国土地理院の重力測量の展望—測定技術と重力基準の将来像—
Future Perspective for Gravity Measurements in Geospatial Information Authority of Japan
—Emerging Technology and Future Vision for Gravity Standard—
—Emerging Technology and Future Vision for Gravity Standard—
著者
測地部 宮原伐折羅・吉田賢司・山本宏章
地理地殻活動研究センター 松尾功二・宮﨑隆幸・宗包浩志
地理地殻活動研究センター 松尾功二・宮﨑隆幸・宗包浩志
要旨及び本文
国土地理院は,全国に正確な重力の基準を与えるため,重力加速度を地上で測定する重力測量を1950年代から継続して行ってきた.重力測量では,国土地理院が設置した基準及び一等重力点において絶対及び相対重力値を測定し,測定した重力値を網平均処理することで重力の基準を構築する.最新の重力の基準は,「日本重力基準網2016(JGSN2016)」で,計量機器の校正や地下の質量分布探査の基準など,様々な社会及び科学分野において重力の基準を提供している.重力測量の測定の精度は,計測機器と技術の高度化に伴って向上を続けており,国土地理院は,これらを取り入れることで測定を高度化し,現在は技術的に可能な限り高い精度で重力測量を達成している.一方,重力観測衛星や航空機搭載型の重力計など,近年の急速な重力観測技術の高度化に伴い,重力の詳細な時空間分布の把握が可能となってきている.GRACE衛星やGOCE衛星といった重力観測衛星ミッションの実現によって,地球規模の重力分布とその時間変化の解明が進むとともに,航空重力測定の高度化によって沿岸域や山岳域といった,これまでの技術では重力分布の把握が困難であった場所で詳細な測定が可能となった.観測精度や時空間解像度など,これらの技術の現在の性能と特徴を解説するとともに,各々の技術の特徴を生かしてこれらの測定を適切に統合することで,国土地理院が今後目指していく重力測量と重力基準の将来像を議論する.