(3)海水面上昇の影響予測に関する研究 |
平成2年度~ |
地球温暖化によって引き起こされる海水面上昇の影響を、主として土地利用の変化、土地条件の変化、経済的影響の推定、等の観点から国内(新潟)と海外(タイ)にテストサイトを設けて研究している。海水面上昇が、沿岸域の土地条件に与える影響、たとえば湿潤化や塩水浸入等を推定し、さらにこれらが土地利用適性にどのような影響を与えるかを推定し、その再配置を試みた。また、影響評価手法の統合化を目指して、社会経済モデルを構築し、数値シミュレーションを行った。この研究の一環として、基礎データの収集手法の検討とその精度評価も行っている。
(4)NOAA衛星のAVHRRデータを用いた月別植生指標の作成 |
国土地理院において受信したNOAA(極軌道気象衛星)のAVHRRセンサーのチャンネル1(可視域)及びチャンネル2(近赤外域)のデータから植生指標データを作成している。植生指標は植物の量や活力を示す値で、植物の可視域と近赤外域での反射率の違いをもとに演算で求められる。月別に植生指標から、植生の分布を推定することができる。また、長期にわたりデータを蓄積することにより、国土の植生の変化を監視することができる。処理されたデータはインターネットで提供している。
定常的にNOAA衛星データを処理できるようにするため、NOAA衛星データの効率的な幾何補正手法や雲の除去について技術的検討及び開発を行った。
地球地図プロジェクト実施のために必要な研究を行っている。これまでに、既存の標高データ(米国等が作成した1 km分解能の標高データ)の精度検証、NOAAデータを用いた土地利用変化が著しい地域の抽出手法に関する研究、座標変換プログラムの開発、衛星画像による更新手法に関する検討等を行い、平成10年度に採択された地球地図の仕様決定や整備手法開発に役立ててきた。現在は、地球地図データの提供に資する研究を行っており、メタデータの整備仕様とクリアリングハウス、地球地図データの各種のGISへの互換性に関する研究等を実施している。
(6)GISによるタンチョウの営巣地の解析 |
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平成4~7年度 |
釧路湿原のタンチョウの営巣地の分布データと、1:25000地形図から取得した湿原、河川、道路、建物から、営巣地がこれらとどのような位置関係にあるかを解析(たとえば、営巣地の90%は、河川から265m以内にあり、道路からは104m以上離れているなど)し、これらの条件を満たす場所がどれだけ残されているかを求めた。タンチョウが営巣する条件はこれらだけで決まるものではないとは言え、GISを活用して、地理的分布からいくつかの条件を導けることを示すことが出来た。
(7)生物多様性保全の観点から見たアジア地域における保護地域の設定・評価に関する研究 |
平成8~10年度 |
人間による開発が進むことによる野生生物の減少が問題となっている。GISを活用して種々の地理情報や野生生物の分布情報から野生生物の生息地域を推定し、保護地域の設定及び評価に役立てるため、マレイシア国タマンネガラ地区と中国雲南省シーサンパンナ地区を対象として研究を行った。
タマンネガラ地区における研究では、ゾウ糞の分布をもとに、ゾウの生息地の地形条件を求めた。地形条件を標高値や傾斜等の定量的データに基づき解析した場合と、ランドサット画像からの画像判読により地形分類する方法によるものとは比較的良い一致を示すことが分かった。
シーサンパンナ地区では、ゾウの分布と植生、標高、村落からの距離、河川からの距離等の関係についてカイ2乗検定を用いて、それらの条件がゾウの分布に影響する要因であるかどうかをテストした。この結果、ゾウは常緑広葉樹林に多く生息し農耕地は避ける、村落との距離、河川との距離についてははっきりした関係がみられないことなどが分かった。