最終更新日:2023年10月27日

洪水氾濫時の湛水量をどう計算するか? -浸水シミュレーションデータを用いた検証例-

How to Calculate the Flood Water Volumes?
- Verifications Using the Inundation Simulation Data -

著者

地理地殻活動研究センター  岩橋純子・中埜貴元・大野裕幸

要旨及び本文

 洪水時の河川氾濫による湛水量(浸水体積)を,水際の位置に相当する浸水領域の外周点のGIS データ(浸水の水際の位置を示す点群)と基盤地図情報の数値標高モデル(Digital Elevation Model: DEM.以下「DEM」という.)から自動計算して求める手法について考察した.浸水発生時に実際の正確な湛水量を把握することはできないため,「国土交通省地点別浸水シミュレーション検索システム(浸水ナビ)」で公開されている浸水シミュレーションデータから計算した湛水量を正解値として,複数の計算手法による湛水量計算結果の精度を検た.湛水量は,浸水領域の外周点のGIS データのみを用いて数パターンの手法で水面標高を計算し,それと基盤地図情報の5m メッシュ標高データ(以下「5mDEM」という.)との差分によって求めた.その結果,水面標高の計算手法が結果に与える影響について,次のことがわかった.(1)浸水領域外周の標高点群を全て用いる場合は,Natural Neighbor 法を用いた内挿補間を用いると,一次傾向面を用いたケースや,点群の標高の平均値・最低値・中央値による水平面を水面標高としたケースより正解値に近い湛水量となった.水平面を用いたケースの中では,平均値による手法が比較的良かった.(2)水際の位置を一部しか与えないケースでは,内挿補間による水面を使えないため傾いた水面の水面標高の生成は難しく,また,一次傾向面を用いたケースの誤差が非常に大きくなった.点群の標高の平均値・最低値・中央値による水平面を比較すると,比較的安定した結果が得られるのは平均値による水平面であった.
 また,浸水領域のGIS データとして手動で描画されたデータを用いた場合の位置ずれの影響(主として急勾配の線状盛土との接地によるもの)を除外する方法について補足的に検討したところ,隣接点間の移動平均からの偏差によって外れ値を識別・除外することが有効であった.

  本文 [PDF:1503KB]

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