空間デ-タ基盤整備の全国展開をめざして

GIS研究会第一次報告 概要版

内容

目次

1 急がれる空間デ-タ基盤整備

2 空間デ-タ基盤に欠かせない標準化

3 空間デ-タ基盤整備の推進方策と環境づくり
(1)空間デ-タ基盤整備の役割分担
(2)情報交換システムの構築
(3)空間デ-タ基盤の更新
(4)空間デ-タ基盤整備の財源確保
(5)国際標準
(6)既成概念の転換
(7)情報通信ネットワ-クの整備

1 急がれる空間デ-タ基盤整備

 近年、コンピュ-タ-関連の技術革新により、社会の情報化が急速に進んでいる。また、高齢化社会に向かって経済の構造改革も進めなければならない。
 そのような 状況のもとで、豊かな社会を実現するために不可欠なものとして、情報基盤の構築 がある。
 情報を運搬するハイウェイである「情報通信ネットワ-ク」の整備は、情報基盤の一つの要素として着々と進められている。
 しかし、情報基盤のもう一つの要素である「空間デ-タ基盤」すなわち、地理的な情報を基本的な枠組みとして、それに結びつけてあらゆる情報を扱うという仕組みの重要性については、まだ十分な認識が得られているとはいい難い。
 この「空間デ-タ基盤」が整備されると、GIS(地理情報システム)の利用が拡大することによって、行政の効率化や各種サ-ビス水準の向上などが一気に進展することになる。

 世界的には、欧米、アジア等の各国が情報基盤構築の重要性にいち早く着目し、空間デ-タ基盤の整備やGISの利用が急速に進められている。
 我が国においても 、情報化による社会経済の発展はもとより、新たな情報産業分野の国際的地歩を固める観点からも、情報基盤の根幹である空間デ-タ基盤の整備が急務である。

 空間デ-タ基盤を利用者が単一目的のために個々に整備するのでは、コスト負担が大きく、重複投資となり効率的でない。
 このため、公的機関が主体となって、誰もが共通に利用できる空間デ-タ基盤を整備する必要がある。特に、国は、マクロな精度で広域的に全国をカバ-するほか、地方公共団体の整備に対するインセンティブを与えるために、地域ブロックレベルのミクロな精度の整備についても先導することが求められる。

2 空間デ-タ基盤に欠かせない標準化

空間デ-タ基盤を効率的に整備し、誰もが利用できるようにするためには、標準化が不可欠である。すなわち、

a 空間デ-タ基盤そのものの標準化
b 空間デ-タに地理的位置を対応させる手法(「位置参照」という)の標準化
c 空間デ-タの検索、解析、表示を行うシステムであるGISの基本ソフトウェアの標準化

という3つの標準化が重要となる。
 ただし、標準化により、既存のデ-タベ-スの多くが使用不能となったり、標準化のために余分に大きなコストを要するのでは、かえって空間デ-タ基盤の整備を遅らせることになりかねない。
 このようなことのないよう、標準化を進める必要がある。

a 空間デ-タ基盤の標準化
 一部の公共・公益団体等において、既に地図の電子化が行われており、今後も特定の用途のために多くの機関が空間デ-タ基盤の整備を行うことが予想される。
 このため、細かい仕様を全国共通であらゆる機関に対して強制することは、かえって空間デ-タ基盤整備を遅らせることになる。

 そこで、標準化にあたっては、空間デ-タ基盤の仕様そのものを規定するのでなく、空間デ-タ基盤が、どのような精度で、どのような項目で構成され、どのように更新されているかなどを示す「デ-タに関するデ-タ」すなわち、メタ・デ-タを標準化するのが適当である。
 これにより、利用者は自由に検索して、自分の用途に使えるかどうかを判断し、必要な場合に容易に利用できるようになる。

b 位置参照の標準化
 空間デ-タを地理的位置に対応させるには、空間デ-タに緯度・経度といった座標値を与える必要がある。多くの空間デ-タは位置の情報として住居表示しか持たない。
 そこで、住居表示(たとえば、○○市○○町△丁目□番)を位置座標(北緯○度、東経△度)に置き換える仕組み(「アドレス・マッチング」という)を含めた位置参照の標準化を行う必要がある。

c ソフトウェアの標準化
 空間デ-タを処理するGISは、用途に応じてさまざまなシステムが存在するが 、どのようなGISにも必要な基本機能がある。この基本機能を標準化できれば、GISを普及させる上で大きな助けとなるであろう。
 一方、ソフトウェアについては、技術の進歩が著しいことから、官製の標準案を示す必要はなく、事実上標準化されるのを待てばよいという考え方がある。また、外国で開発されるソフトウェアをコントロ-ルすることは困難である。
 ソフトウェアについては、結果的に規制とならないよう、十分留意して検討を進める必要がある。

