測地データから推定した1952年十勝沖地震のプレート間すべりと2003年地震との比較
西村 卓也(地殻変動研究室)
1952年3月に発生した十勝沖地震(M8.1)は,2003年の十勝沖地震とともに,この地域に発生する最大規模のプレート間地震である.本研究では,水準測量と三角測量データから,1952年の十勝沖地震の断層モデル推定を行い,2003年十勝沖地震との比較を行った. 地震を挟む三角測量と水準測量の測量間隔が約50年間であることから,測地データには地震時地殻変動だけでなく,余効変動や地震間の地殻変動が含まれている.そこで,1999年4月-2003年3月のGPS観測(GEONET)による変位速度を,定常的な地震間の変位速度場と仮定し,観測値との差を取って地震間の地殻変動を除去した.この補正したデータを用いて,プレート間のすべり分布を推定すると,2003年の十勝沖地震と似たすべり分布が得られた.津波データからすべりが推定されている厚岸沖の海溝に近い領域では,すべりはみられない.この領域の測地データによる解像度は乏しいが,5mを超えるような大きなすべりがあったとは考えにくい.
日時: 平成17年12月2日(金) 15時15分~16時05分
場所: 国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(本館6階)
伊豆大島の最近の地殻変動‐次期噴火に向けての準備過程
村上 亮(地理地殻活動総括研究官)
伊豆大島火山が1986年に噴火してから約20年が経過した。ほぼ確実に到来する次の噴火の予知に資するため,水準測量,GPS連続地殻変動観測,および山頂カルデラ周辺の自動光波測観測結果を用いて推定した噴火準備過程の伊豆大島のマグマ供給系について報告する。長期的には,等速の山体の膨張を示しており,変動は島内中央部の球状圧力源と南東部の板状圧力源で近似できる。また,カルデラ内は沈降しており,他にも1986年噴火に形成されたダイク近傍で局所的な余効的変動が継続している。これらの詳細な理解は,噴火の前兆として現れる地殻変動を正確に認識し,噴火の推移の予測を確実なものとするために重要である。
日時: 平成17年11月4日(金) 15時15分~16時05分
場所: 国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(本館6階)
ゆっくり地震に伴う地殻変動
小沢 慎三郎(地殻変動研究室)
通常の地震の断層運動に比べて、非常にゆっくりとした断層運動が起きる現象がありスロースリップと呼ばれている。このスロースリップイベントは地震波をともなわないため、主に地殻変動のデータによって検知されることが多い。GPS観測網により様々なスロースリップ現象が日本において発見されている。本研究では、GPS観測網により捉えられた、日本地域のいくつかのスロースリップ現象の特徴をとりあげ報告する。
日時: 平成17年10月7日(金) 15時15分~16時05分
場所: 国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(本館6階)
3種類の気象データから計算した大気による地球回転変動励起量の比較
眞﨑 良光(宇宙測地研究室)
大気は地球回転の最大の励起源である。大気による地球回転励起量は気象モデルデータから計算されている。しかし、使用したデータにより励起量も異なることが指摘されている。この相違の主要な発生源を調べることがモデルデータの良否判定に貢献できると考えている。今回、3種類の再解析気象データ(NCEP2種、ECMWF)を用いて地球回転励起量を計算し、それぞれの励起量の相違について、地域分布を調べた。その結果を報告する。
日時: 平成17年9月2日(金) 15時15分~17時00分
場所: 国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(本館6階)
シミュレーションデータを用いたALOS PRISM画像の評定とオルソ画像作成
神谷 泉(地理情報解析研究室)
本年打ち上げ予定のALOS(陸域観測衛星)に搭載されるPRISM(パンクロマチック立体視センサ)の標定プログラムと、正射画像作成プログラムを開発した。写真測量用3ラインセンサであるADS40のデータを使用し、PRISMのシミュレーション画像を作成し、これらのプログラムの動作を確認した。標定プログラムの機能を利用してシミュレーションデータに現れた誤差の原因を調査したところ、「画面距離の誤差+衛星の姿勢の誤差(定数)」とで説明できることがわかった。同様の手法をPRISMの実データに適用し、誤差要因を解明する予定である。
