有珠山の地殻変動(22)

発表日時:2000年04月22日(土) 14時00分

 国土地理院(院長 城処求行)は、宇宙開発事業団(理事長 内田勇夫)と協力して、人工衛星レーダー(SAR)画像を比較する手法によって、有珠山の活動に伴う広域の地殻変動量を初めて面的に把握しました。

 これまでも、各種の観測から西山の西側で隆起が進行していることが知られていましたが、噴火前と4月9日を比較した今回の人工衛星の観測からも、この地域において大きな地殻変動があることが確かめられました。最大の隆起を示した場所は西山付近で、平均的な隆起の大きさは約10mと計測されました。また、水平方向の地殻変動の南北成分について、西山の北西部で北に約5m、西山の南西部で南に約5m程度の移動量が計測されました。他の観測結果と総合すると、西山の西部を中心に地盤の隆起と南北の広がりが進行していることがわかります。

 この手法は、雲、霧、噴煙等の影響を受けることなく、また危険地域に立ち入ることなく、繰り返し行われる衛星観測データを利用して、広い範囲の地殻変動を面的に監視できます。このため、国土地理院は、宇宙開発事業団と協力して、ERS-1及びERS-2、RADARSATのデータを利用して、今後も定期的に解析を行い、地殻変動の進行を観測することにしています。

 使用したデータは、ヨーロッパの衛星ERS-1(1996年2月24日)及びERS-2(2000年4月9日)のレーダー画像です。地殻変動が発生した地点は、画像上の位置が変化する性質を利用して、2つの画像に写る同一地点の位置を比較し、変化の有無を調べました。火山活動の前後で位置が変化した地点を抽出し、地殻変動の分布を求めることができました。この方法で計測した地殻変動の精度は約5m程度と考えられます。

 ただし、この方法では、上下方向の地殻変動と東西の水平方向の地殻変動が区別できないため、東西方向の水平変動と上下変動は分離できません。今回の解析では、東西方向の変動がなかったものとして、隆起量を計算しました。

 この手法は約2km四方の正方形の地域の平均的な地殻変動を計測するので、地殻変動が小さな地域に集中している場合には、測定される変動量が実際より小さく測定されます。このため、狭い地域に集中している実際の地殻変動量はもっと大きいと考えられます(国土地理院の写真測量からは、4月18日までに最大35m程度と測定されています)。

 この観測の結果及び画像は、以下の国土地理院のホームページ(有珠山のぺージ)で公表しています。
  http://www.gsi.go.jp/BOUSAI/USU/index.htm

添付資料

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