GEONETにみられる大気擾乱の広域的な影響について(要旨)

Wide Influence of Atmospheric Disturbance on Analysis of GEONET

測地部  雨貝知美
Geodetic Department  Tomomi AMAGAI
測地観測センター  石本正芳
Geodetic Observation Center  Masayoshi ISHIMOTO

要旨

 国土地理院では、GEONET(Gps Earth Observation NETwork)の解析結果を用い、地震調査研究、火山噴火予知研究のための地殻変動監視を行っている。GEONETのルーチン解析(以下、「解析」という。)の結果には、大気遅延や電離層など様々な誤差要因により、地殻変動とは異なる変位を示すことがあり、地殻変動を監視する上で問題となる。
 そこで、本論では、2005年8月12日に東北地方で観測された異常変位、及び2005年10月16日、17日に東北地方南部の太平洋沿岸から四国地方におよぶ広い範囲で観測された異常変位について、その原因について調査を行った。両ケースとも、当時の気象条件を考慮すると、大気遅延勾配の影響が特に疑われたため、大気遅延勾配を推定した場合と推定しない場合について解析し、GEONETの解析結果と比較した。その結果、GEONETにみられた異常な変位は、大気遅延勾配を推定しないために生じた誤差であることがわかった。
 このように、前線などの大気擾乱がGEONETの解析結果に広域的な誤差をもたらす可能性があることが明らかとなった。このことから、このような広域的な誤差に注意して、地殻変動の監視を行う必要がある。また、大気遅延勾配の推定は、誤差軽減に有効であることから、GEONETの解析に大気遅延勾配の推定を早期に導入することが望まれる。

戻る