航空ハイパースペクトルセンサデータを用いた白神山地における樹種判別の可能性に関する研究
佐藤 浩(地理情報解析研究室)
1993年12月に世界自然遺産に指定された白神山地のブナ林は、すぐれた原生状態が保存されている東アジアでも代表的な落葉広葉樹林であるが、例えば林床にはチシマザサ、ブナが倒れて樹冠にギャップが生じた箇所にはホオノキの単木がみられるなど、植生に多様性も認められる。本研究では、白神山地において取得した分解能1.5mの航空ハイパースペクトル測量データ(青~近赤外の72バンドの画像情報)に現地調査によるグランドトゥルースデータを重ね、樹種判別の可能性を吟味したので、その結果について報告する。
日時: 平成17年7月1日(金) 15時15分~17時00分
場所: 国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(本館6階)
2004年9月5日紀伊半島南東沖地震の余効変動と東海地方の非定常地殻変動
水藤 尚(地殻変動研究室)
2004年9月5日紀伊半島南東沖地震の発生以後、東海地方の非定常地殻変動はこれまでの東南東方向への動きが南西方向へと見かけ上変化し、2005年3月ごろから再び東南東方向へと戻りつつある。非定常地殻変動のトレンドを除去することで、2004年9月6日以降約4ヶ月間に最大5mmの南から南西方向への動きが紀伊半島から渥美半島沿岸の観測点で検出できた。これらの動きは2004年紀伊半島南東沖地震の余効変動として説明することがほぼできる。しかしながら、本震時の複雑な断層面を反映してか、北西-南東方向、東西方向のどちらの断層面上のすべりであるのか、確定的な結論には至っていない。次にこの余効変動の影響を暫定的に取り除き、この期間の東海地方の非定常地殻変動の様子も報告する。
衛星レーダー画像による2004,2005年スマトラ沖地震に伴う隆起沈降域の把握
‐アンダマン諸島、ニコバル諸島、シムルエ島、ニアス島、スマトラ島‐
飛田 幹男(宇宙測地研究室)
人工衛星RADARSAT, ENVISAT, ERS-1/2が観測したレーダー画像を、新しい手法で分析することにより、2004,2005年スマトラ沖地震の影響を受けた島々の海岸線変化を画像化して計測した。海岸線変化から、スマトラ沖地震を引き起こした震源断層沿いの島々の隆起、沈降、海岸浸食の全体像を把握した。全体的傾向として、スンダ海溝から東側の約145kmの線を境にして、西側の島々では隆起、東側の島々では沈降が見られた。 本講演では、分析方法、隆起・沈降を示す島々のレーダー画像を中心に紹介する。
日時: 平成17年6月3日(金) 15時15分~17時00分
場所: 国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(本館6階)
タイ及びスリランカにおけるスマトラ沖地震津波被害政府調査団参加報告(若干の地理学的考察)
熊木 洋太(地理地殻活動研究センター長)
3月13日から21日まで,スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害政府調査団の一員としてタイ及びスリランカを訪問し,復旧・復興支援にあたっての事情・状況の把握と我が国の地震・津波対策の推進のための調査を行ったので,その時点での被災地の状況を写真を中心に紹介する。また,被害の大小に影響を与えた地理的な条件(地形,都市・集落や交通施設の分布,民族別の居住地域等)や,被災国政府が取り組んでいる空間計画,防災における地理情報の役割等について若干の所感を述べる。
南極・昭和基地において行われたVLBI観測の解析結果
福﨑 順洋(宇宙測地研究室)
南極・昭和基地において、1998年よりVLBI観測が継続して行われている。現在、1999年から2004年までに行われた、37の観測について、データ処理および解析が行われている。講演では、観測・解析の概要、解析結果、その評価、および、今後の課題などについて報告する。
日時: 平成17年5月10日(火) 15時15分~17時00分
場所: 国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(本館6階)
東南海・南海地震の余効変動シミュレーション
水藤 尚(地殻変動研究室)
