第4章 国土地理院の業務の在り方

(1)今後の業務展開の方向

 国土地理院は、これまで述べた今後の測量行政の基本的方向を踏まえ、21世紀に向けて特に次のような業務を積極的に展開する必要がある。
 a.国土の基本的な地理情報の整備・管理
 国土の基本的な地理情報の整備・管理を地籍調査等関連業務との総合的・一体的な実施を図りつつ、国の根幹的責務として実施するとともに、これらの基本的な地理情報をインターネット等の最新の情報技術を用い、簡易迅速に利用できる仕組みと体制を地図等の刊行システムも含めて整備する。
 b.GISの普及促進
 国、地方公共団体及び民間の役割分担に基づき、空間データ基盤の骨格的部分を整備する。また、地理情報システム(GIS)関係省庁連絡会議においてその必要性が示されている空間データの標準化とクリアリングハウスの構築及び技術開発を積極的に推進することにより、GISの普及を促進する。
 c.国土の地理調査の実施
 国土の防災及び環境保全に資する地理調査の実施は、国の重要な責務である。国土地理院は、国土に関する各種の地理調査において先導的な役割を果たしていく。
 d.地震防災のための地殻変動解析の推進
 地震災害から国民の生命・財産を守ることは、国の極めて重要な責務である。国土地理院は、全国に配備した電子基準点を用いて、地殻の変動状況を把握し、これに基づいて地殻変動総合解析を行い、地震予知につながる研究を推進するとともに、重要なデータを公開・提供する。
 e.地球規模の測量事業の展開
 GPSやVLBIに代表される宇宙測地技術を使った地球規模の測量及び国際的な共同観測を推進するとともに、これらの基礎となる測地座標系については、高精度で国際的利用に適した世界測地系基準を新しい国家基準点体系として採用する。
 また、現在、世界各国の関心が高まっている地球環境問題に対応するため、地球地図の整備を国際的な協力のもとに積極的に推進する。
 f.公共測量等の測量成果の品質確保と利用の促進
 公共測量及び民間測量の測量成果の品質を確保するための基本的枠組みを構築するとともに、測量成果の流通と利用を促進するため、測量成果の所在と品質に関する情報のクリアリングハウスを民間能力を活用しつつ整備する。
 g.測量技術者の資格制度の見直し
 現行の測量士・測量士補の資格体系を見直すとともに、測量技術者の技術水準の維持を図るため、登録更新制度又は講習制度を検討する。

(2)業務の効率化等

 国土地理院においては、これまで発注、監督を除く測量事業の外注化、刊行地図の複製頒布の(財)日本地図センターへの委託等により効率的な業務の執行に努めてきたが、今後さらに、地理情報のディジタル化、測量技術の革新等を踏まえた業務の一層の効率的・効果的実施を推進していく必要がある。
また、行財政改革の動きを踏まえた測量行政を実施するとともに、測量成果の公開・提供、公共測量等の測量成果の品質確保と利用促進、測量士・測量士補の試験及び登録の実施に関する業務において、民間能力の活用を図ることにより、業務の簡素化・効率化等を推進していく必要がある。