3 空間デ-タ基盤整備の推進方策と環境づくり

(1)空間デ-タ基盤整備の役割分担
 建設省は、国土地理院が国土の基本的な地図情報を作成し統括しているほか、道路、河川等の全国を網羅する公共施設を管理していることから、空間デ-タ基盤の整備と標準化を先導的に進めることが期待される。この際、通商産業省のほか自治省、農林水産省、運輸省、国土庁等の関係省庁や地方公共団体等と十分連携する必要がある。
 このほか、空間デ-タ基盤に搭載する情報である家屋台帳、工事台帳などに相当する空間デ-タの整備については、調整官庁が中心となって関係行政機関の調整を図ることが重要である。
また、地方公共団体は、住民への行政サ-ビスの観点から、より詳細な空間デ- タ基盤を整備することが求められる。整備に対する費用負担軽減のためには、空間 デ-タ基盤の利用者間で費用を分担する仕組みや国による支援なども有効な手段である。また、国が先導的に整備した空間デ-タ基盤をもとに、さらに地域を拡張したり精度を向上させるなどにより、初期経費を削減することも有効である。

(2)情報交換システムの構築
 利用者が空間デ-タ基盤を探し出し、入手し、利用するための問い合わせの手段として、デ-タの供給者と利用者をネットワ-クで結びつける情報交換システムを構築する必要がある。欧米で「クリアリングハウス」と呼ばれるものである。

(3)空間デ-タ基盤の更新
 空間デ-タ基盤を長期にわたって社会的な資産として活用するには、適切に更新が行われなければならない。道路の新設や拡幅などの工事を実施した場合に更新情報を空間デ-タ基盤の提供者にオンラインで速やかに伝達するシステムを整備するなど、更新作業の効率化・自動化が望まれる。
 さまざまな分野で導入が検討されているCALS(情報通信ネットワ-クによる生産・調達・運用支援統合情報システム)を空間デ-タ基盤整備と合わせて導入できれば、このような更新作業が容易と なる。この場合、更新情報の確実性を確保するための仕組みが必要である。
 このような更新作業を円滑に遂行するため、空間デ-タ基盤を維持管理する新たな枠組みを検討する必要がある。

(4)空間デ-タ基盤整備の財源確保
 空間デ-タ基盤の整備には、大きな初期投資を要するほか、更新等の維持管理のための費用が必要となる。
 国は、空間デ-タ基盤整備を全国に展開するため、重点的に予算を確保する必要があるほか、デ-タの流通及び維持管理費を含め、財源確保策を検討する必要がある。

(5)国際標準
 全世界の情報を、距離を意識せずに相互に利用する時代が到来しつつある。
 このためには、情報に関する国際的な標準化を実現しなければならない。
 我が国は、既に空間デ-タに係るISOの国際標準化の取り組みに参画している。
 今後とも、産学官の連携を図りながら、諸外国と協力して国際標準化に積極的に関与すべきである。

(6)既成概念の転換
 従来の概念では、法令で規定された手続きを始め、正式な情報の伝達は紙に記述して行うのが通常である。将来は、空間デ-タ基盤を含む空間デ-タが、ネットワ-クを通じて、紙の地図や書類によらず電子情報として伝達されるようになるだろう。段階的にさまざまな法制度や慣習を改めることによって、空間デ-タ基盤の利用を促進することが望まれる。
 また、紙の地図が空間デ-タ基盤に移行すると、従来の「縮尺」という概念は「精度」とか「解像度」という概念に取って替わる。従来の法令等による「縮尺」の規定を洗いなおし、「精度」や「解像度」による規定に見直すことが必要となる。
 空間デ-タ基盤の整備に関連する法令として、測量法や著作権法などがあるが、空間デ-タ基盤を広く一般に提供できるよう、これらの法令の運用のあり方について検討する必要がある。
 また、デ-タの改ざんや不正使用への対処方法、プライバシ-保護の観点からセキュリティ-のあり方についても検討する必要がある。

 (7)情報通信ネットワ-クの整備
 GISの利用を拡大するには、光ファイバ-網の整備など、高速大容量の情報通信ネットワ-クの整備が不可欠である。

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