干渉SARによる全国の地盤沈下検出に向けて

Detecting Land Subsidence in Japan using Synthetic Aperture Radar Interferometry

測地部  藤原 智・仲井博之
Geodetic Department  Satoshi FUJIWARA and Hiroyuki NAKAI
地理地殻活動研究センター  飛田幹男
Geography and Crustal Dynamics Research Center  Mikio TOBITA

要旨

 地盤沈下は地下水の過剰くみ上げ等の人為的原因で発生することが多く,被害を最小限にするためにも,広域の地盤沈下監視は欠かせない.地盤沈下監視には水準測量が有効であるが,空間的・時間的に監視の密度を高めるためには費用と労力の点で限りがある.これに対して,人工衛星から観測する干渉SARは面的に広域の地盤沈下の監視が可能な画期的な技術である.なお,SAR(「サー」と発音)とは,英語の Synthetic Aperture Radar の頭文字で,日本語では「合成開口レーダー」である.
 国土地理院では1994年(平成6年)から主に研究・開発の目的で干渉SARを実施してきており,最近は,実用化・事業化の方向に転換してきている.具体的には,平成16年度から始まった新しい基本測量長期計画の中で,干渉SARによる地表変位の検出を「高精度地盤変動測量」と位置付け,地盤・地殻変動地域では1年周期,全国土は5年周期で観測実施することを目標としている.
 干渉SARの実用化・事業化にはデータと解析技術の充実が必要不可欠である.まもなく宇宙航空研究開発機構(JAXA)によってSARセンサーを搭載した人工衛星ALOSが打ち上げられ,干渉SARに必要なデータが日常的に入手できるようになる.
 解析技術については,国土地理院独自の技術開発を続けており,特に1992年から1998年まで運用されていたJERS-1のデータを用いて,全国の地殻変動・地盤沈下の検出と精度検証等を行っている.そこでは,干渉SAR画像に含まれる誤差の性質を考慮した解析技術の開発や解析時に留意すべき事項の抽出を行っており,必要な解析システムの整備も併せてALOS打ち上げ後に干渉SARで地盤沈下を定常的に監視することを目指している.

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