海面上昇の総合的影響評価と適応策に関する研究

Studies on comprehensive assessment of impacts of sea-level rise and adaptation
-Vulnerability mapping caused by sea-level rise using GIS-

地理調査部 中島秀敏・内川講二・大塚 力
Geographic Department  Hidetoshi NAKAJIMA,Koji UCHIKAWA,Tsutomu OTSUKA
茨城大学 三村信男・横木裕宗
Ibaraki University  Nobuo MIMURA,Hiromune YOKOKI
名城大学 大野栄治
Meijo University  Eiji OHNO

要旨

 GISを用いた海面上昇による沿岸域の脆弱(ぜいじゃく)性マップを作成するため,標高,水深,行政界などの地理情報,潮汐,台風などの外力データ,人口,道路,マングローブなど人間居住・自然生態系・経済系のデータを収集・統合し,アジア・太平洋地域の地理情報データベースとして構築した。これらのデータに基づき海面上昇が社会経済系および自然環境にどのような影響を及ぼすか把握したところ,ガンジス川河口(バングラデシュ),チャオプラヤ川河口(タイ),メコン川河口(ベトナム),長江河口(中国),日本では伊勢湾北部,東京湾北部などで大規模な水没と氾濫が発生する可能性があることがわかった。また,水没面積及び潜在的危険人口・将来危険人口を算定した結果,世界的に見てもアジア・太平洋地域は海面上昇に対して脆弱な地域であることが明確になった。

 数値標高モデルの評価では,チャオプラヤ川河口の5万分1地形図を元に数値標高モデルを作成してGTOPO30(約1kmメッシュ精度)と比較し,5万分1地形図から作成する数値標高モデルの有効性について検討した。その結果,アジア・太平洋地域といった広域の概要を把握するにはGTOPO30が有効であるが,デルタなど低平な地形の分布する場所を高精度で評価するためには5万分1以上の数値地形モデルが有効であることがわかった。

 さらに,沿岸域の海面上昇により水没する環境資源の経済的価値を評価するモデルを構築し,沿岸域の環境価値の評価を試みた。

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