最終更新日:2023年6月22日

2011年東北地方太平洋沖地震後の余効変動の時空間関数モデリング

Spatiotemporal Functional Modeling of Postseismic Deformations after the 2011 Tohoku-Oki Earthquake

著者

測地部  藤原智
飛田幹男
地理地殻活動研究センター  小沢慎三郎

要旨及び本文

 2011年東北地方太平洋沖地震の発生から10年以上が経過したものの,余効変動と呼ばれる地震後の地殻変動は継続している.余効変動は緩やかに減速していく変化のため,単純な関数を使用して高精度に近似することができる.国土地理院のGNSS連続観測点である電子基準点網が継続的に蓄積した膨大な量の観測データについて統計データ処理を行い,余効変動を対数関数と指数関数を組み合わせて近似・予測する時系列及びその空間分布のモデルを得た.この時空間モデルは北海道から中部地方に至る広い領域で約10年間の残差を数cm以下で近似することができた.このモデルを利用して余効変動の時系列を精査したところ,2015年2月以降に広域かつ一定速度で進行する新たな変動が見いだされ,この一定速度の成分を新たに関数項として追加することで,時空間モデルの余効変動の推定精度を向上させた.このモデルの特徴は,各関数の緩和時定数を全ての観測点と成分に同じ値を適用することで関数の取扱いを簡単にすることである.この関数モデルの係数の空間分布はランダムではなく空間的に滑らかであり,関数モデルの短期成分と長期成分の空間分布と,別途物理シミュレーションで計算された余効すべりと粘弾性緩和の空間分布は互いによく似ている.したがって関数モデルの各項は,地震発生に関与する物理メカニズムに関する情報を含んでいる.このモデルは,地殻変動の予測のほか,小さな変化の識別や正確な位置決めのためのモデリングなどの実用的なアプリケーションに応用することができ,利用範囲が広い.

  本文[PDF形式:3,607KB]

付録パラメータファイル

 2011 年東北地方太平洋沖地震後の余効変動の時空間関数モデルを簡易的に利用するために,本稿の式(3)及び(4)の係数ファイル(Tohoku_postseismic_model_parameter_Fujiwara_etal_2023.csv)を提供する.本係数ファイルは,余震による影響の除去や固定局の処理方法等が本研究と異なると元のデータに合わなくなるほか,2022 年以降のデータについては未検証という制限事項がある.したがって,高度な利用に当たっては,表-1に示された緩和時定数を用いて,最小二乗法で各観測点の時系列を近似することが望ましい.

付録1.式(3)及び(4)の係数ファイル(CSVファイル)

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