電子基準点1秒データによる平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の地殻変動

電子基準点1秒データによる東北地方太平洋沖地震の地殻変動の時間発展(動画)

作成:2011年9月22日

1秒毎に見た地殻変動

 GEONET(GPS連続観測システム)で得られた電子基準点のデータは,ほとんどの観測点で1秒毎に取得されています.しかし,高精度の地殻変動の監視のためには,一定期間に観測点の位置は動かないと仮定したGPS基線解析(スタティック解析)から得られる24時間平均あるいは6時間平均の座標値データが使われてきました.東北地方太平洋沖地震では,6時間平均の座標値データを元に,最大で水平方向に約5.3m、上下方向に約1.2mという地殻変動が観測されています.
 近年,1秒毎などに観測点の動きを推定するGPSデータ解析(キネマティック解析)手法の発展はめざましく,条件が良いときには数cmの精度で地殻変動を捉えることも可能になってきました.ここに示した動画は,キネマティック解析によって得られた東北地方太平洋沖地震(M9.0)と茨城県沖で発生した最大余震(M7.7)に伴う地殻変動の時間発展を1秒毎の電子基準点の座標値に基づき示したものです.本震の動画からわかる地殻変動の特徴は以下の通りです.
  • 震央の位置(星印)からほぼ同心円状に,地震波(永久変位である地殻変動成分を含む)が広がっている様子が明瞭です.
  • 震源に一番近い牡鹿半島周辺では,東向きの地殻変動が1.5m程度にまで成長した後,20秒ほど停滞し,その後の約40秒で5mを超える地殻変動に至ったことがわかります.この2段階での地殻変動の推移は,震源断層の複雑な破壊過程を表していると考えられます.
  • 14時48分50秒から14時50分00秒にかけて,関東地方から東海地方に伝わる大きな揺れが明瞭です.見かけの伝播速度や震源からの距離に伴う減衰の仕方から,表面波だと考えられます.
  • 牡鹿半島では本震発生の2分後に地殻変動がほぼ収束し,水平方向で約5.3mに達しています.しかし,その周囲では大きな揺れや地殻変動の成長が続いています.
  • 本震発生の4分後には,地図の範囲内での地面の大きな揺れは収束しています.しかし,関東平野や越後平野などでは依然として小さな揺れが続いています.

 なお,ここで得られた1秒毎の地殻変動は,地震後しばらくたってから公開されたGPSの精密軌道情報及び時計情報を用いて算出されたものです.リアルタイムに解析されたものではありませんのでご注意下さい.キネマティック解析を常時実施して,リアルタイムに地殻変動のモニタリングを行うことができれば,超巨大地震に対しても地震の規模の迅速な把握や津波予測に役立てることができます.国土地理院では,今後このようなキネマティック解析をリアルタイムに実施できるよう研究開発を進めていきます.

動画

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  • 東北地方太平洋沖地震 本震(M9.0)の地殻変動の動画


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  • 東北地方太平洋沖地震 最大余震(M7.7)の地殻変動の動画


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動画の説明
  • 矢印が水平変動,カラースケールが上下変動を表します.赤が隆起,青が沈降です.
  • 電子基準点で捉えられた1秒毎の座標値の変化を表しています.時間は図中左上に示されています.座標値の推定誤差が0.1mを超える場合や通信の断絶等によりデータがない場合は矢印が表示されません.
  • 星印が地震の震央を表します.気象庁による発震時間以降は星印を塗りつぶして表示しています.

地震概要

東北地方太平洋沖地震 本震
地震発生時刻 平成23年(2011年)3月11日 14時46分18秒
震源位置 38.103°N, 142.860°E  深さ:24 km (気象庁, 2011年3月13日現在)
マグニチュード 9.0 (気象庁, 2011年3月13日現在)

東北地方太平洋沖地震 最大余震(2011年9月16日現在)
地震発生時刻 平成23年(2011年)3月11日 15時15分34秒
震源位置 36.108°N, 141.265°E 深さ:43 km (気象庁, 2011年9月16日現在)
マグニチュード 7.7 (気象庁, 2011年9月16日現在)

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