日本の測地測量における統合処理の考察(II)

要旨

Study of Combinied Adjustment in Geodetic Network of japan(2)

地殻調査部  中根勝見

Crustal Dynamics Depaartment Katsumi NAKANE

企画部  黒石裕樹

Planninng Departoment Yuki KUROISHI

第1章

GPSと地上観測値の統合処理に用いる各種の観測値の重みが、基準点測量作業規程などでこれまで定められてきた重みをもとに、推定された。
これらの重みに用いる分散の推定結果を下記に示す。

観測値の区分 分散 備考
GPS(干渉測位) m  ppm m (0.006)2+(0.2*S)2  
水平角精密測地網中距離網精密測地網標準網 〃 (0.8)2 T3/9対回T3/6対回
2次基準点測量 (1.0)2 T2/3対回
  (1.4)2  
高度角 〃 (3.0)2 観測時間帯10~15時。望遠鏡正反片方向観測の場合
EDM距離観測精密測地網中距離網 (a2+b2S2) a(m) b(ppm) 0.005  2 Sの単位m
2次基準点測量 0.005  2
1級基準点測量 0.010  5
   (4等三角)  
直接水準測量1等(級)水準測量 mm km (1.3)2S  
2等(級)水準測量 (2.5)2S
ジオイド高 m (0.03)2  

これら推定された重みにより統合処理を行い、観測値間の整合である内部整合性及び未知数の推定値の確度である外部整合性を調べた結果、推定された重みに大きな問題はない。
しかし、十分なデータがないため、今後のデータの蓄積とその検討が必要である。

第2章

統合測地学におけるポテンシャルの代わりにジオイド高Nを用いる。この統合処理の数学モデルは、観測値をL、未知数である座標値をXとして次式で示す。

    L=F(X,N)

X=X0+x及びN=N0+dNとして線形化し、次の観測方程式を得る。

    v=Ax+GdN-d

ただし、vは残差ベクトル、A及びGは係数行列、X0及びN0は概算値ベクトル、dは観測値ベクトルLを含む定数項ベクトルである。dNはジオイド高の修正値である。dNはジオイド高の修正値である。

JGEOID93(Kuroishi,1995)から得られるジオイド高には平面傾斜誤差を含んでいるものとして、dNは次式で表される。

    dN=aX+bY+c

ここに、X,Yは平面座標値、a、bはX,Y軸方向の傾斜率、cは座標原点(X=Y=0)におけるオフセット量である。

a,b,cは未知パラメータである。

結果として、ジオイド高の観測方程式は次式で表せる。

    v=X・a+Y・b+c-(NJ―N0)

ここに、NJはJGEOID93で与えられるジオイド高(観測値として扱われる)、N0ジオイド高の概算値である。

 傾斜誤差などに関した未知パラメータa,b,cを含んだGPS観測値の観測方程式は次式で表せる。

    v=-RiTxi+RjTxj+[ξj-ξi][ηj-ηi]y-(△Xij―△X0ij)

ここに,R= -sinφcosλ  -sinφcosλ  cosφ

       -sinλ     cosλ     0

       cosφcosλ   cosφsinλ  sinφ

ξ=[cosφcosλ、cosφsinλ、sinφ]T、η=[X,Y、1]、Y=[a,b,c]
φ・λは観測点の緯度・経度、△Xijはi点とj点間のGPS観測から得られた基線ベクトル観測値、△X0ijは基線ベクトルの概算値である。

同様にして、未知パラメータa,b,cを含んだ距離及び角その他の観測値の観測方程式もつくることができる。

以上の方法により、JGEOID93を観測値として扱ったときのGPS観測値から推定した標高は、平均的に2~3cmの確度で求められることが分かった。

第3章

GPS測量時代の精度管理手法を紹介してある。
それは、χ2検定を含む残差の標準化による個々の観測値を検索する手法である。
統合処理における精度管理にはこうした手法が欠かせない。