国内初!衛星測位分野の国際事業に国土地理院とJAXAが共同で参画 ~高精度な軌道情報の提供を通じた測位基盤の強化へ~

発表日時:2023年6月30日14時00分

国土交通省国土地理院と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、GNSS衛星の精密な軌道情報を算出する体制を構築しました。この取組が衛星測位に関する国際機関である国際GNSS事業(IGS)に認められ、国内では初めて同事業に軌道情報を定常的に提供することとなりました。提供する軌道情報は、現在の衛星測位分野において最も精度が高いとされているIGSの軌道情報の算出に活用される予定です。これまで海外機関に依存していた我が国の位置の基準を、より自律的・安定的に維持・管理できることが見込まれるほか、測地・測位分野の研究活動の促進が期待されます。

背景

 GNSS(※1)は衛星の軌道情報(暦:れき)を基にして地上の位置決定(測位)を行うシステムで、地殻変動が激しい我が国では、位置の基準の維持・管理に活用されています。より精度の高い測位には、より高品質な軌道情報(精密暦:せいみつれき、別紙)が必要不可欠で、現在は国際GNSS事業(IGS)(※2)が提供するIGS暦(別紙)が最も高い精度を有するとされています。IGS暦は、IGSが高い技術力を有すると認めた北米、欧州、中国の限られた国家機関・研究機関・大学等の精密暦を基に算出されています。このため、我が国の位置の基準は海外機関に大きく依存しているという課題がありました。

取組の概要

 これまで国土地理院は、全国約1,300か所の電子基準点(※3)におけるGNSSデータ解析を25年以上にわたって安定的に実施してきました。また、JAXAは、国産のGNSS軌道計算ソフトウェアであるMADOCA(※4)を開発し、精密暦の精度改善に関する技術開発を長年行ってきました。今般、両機関が連携し、国土地理院がMADOCAを用いて精密暦を算出し、JAXAがその運用結果に基づきMADOCAを改良する協力体制を構築することで、精密暦の安定的な算出が国内で可能となりました。この取組がIGSにも認められ、我が国では初めてIGSに精密暦を定常的に提供することとなりました。提供する精密暦は、IGSの準備期間を経て、正式にIGS暦の算出に活用される予定です。

今後の展望

 今回の取組により、精密暦を国内で独自に算出できるようになります。また、提供する精密暦の品質がIGSによって定常的に評価されることにより、精密暦の品質を継続的に維持、改善することができます。これにより、より自律的・安定的な位置の基準の維持・管理が見込まれるほか、測地・測位分野の研究活動の促進が期待されます。今後は「みちびき」を含むGNSSの精密暦の公開環境を整備し、高精度測位時代における位置情報の基盤の整備・更新を着実に進めていきます。

添付資料

別紙 精密暦とは(PDF形式:430KB)

※1: GNSS(Global Navigation Satellite System) 人工衛星を用いて、地球上の任意の位置を求めるシステムです。米国のGPS(Global Positioning System)や我が国の準天頂衛星システム「みちびき」が含まれます。
※2: 国際GNSS事業(IGS: International GNSS Service) 測地学・地球物理学等の研究活動の支援及び社会一般でのGNSSの利用促進を目的として、国際測地学協会(IAG)の下で参加機関の国際協力により運営されている国際組織です。国土地理院、JAXAは観測データの提供を通じ、これまでもIGSに貢献してきました。https://igs.org/
※3: 電子基準点 全国約1,300か所に設置されたGNSS連続観測点で、我が国の位置の基準である「国家座標」に整合します。主に測量の基準点、地殻変動の監視、位置情報サービスの支援として広く活用されています。
※4: 複数GNSS対応高精度軌道時刻推定ツール(MADOCA: Multi-GNSS Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysis) 電子基準点やIGSの観測点等のGNSS観測点で取得した情報を基に、GNSSの正確な軌道情報(精密暦)や衛星時刻、GNSS観測点の座標値等を計算するためのソフトウェアです。

問い合わせ先

<精密暦の算出に関すること>
〇 国土交通省 国土地理院 測地観測センター 電子基準点課
  課長   若杉 貴浩 TEL:029-864-5977(直通)
  課長補佐 髙松 直史 TEL:029-864-8409(直通)

<MADOCAの開発に関すること>
〇 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 広報部 TEL:050-3362-4374