最終更新日:2023年6月21日

史料にもとづく自然災害伝承碑の調査研究

Research on Natural Disaster Monument based on Historical Materials

著者

四国地方測量  小枝登

要旨及び本文

 国土地理院では,過去に起きた自然災害の様相や被害の状況を伝える石碑やモニュメントである自然災害伝承碑を地形図等に掲載することにより,過去の自然災害の教訓を地域の方々に適切に伝えるとともに,教訓を踏まえた的確な防災行動による被害の軽減を目指している.
 高知県の室戸岬周辺における自然災害伝承碑を発掘する手立てとして,土佐藩士の奥宮正明が江戸時代中期に発生した宝永地震・津波(1707)の様相や被害状況を記録した史料である「谷陵記」を解読し,記載されている集落のうち位置を特定できた190か所の地図データを作成した.谷陵記に記載された被害状況については,壊滅から被害なしまでの6段階に分類し,地理院地図上で分類別にアイコン表示できるようにして,新たな自然災害伝承碑を見つけるための内部資料とした.
 本調査の結果,室戸岬周辺では周辺地域と比較して,宝永地震による被害が少ないことが明らかとなった.また,その後発生した昭和南海地震(1946)の被害状況についても室戸市の市史上巻で確認でき,「地盤の関係から他市町村より被害の程度は軽かった」と記述されている.これらがこの地域において自然災害伝承碑の登録数が少ない原因ではないかと考えている.谷陵記オリジナルは,国立国会図書館デジタルコレクションから閲覧できる.

本文[PDF:3,548KB]

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