最大級の水平変位では、きっかけとなった自然現象が大雨と地震というように大きく異なるものの、どちらも「水」と「緩傾斜」が関係することで極めて似た変位パターンを示すことを報告する。
日時:平成29年6月23日(金) 15時15分~17時00分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)
Fred Pollitz氏(USGS)
1.Connecting crustal seismicity and earthquake-driven stress evolution in Southern California (Talk on Southern California seismicity patterns for the past 30 years using a Coulomb rate-state model)
2. Viscoelastic lower crust and mantle relaxation following the 14-16 April 2016 Kumamoto (Talk on postseismic deformation of the 2016 Kumamoto earthquake using 2.5D and 3D models of viscoelastic mantle relaxation and afterslip)
日時:平成29年5月26日(金) 15時00分~17時00分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)
1.日本列島の時間依存のブロック断層モデリング
:小沢 慎三郎(地殻変動研究室)
日本列島は活断層境界に囲まれたマイクロプレートから構成されている。マイクロプレートを考慮した日本地域のブロック断層モデリングが様々なモデルの下で行われてきた。しかしながら、時間変化を取り入れたブロック断層モデリングは行われてきていない。本研究では、時間変化を考慮した時間依存のブロック断層モデリングプログラムを開発し、日本全国のモデリングを行った。その結果、2003 年十勝沖地震のアフタースリップ、2005 年の宮城沖の地震後のプレート間カップリングの回復、2008 年の茨城・福島沖地震後のプレート間カップリングの弱化、東海のスロースリップ、豊後水道のスロースリップ、九州東岸のスロースリップ等の様々な現象を捉えることができた。本研究では、定常変動を考慮することなく、プレート間カップリングを推定できるため、今後の地殻活動監視に貢献できると考えられる。
2.国土地理院が保有する昭和期からの斜面調査資料とその活用
:岩橋 純子(地理情報解析研究室)
昭和46 年~平成18 年度まで、山間部の直轄国道沿いの斜面を対象に、道路局の移し替え経費で国土地理院によって道路災害対策調査が実施された。この調査は、斜面災害に関連する地形を調べ道路施設の影響を加味して路線の危険度評価が行われたものである。
発表者はこの資料の活用を目的に、京都大学防災研究所と共同研究を立ち上げている。初年度の中間報告として、全国の検土杖深の集計結果、岩国地区における最近の現地調査と昭和54 年度調査の比較結果について報告する。
日時:平成29年3月3日(金) 15時15分~17時00分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)
1.迅速・高精度なGNSS 定常解析システムの構築に関する予備研究
:中川 弘之(宇宙測地研究室)
GEONET の定常解析結果は我が国の地殻変動の基礎的な資料として地震活動や火山活動の評価等に活用されているが、迅速性や時間分解能が不十分な場合もある。地理地殻活動研究センターでは、後処理PPP-AR 法により現在のQ3 解よりも迅速で同程度の精度を持つ解析手法と、これを実装したプロトタイプを開発する特別研究を2017 年度から開始する。本講演ではこれまでに実施した予備研究の結果を紹介する予定である。
2.MCMC 法によるGEONET 時系列データの時定数推定
:宮﨑 隆幸(宇宙測地研究室)
ITRF2014 に導入された地震後変動(PSD)モデルを始めとしてGNSS 時系列データに見られるPSD を対数関数と指数関数で表現する試みは広く行われている。しかし最小二乗法を用いてそれらの非線形関数に対して安定してパラメータ推定を実施することは一般には難しく、何らかの仮定や工夫を必要とする。
本研究ではPSD モデルに含まれる非線形関数の時定数を安定して推定するためにマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法を用いた手法を開発したのでその概要を報告する。
日時:平成29年2月3日(金) 15時15分~17時00分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)
1.測位・地図技術を活用した携帯ナビの普及に向けた取組について
:下山 泰志(測量新技術研究官)
国土地理院では、総プロで屋内の携帯ナビに関する測位と地図の研究を行っているが、一方、本省国土政策局においても、利用実証としての検討が行われている。また、今般韓国において開催された屋内測位のワークショップにおいて、アメリカ航空局(サンフランシスコ空港)の視覚障がい者を対象とする取組等についても話題紹介がなされた。今回の発表は、これまでの情報をもとに、主に一般向けとして、現在の主要な取組と相互の関係などを紹介しその全体像をなるべく分かりやすく解説する。
2.熊本地震の余効変動
:矢来 博司(地殻変動研究室長)
熊本地震では、4 月16 日のM7.3 の本震後、GEONET により九州の広い範囲で余効変動が観測されている。余効変動での各観測点の変動方向は、概ね本震時の地殻変動と同様の傾向を示しているが、一部の観測点では本震とは異なる特徴も見られている。発表では、観測されている余効変動の特徴と、その予察的なモデルについて述べる。また、本震後に見られる阿蘇山周辺の地殻変動についても触れる予定である。
日時:平成29年1月6日(金) 15時15分~17時00分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)