日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震域の地殻変動特性に関する研究

新規研究課題提案書

(課題提案者が記入)
提案課・室名
問い合せ先
課・室名:地理地殻活動研究センター地殻変動研究室
住所:茨城県つくば市北郷1番
TEL: 029-864-1111内線8242    FAX: 029-864-2655
担当者名:地殻変動研究室 今給黎哲郎
研究課題名 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震域の地殻変動特性に関する研究
研究制度名 特別研究
研究期間 平成17年4月~平成20年3月 (3年間)
1.課題分類 (3)防災・環境保全に貢献する研究開発
2.研究開発の背景・必要性 2003年9月26日に十勝沖地震が発生し、日本海溝・千島海溝周辺域での地震活動に関して社会的関心が高まっている。地震調査研究推進本部による30年以内の地震発生確率は、宮城県沖でM7.5程度の地震について99%、三陸沖北部のM7.1-7.6程度の地震で90%と非常に高い。国会においても、この地域においての地震防災対策と調査・研究の必要性から「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」が制定されている。
3.研究開発の目的・目標 海溝型の地震が繰り返し発生している千島海溝から日本海溝沿いの太平洋プレート沈み込み帯において、スロースリップの発生の有無などフィリピン海プレート沈み込み域と異なる特徴を持つと考えられる本地域での大地震発生に至る準備過程を解明するため、地殻変動データを統合的に解析することで対象地域のプレート間カップリングを時間的・空間的に詳細に解明する。十勝沖、三陸沖、宮城県沖などの地震サイクルの異なるステージにあると考えられる各領域の地殻変動特性の解析から、地震サイクルにおける地殻変動特性の時間変化を解明する。
4.研究開発の内容 1)プレート間カップリングの状況について、太平洋プレートの沈み込み帯である対象地域と、フィリピン海プレートの沈み込み帯である東海・東南海・南海地域との違いを明確化する。空間的分解能を高めるために、GPS観測点の追加設置、衛星SARによる面的な地殻変動検出、国土地理院により整備される高精度標高データ、関係機関の協力による海域の地殻変動データの入手など、各種観測データの統合を行い、固着域の推定を行う。これによって両地域の地殻変動特性の比較を行う。特に大地震間におけるスロースリップの発生の有無など、両地域の地震発生サイクルを異なるものとさせている原因について考察する。
2)既存の有限要素法およびその拡張によるプレート間相互作用推定プログラムを適用あるいは改良した後に適用することで、根室沖・十勝沖・青森県東方沖・三陸沖・宮城県沖・福島県沖等対象領域内における個々のアスペリティについて、観測されている地殻変動の現実的なモデルに基づいたシミュレーションによる再現、モデル・プログラムの違いによる結果の比較検討を行う。
5.研究開発の方法、実施体制 各種地殻変動観測データの収集、固着域の推定、有限要素法によるシミュレーションについては、主任研究官1名、研究官2名が分担する。衛星SARによる面的な地殻変動検出については、主任研究官1名が国土地理院地理地殻活動研究センター宇宙測地研究室と密接に連携して行う。太平洋プレートとフィリピン海プレートの沈み込み帯の変動特性の比較については、研究室長が統括し、主任研究官2名、研究官2名が行う。
6.研究開発の種類 2.応用研究(GPS観測点の設置については4.観測・調査、衛星SARについては3.技術開発)
7.現在までの開発段階 1.研究段階(衛星SARについては2.試行段階)
GPSデータのみを用いた固着域の推定や宮城県沖の有限要素法によるプレート間相互作用の推定は既に行われているが、各種データの統合処理は行われていない。また、既存の固着域モデルでは地殻変動の上下成分が十分再現されていないという問題点や、前弧の並進運動等を考慮した東北日本弧・千島弧に特有の地殻変動モデリングを行う必要がある。SARについては、ゆっくりとした地殻変動を検出するための解析について他地域を対象として行っている事例を参考に手法を洗練する。
8.想定される成果と活用方針 プレート間カップリングの空間的分布から海溝型地震の震源域の把握が可能となる。また、日本海溝・千島海溝では、海溝型地震発生から間も無い十勝沖、10年が経過した三陸沖、20年以上経過した根室沖や宮城県沖など、地震サイクル中のさまざまなステージが混在している。各領域における地殻変動の特徴を把握することによって、大地震に向けてどのような準備段階にあるかの推定を可能とし、中長期的な地震発生予測に資するモデルを高度化する。地震調査研究推進本部によって行われている海溝型地震の長期評価検討の場等において、実際の地殻変動データに基づいた中長期的な地震発生のモデルを提示することにより、防災・減災の施策立案の参考として活用する。
9.研究に協力が見込まれる機関名 海上保安庁海洋情報部、独立行政法人産業科学技術総合研究所、独立行政法人建築研究所、北海道大学大学院理学研究科附属地震火山研究観測センター、東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センター、東京大学地震研究所、独立行政法人海洋研究開発機構
10.関係部局等との調整 海底地殻変動についての研究や離島・岬等でGPS連続観測を実施している海上保安庁海洋情報部とデータ交換について調整をはかる必要があると考えられる。
11.備考 第159回国会において「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」(平成16年4月2日法律第27号)が成立し、この地域における観測・測量のための施設等を整備することが定められた。
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震域の地殻変動特性に関する研究