1.房総半島におけるやや継続時間の長いスロースリップイベント
矢来 博司(地殻変動研究室長)
房総半島では、継続時間2週間程度のスロースリップイベント(SSE)が6~7年間隔で繰り返し発生してきたことが知られているが、それ以外の継続時間のSSEはこれまで報告されていない。今回、房総半島周辺のGEONETの地殻変動データから、2~3か月程度とやや継続時間が長いSSEを見出した。すべり域はこれまで知られているSSEよりも陸側に推定された。南海トラフと同様、房総半島においても複数種類のSSEが発生している可能性がある。
2.2014年長野県北部の地震再訪 ~SARデータを精査して見えてきたもの~
小林 知勝(地殻変動研究室)
2014年長野県北部の地震に伴う地殻変動を精査した。その結果、地殻変動及びそれを基に推定した断層面上の滑り分布に幾つかの複雑性があることを見つけた(Kobayashi et al., 2017)。その諸特徴を紹介するとともに、断層形状や深部での非地震性滑り等の視点から、その複雑性の成因について議論する。
日時:平成30年12月21日(金) 14時00分~15時40分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)
1.2011年東北地方太平洋沖地震の粘性緩和による変動と粘弾性不均質構造の検討
水藤 尚(地殻変動研究室)
2011年東北地方太平洋沖地震の粘性緩和による変動の数値計算を行った。累積7年間(2011年~2018年)の変動量および最近2年間(2016年~2018年)の変動速度について評価を行った結果、粘性構造は深さ方向だけでなく、水平方向の不均質も考慮する必要があることが分かった。また、本震の余効滑りやM7クラスの余震に伴う粘性緩和についても、どの程度の変動が見込まれるかについても報告する。
2.地理と地殻活動の間に「・」がないのはなぜか?
宇根 寛(地理地殻活動研究センター長)
地理地殻活動研究センターは、ひとつ屋根のもとで測地学的観測や地殻変動解析と地理学的調査や地理情報解析の研究を進めることのできるユニークな組織である。これらの融合による成果とその意義を参加者のみなさんで語る時間を持ちたいと思う。
日時:平成30年11月19日(月) 14時00分~15時40分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)
1.干渉SAR時系列解析で見る火山の地殻変動
山田 晋也(地殻変動研究室)
近年頻繁に活動が活発化している霧島山の硫黄山周辺について、だいち2号で観測されたデータを用いてPSI法による干渉SAR時系列解析を行い、変動を検出した。PSI法を用いるにあたり、3種類のPS点の抽出方法(AD法、SCR法、PL法)を比較し、PL法が山間部の観測にも有効であることを確認した。本発表は、国土交通大学校の高等測量研修において課題研究として行った内容の報告である。
2.数値地形解析の最近の動向 ~Geomorphometry2018参加報告~
岩橋 純子(地理情報解析研究室)
Geomorphometry2018(8月、コロラド州ボルダー)に参加し、ラスタ処理系の要素技術や地形学的応用、標高データ作成技術等の先端的な研究発表を聴講した。また自身が手掛けるDEMを用いた全球地形分類の問題解決に向け、人工改変の激しい平野部を主題に水文分析を利用した分類法を提案した。本発表では、上記の報告に加え、数値地形解析のコミュニティで現在共有されているトレンド、それらを受けた今後のDEM地形分類の考え得る展開について紹介する。
日時:平成30年9月14日(金)14時00分~15時40分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)
1.教育分野へのアウトリーチに関する考察と試行
小白井 亮一(測量新技術研究官)
現在、国土地理院は、教育分野への各種の支援に積極的に取り組んでいる。特に地理教育については、一昨年、提言がまとめられ、これに基づくさまざまな活動が行われている。
そのような中で演者は、これ以外の分野、具体的には地学教育や測量教育への支援や貢献について関心を持ち、関係する文献の調査や考察を行い、また若干の試行(教材などの試作)も続けてきた。その経過を報告する。
2.木曽山脈における山体重力変形地形の分布特性解析
遠藤 涼(地理情報解析研究室)
山地の斜面や稜線付近には線状凹地と呼ばれる、基盤岩の側方伸張によって形成される地形が発達する。この地形は地すべりの前兆的な現象として認識されており、山地の発達の理解および防災において重要である。本発表では、木曽山脈を対象として、線状凹地の発達に寄与する地形的要因を統計的手法である回帰木解析によって推定し、地形発達との関連について考察したので報告する。
