最終更新日:2023年10月27日

MCMC法を用いた震源断層及びすべり分布モデル推定のためのプロトタイププログラムの開発

Development of Prototype Program for Estimation of Fault Parameters and Slip Distributions using Markov Chain Monte Carlo Method

著者

地理地殻活動研究センター  川畑亮二・宗包浩志

要旨

 国土地理院では,大きな地殻変動を伴う地震が発生した際に,地殻変動量から矩形の震源断層モデルやすべり分布モデルの推定を行っている.推定したモデルは,地震発生後に臨時的に開催される地震調査委員会や地震予知連絡会等に報告され,地震活動の評価や検討に活用されるため,信頼性の高いモデルを迅速に構築する必要がある.
 モデル推定においては一般的にLevenberg-Marquardt法などの非線形インバージョンが用いられるが,パラメータの非線形性や観測データの制限等から解の初期値依存性が強い場合が多く,適切な解を求めるためにはモデル作成者の先験的情報が不可欠であるうえ,得られた解が妥当なものなのか,どの程度誤差を持っているのかを評価することが困難であった.そこで,本研究では,マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法を用いて,推定パラメータを確率的に評価するためのプロトタイププログラムを開発した.
 本プログラムを用いて,実際の観測データから震源断層モデルやすべり分布モデルの推定を行った.平成16年(2004年)新潟県中越地震の震源断層モデルでは,解が一意に決定された一方,2019年6月18日山形県沖の地震では,異なる断層面の向きを持つ震源断層が同時に推定された.平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の震源断層モデルでは,2枚の断層を用いてパラメータ推定を行い,観測値を説明するモデルを推定することができた.また,すべり分布モデルの推定では,平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震における観測データを用いて,各断層パッチのすべり量及び滑らかさのハイパーパラメータを同時に推定できることが確認された.

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