沿岸海域基礎調査報告書(行橋地区)

III. 利用・保全上の問題点

 本調査で得られた結果に基づいて今後の利用・保全上の問題点について検討する。
 本調査地域の陸域には、三郡変成岩類からなる基盤岩、古生層、花こう岩類が広く分布し、構造物の十分な基礎となる。しかし、本調査では基盤岩を始めとする地質・土質状況について、土木的に重要な力学的特性の検討や評価は行っておらず、構造物等の計画・設計にあたってはより詳細な調査・検討が必要であると考えられる。また、花こう岩類は、風化しやすくマサ土化したものが多く発生しているため、斜面の切土等をともなう工事に対しては、適切な調査対策が望まれる。古生層の石灰岩が分布する地域等では大規模な採石が行われており、採石後には十分な防災対策の検討が必要である。
 行橋市の海岸沿いには筑豊自然公園区域が設定され、砂浜や松林等の自然環境が残された地域であり、夏場には多くの海水浴客が訪れる地域でもある。このため、構造物構築等の開発計画にあたっては、自然環境や景観の保全に十分留意した計画の立案が求められる。
 調査海域は、大部分が水深14m以浅の浅い平坦な海底地形を示し海洋開発の適地と考えられる。しかし、海底はシルト主体の泥質堆積物が厚く堆積しており、陸域と同様に土木的に重要な力学的特性の検討や評価は行っておらず、構造物の計画・設置は十分な検討が必要と考えられる。       
 沿岸域では、カキ等の養殖棚や定置網等により非常に広い海域で水産利用されていることから、良好な水質の維持に努めることが必要であり、そのためには下水事業の推進や水質汚濁に対する監視体制の維持・強化を今後も進めなければならない。さらに、開発計画の策定・試行する際には、漁業関係者や環境保全への配慮が必要である。

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