日時:平成30年7月24日(火)14時00分~15時40分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)
1.熊本地震の事例による地震時地盤災害推計システム(SGDAS)の妥当性検証
中埜 貴元(地理情報解析研究室)
国土地理院では,大規模地震時に地盤災害(斜面崩壊、地すべり、液状化)の発生可能性を発災後15分以内に自動的に予測し、関係部局に配信する「地震時地盤災害推計システム(SGDAS)」を運用しており、平成28年(2016年)熊本地震の際も稼働した。SGDASの妥当性はこれまでの地震で検証されてきており、実際の災害状況を大きな問題なく予測・推計できていることが確認されていたが、地盤災害が多発した熊本地震でも妥当性を検証することとした。本発表ではその検証結果を報告する。
2.熊本地震で出現した「お付き合い断層」群の成因に迫る
藤原 智(地理地殻活動総括研究官)
2016年熊本地震の地殻変動を「だいち2号」(ALOS-2)のSARデータを用いて面的に検出すると、地表には震源断層の動きでは説明できない複雑な変位、特に地表断層群が数多く現れている(Fujiwara et al. 2016, EPS)。各断層の詳細な3次元変動というミクロな視点、そして九州中部全体を俯瞰するというマクロな視点を組み合わせて、これらの地表断層群の成因に迫る。
日時:平成30年6月15日(金)14時00分~15時40分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)
1.バーチャル空間とリアル空間を繋ぐカーナビと歩行者ナビ
:佐々木 久和(測量新技術研究官)
現在、カーナビと歩行者ナビはネット上のバーチャル空間と現実世界を関連づけることによって付加価値を創造する有力な技術となっています。これらの実用化時期には数十年の時差がありますが、類似した発展過程を有しており、その比較から見えてくる、類似点、相違点、社会的影響などの特徴有るテーマの一部をご紹介致します。
日時:平成30年3月20日(火)16時00分~17時00分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)
1.2016 年熊本地震後の阿蘇山の地殻変動
:矢来 博司(地殻変動研究室長)
阿蘇山は2016 年熊本地震の震源域に隣接しており、阿蘇山の火山活動への影響が懸念される。阿蘇山周辺には気象庁や防災科学技術研究所が設置したGNSS 観測点があり、GEONET と統合的に解析することで、阿蘇山の地殻変動をより詳しく把握することが可能である。本講演では、阿蘇山周辺における熊本地震発生以降の地殻変動と、地殻変動から推定された力源モデルについて紹介する。
2.280m メッシュMERIT DEM を用いた全球の地形分類図と今後の課題
:岩橋 純子(地理情報解析研究室)
MERIT DEM から補間した280m メッシュの標高データを用いて、全球の地形分類データを作成した。その背景と、作成方法、データの紹介、さらに残された課題と今後の研究方針について説明する。
内容の変更について
当初、予定しておりました、佐々木久和の講演については、都合により延期とさせていただきます。
日時:平成30年3月6日(火)15時15分~17時00分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)
1.迅速・高精度なGNSS 定常解析システムの構築に関する研究
:中川 弘之(宇宙測地研究室)
GEONET 定常解析の迅速性や時間分解能をさらに高めるために、後処理PPP-AR 法を用いた解析手法と、これを実装したプロトタイプを開発することを目的とした3 年間の特別研究を2017 年度から開始した。本講演では、現在構築中のプロトタイプシステムの現状・解析時間の見積もり、及び試験解析結果の座標再現性等について紹介する。
2.小型GNSS 観測装置の製作と精度評価
:宮﨑 隆幸(宇宙測地研究室)
高密度なGNSS 観測網を構築することを目的として小型・低価格なGNSS 受信機とコンピュータを組み合わせてスタンドアローンに動作するGNSS 観測装置の試作を行った。この観測装置によってstatic方式による測位を実施したところ、条件によってはmm オーダーの精度で位置を決定できることがわかった。本講演では試作した小型GNSS 観測装置の概要とアンテナ、受信機、測位方式などの条件を変えながら精度評価を実施した結果を報告する。
日時:平成30年2月7日(水)15時15分~17時00分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)
Seismic Site Characterization Using Proxy- & Measurement-based Approaches.