数値シミュレーションにおいて地殻変動のモデリングを行う際には、地震時における変動を1枚もしくは数枚の断層面を仮定して計算を行うことが多い。しかし、地震時の変位のみを扱う測地・津波データを用いたインバージョン解析からは、十数枚の断層面をもつモデルが推定されていることがある。
今回は、東南海・南海地震を例にとって、地震時の断層面を1枚もしくは数枚と仮定した場合と、複数の断層面を仮定した場合とで、地震後に発生する粘性緩和による余効変動にどのような違いが出るのかについて報告する。
準天頂衛星システムの応用に関する研究
松坂 茂(測地部測地技術調整官)
準天頂衛星は、平成20年度打ち上げを目指して関係各機関で開発が進められているが、国土交通省関係でも測位・測量への応用を目標として4機関で研究が行われている。本講演では、地理院の研究項目を中心として準天頂衛星システムの測位・測量への応用に関する研究目標、現在の状況を報告する。
日時: 平成17年3月4日(金) 15時15分~17時00分
場所: 国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(本館6階)
国土の時系列地図情報の高度利用に関する研究について
-その概要・意義、及びケーススタディ地域(多摩丘陵)の地誌-
小白井 亮一(地理情報解析研究室長)
本研究課題は、米軍撮影の空中写真や明治期の迅速図に対してデジタル処理等を施し、より高度に幅広く利用できるようにすることを目的に、本年度は一般研究、来年度からは特別研究(3力年)として実施予定のものである。
講演の前半は、本課題の概要と意義を説明し、後半では今年度の研究対象地域である多摩丘陵の地誌について紹介する。
国土の時系列地図情報の高度利用に関する研究について
-米軍撮影空中写真の疑似カラー化手法に関するケーススタディ-
長谷川 裕之(地理情報解析研究室)
多摩丘陵の米軍撮影の空中写真を対象として、それを疑似カラー化する、プロトタイプ的な手法を本年度の研究で開発した。
講演では、本手法の概要、適用の結果、その評価、及び今後の課題などについて報告する。
日時: 平成17年2月4日(金) 15時15分~17時00分
場所: 国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(本館6階)
水準測量と験潮観測から見た関東地震(1923)前後の半島地殻変動の特徴
今給黎 哲郎(地殻変動研究室長)
関東地震(1923)前後の長期的地殻上下変動の様相を、油壺(1895~)験潮場の年平均潮位データおよび水準測量のくり返し観測結果について調べた.また,南海地震前後の串本験潮場の潮位観測データの傾向と比較した.関東・南海の両地震とも、地震前12年前後の時点で長期的な沈下傾向が止まり、串本の場合にはやや隆起の傾向を示していることが指摘されているが,沈下傾向を単調な直線で近似するモデルと、ある時点で沈下速度が変わったとするモデルのAICを比較することでこれを確認した。
また,関東地震以後の三浦半島の地殻変動について、験潮観測および水準測量のくり返し観測結果について調べた.験潮、水準の両者の観測には、1970年までのデータで相異点が見られる.この原因は定性的には測量の出発点である水準原点(甲)の地盤沈下とその停止のモデルによって説明できる。このモデルは戦後東京都が実施して来た地盤沈下の調査結果と良く調和したものと考えられる。これを水準原点の変動と考え,差し引いた残りの変動が三浦半島の地殻変動とすると,1970年以降は沈下傾向について明瞭に認められるような揺らぎはなく、直線的に沈下を続けているとみなせる。
(本報告は,田島稔氏との共同研究によるものである)
干渉SARデータとGPSデータの融合
飛田幹男(宇宙測地研究室)
干渉SARの長所とGPSの長所を組み合わせて、面的な三次元変動場を推定するため、InSAR+GPS融合を実現するプログラム・ツール群、基本データ、融合モデルを開発した。
開発した融合手法を関東平野北部の地盤沈下地帯に適用し、JERS-1衛星のInSARデータとGPSデータを融合し、高密度な三次元変動場を推定した。この内、上下変動場は、水準測量の結果と従来より高い一致を示し、データ融合による確度の向上が確認された。
日時: 平成17年1月14日(金) 15時15分~17時00分
場所: 国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(本館6階)