測地成果2000 ―地球重心系への移行に関する世界的な動向―

Geodetic Coordinates 2000
-Worldwide Trend: the Move to Geocentric System-

測地部  村上真幸
Geodetic Department Masaki MURAKAMI

要旨

 測地基準系は,歴史的にそれぞれの国,地域により独自のものを定義しており、その変更の与える影響が大きいことなどから,現在でも国ごとに異なっているのが現状である。しかしながら,国境を越えて移動する航空機・船舶の航法分野では,近年,国際的に統一した測地基準系の採用が決定されている。陸上の測地基準系についても最近になって,従前のものから国際的に統一した測地基準系へ移行する動きがいろいろな地域,国々で出てきている。
 北米大陸においては,1980年代に既にNAD83という国際的に統一した基準に準拠した座標系が採用され実用に供されている。一方,陸続きであり,社会経済活動上の繋がりが密接な欧州においては,欧州全体を統一する基準座標系構築に関する学術的な活動が以前より実施されてきている。最近になって,国際的な統一基準座標系である国際地球基準座標系(ITRF: International Terrestrial Reference Frame)に準拠して,EUREFというヨーロッパで統一した座標系を確立し,その範囲を中欧,東欧へと拡張しつつある。南米においても,SIRGASプロジェクトにより,ITRFに基づく統一した基準座標系を確立しつつある。アジア太平洋地域においてはこのような統一した基準座標系が実現していないが,「アジア太平洋GIS基盤に関する常置委員会」が,アジア太平洋地域における一様なGIS基盤の整備を目的として,APRGPというプロジェクトを1997年から開始した。これら学術的な活動を基に,あるいは並行して,各国で行政上もITRFに準拠した座標系への移行が進みつつある。
 本稿では,このような測地基準系に関する世界の動向について紹介する。