2003年7月26日宮城県北部の地震による地殻変動と断層モデル-測地観測データの総合解析結果-

Crustal Deformation and a Fault Model Associated with the Northern Miyagi Earthquake on July 26,2003.
- Results from Joint Analysis of Geodetic Data -

地理地殻活動研究センター  西村卓也・今給黎哲郎・矢来博司・村上 亮・海津 優
Geography and Crustal Dynamics Research Center
Takuya NISHIMURA,Tetsuro IMAKIIRE,Hiroshi YARAI,Makoto MURAKAMI,Masaru KAIDZU
日本学術振興会・国土地理院地理地殻活動研究センター  小澤 拓
Japan Society for the Promotion of Science/Geographical Survey Institute, Geography and Crustal Dynamics Research Center
Taku OZAWA

要旨

 2003年7月26日に宮城県北部を震源とするマグニチュード6.4の地震が発生した。この地震に伴う地殻変動として,電子基準点網(GEONET)の矢本観測点で約160mmの南東向きの水平変位と90mmの隆起が観測された。震源域周辺の他の電子基準点でも数mmから数cmの変動が捉えられている。また,国土地理院は,震源地付近でGPS機動観測,GPSによる三角点の改測および水準測量を行い,この地震に伴う地殻変動を捉えることに成功した。さらに,人工衛星(RADARSAT)を用いた干渉SAR処理によっても,衛星の視線方向に最大240mmの変動が検出されている。これら現地での測量およびリモートセンシングデータによって,宮城県北部の地震の地殻変動データは,M6クラスの地震としては異例とも言えるほど豊富に収集されている。

 本研究では,GPSの連続観測および機動観測データ,水準測量データ,干渉SARデータを用いて,インヴァージョン解析により宮城県北部の地震の断層モデルの構築を行った。その結果,これらの地殻変動データを総合的に説明するためには,走向が約50度異なる2つの逆断層が必要となることがわかった。推定された断層モデルの地震モーメントは,1.8×1018N・mとなりモーメントマグニチュードは6.1となった。2つの断層の走向は約50度異なるにもかかわらず,すべり角は108度と93度でほぼ等しい。よって,断層のすべりベクトルの方向は2つの断層で有意に異なることとなる。この地震のP波初動を用いたメカニズム解とCMT解の走向は有意に異なっているが,走向の異なる二つの断層が相次いですべったことによって説明することができ,本研究の結果と調和的である。

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