ひずみ図とは?

(1)地震と地殻のひずみ

 消しゴムに押し曲げるような力を加えていくと、その形は次第に変化していきます。さらに力を加え続けると、やがて消しゴムはちぎれてしまうでしょう。
 さて、いろいろな原因で地殻には常に力がかかっていて、その結果地殻も次第に変形していきます。力が加わり続けて、このような変形が限界に達したとき、地殻内で破壊が発生します。地殻内では、このような破壊現象は岩盤どうしのずれ(断層運動)というかたちで起きます。これまでの研究から、地震とはそのような破壊現象であるとされています。したがって、地殻の変形の程度やようすを詳細に知ることは、地震予知等の研究において非常に重要であるといえます。そのような地殻内の変形の程度やようすを「地殻のひずみ」といい、地表における精密な測量を繰り返すことなどで検出されます。

(2)地殻のひずみのいろいろ

 地下にかかる力によって地殻はさまざまに変形します。すべての方向から同じような引っ張りの力がかかると、下図の1)のように地殻は膨張するような変形(円が大きな円になるような変形)を受けます。逆に、すべての方向から同じような押し縮める力がかかると、下図の2)のように地殻は収縮するような変形(円が小さな円になるような変形)を受けます。さらに、地殻にかかる引っ張りの力や押し縮める力が方向によって大きく異なると、下図の3)a,b,c のように、形自体を変化させる変形(円が楕円になるような変形)を受けます。3)のような場合には、地震を発生させるひずみ(せん断ひずみ)をともないます。ひずみ図をみると、3)のようなひずみが日本各地で通常的にみられることがわかります。

(3)大地震などの影響

 大地震が発生すると、震源域付近ではそれにともなう地殻変動がみられることがあります。浅い地震の場合には、「活断層が活動する」というかたちでそのような地殻変動が地表に現れます。そのような地殻変動の影響により、ひずみ図で見かけ上、大きなひずみがたまっているように見えることがあります。つまりそれは、地震によってひずみが解消されて震源域付近の三角点が大きく動いたために、値が大きくなってしまったもので、そこに大きなひずみがたまっているわけではありません。
 例えば、1883年~1994年の約100年間の結果における「南関東における1923年の関東地震の影響」、「福井平野における1948年の福井地震の影響」、「丹後半島における1927年の北丹後地震の影響」などがそうです。 また、地下水の過剰汲み上げや炭坑の影響により、三角点が動き、ひずみ図で見かけ上、大きなひずみがたまっているように見えることもあります。

(4)地殻のひずみの新しい観測手法

 宇宙技術を使ったGNSS観測の実用化により、地域的にきめ細かく、時間的にも連続的に観測できる高精度の測量が可能になりました。
 国土地理院では、全国1,240ヶ所に設置された電子基準点からなるGNSS連続観測システム(GEONET)を保有しています。このシステムにより詳細で正確な地殻のひずみを把握することが可能となっております。

ひずみ図の表現

図:ひずみ図の表現

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