Alan Yong氏(U.S. Geological Survey)
The main considerations for modeling seismic ground motions typically involve a trichotomy of effects that are partitioned into source, path, and site. Site conditions—often representing no more than 1% of the path from the seismic source—can strongly influence site response, thus dominate the intensity of shaking. To account for this phenomenon, the engineering community has traditionally used the index of VS30, the time-averaged shear-wave velocity (VS) from the surface to a depth of 30 meters. I present a review of the state-of-practice for estimating VS30, as well as select developments for advancing measured or proxy-based VS30 methods. VS30 values have traditionally been derived directly from on-site array-based records of seismic travel-times. As a result of cost and/or environmental factors that restrict the mobilization of on-site recording arrays, remotely-derived proxy-based methods have been used to estimate VS30 values. Thus, proxy-based methods—commonly using map information: geology, slope, terrain, or their hybrids—serve as a stopgap solution until on-site measurements are available. Because of the indirect nature of these map-based methods, proxy-based VS30 estimates are known to have substantial uncertainties, whereas inter- and intra-method variability of measured VS30 values is typically 5-10%. To reduce uncertainties, Iwahashi et al. (2017) used a large data set of recently available measured VS30 values and an improved terrain framework to recalibrate our proxy-based VS30 model. For sites where cost isn’t a factor, there are advancements in the analyses of earthquake and microseismic data from seismic monitoring stations that allow estimations of VS30. I describe our current practice using multiple surface-based methods to develop robust VS profiles and determine VS30. Lastly, I introduce an ongoing two-year-old international effort organized by the Consortium of Organization for Strong Motion Observation Systems (COSMOS) to develop best practices/guidelines for applying noninvasive geophysical methods when characterizing seismic site conditions.
日時:平成30年1月15日(月) 14時00分~15時00分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)
1.ディープラーニングへの招待
:大野 裕幸(地理情報解析研究室長)
ディープラーニングは、画像認識の分野にブレークスルーをもたらした。ディープラーニング(とニューラルネットワーク)の応用範囲が急速に広まりつつある中で、どうすればディープラーニングができるのか、地理院地図のデータを使った画像分類を事例に紹介しながらディープな世界への扉を開く。併せて、地理院の業務に関連しそうな最新の研究事例を紹介する。
2.日本地域のブロック断層モデリング
:小沢 慎三郎(地殻変動研究室)
日本列島はマイクロプレートから構成されている。このマイクロプレートの相対的な動きとマイクロプレート間の相互作用を考慮して、海溝域の歪エネルギーの蓄積を推定する必要がある。本研究では、時間項を取り入れた、日本列島のブロック断層モデリングを行い、海溝域に溜まっている歪エネルギーの時間変化を推定した。その結果、プレート境界上の各種の固着・滑りの時間変化を検出できた。
3.日本列島の精密重力ジオイドの開発
:松尾 功二(宇宙測地研究室)
本講演では、新たに開発した日本列島の精密重力ジオイド・モデルについて紹介する。現行の重力ジオイド・モデル(JGEOID2008)に以下の改良を施し、その高精度化を試みた; (1)衛星重力場モデルの更新、(2)海洋重力場モデルの更新、(3)高分解能DEM を用いた重力化成の高度化、(4)残差地形モデルの導入、(5)異種重力データの結合手法の改良。その結果、実測ジオイド高と5.21cm で整合する重力ジオイド・モデルが構築された。本研究により、JGEOID2008 と比べ3.23cm の精度向上が達成された。
日時:平成30年1月5日(金) 15時15分~17時00分
場所:国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(研究棟 2階)