目的と調査概要
調査は、湖沼とその周辺の湿原について、湖沼調査、土地利用調査、地形調査を実施し、その結果を報告書、地図(報告書付図)、GISデータにとりまとめました。

調査について
1.湖沼調査
2.土地利用調査
土地利用調査は、過去から現在までの異なる時期に作成された地形図をもとに土地利用図を作成し、湿原とその周辺地域のそれぞれの時期の土地利用、またその変化を調査します。調査の概要は次のとおりです。
土地利用の変遷を把握するため、既存の2万5千分1地形図のうち、最も古いもの(おおむね1955(昭和30)年頃)と、最新のもの(おおむね2000(平成12)年頃)、その中間の時期(おおむね1975(昭和50)年頃)に作成されたものの3時期の地形図を使って、それぞれの時期の土地利用区分を行い、資料図を作成します。
土地利用を区分した資料図をもとに、コンピュータ画面上で計測を行い、取得したデータを編集し、各時代の土地利用データを作成します。
各時代の土地利用データから土地利用図を作成し、さらに最も古い時代の土地利用データと最新の時代の土地利用データの差分を取り、土地利用変化図を作成するとともに変化の傾向を分析します。
3.地形調査
地形調査は、湖沼や湿原を取り巻く地域の地形を調査・分類し、その地形的環境を示す地形分類図を作成する調査です。
この調査は、1)資料収集、2)空中写真の判読、3)現地調査、4)地形分類図の作成の4つに区分されます。
湖沼や湿原を取り巻く調査対象地域の設定については、それらが関係する河川の影響を大きく受けることから、対象の湖沼や湿原の集水域を原則とし、必要に応じて集水域の一部を除いたり、下流となる範囲を含めたりします。また、土地の地形的環境には、自然地形に加えて人工的に造られた地形も影響します。このため、切土地や盛土地などの人工地形も調査しています。
地形分類の作業前に、地形分類の参考資料として、調査地域の概況、地形・地質・地盤などに関する既存の文献やボーリングデータ等の資料収集を行います。
撮影時期が最も古い写真と最新の写真を使用して空中写真を判読して地形分類を行います(写真-1)。
写真-1 空中写真の判読による地形分類
(3)現地調査
湿原や平坦な低地部分は、写真判読だけでは地形分類が困難な所が多いので、調査地域に関する資料の分析や現地調査を必要とします。現地調査は、地形や露頭を観察し(写真-2)、ハンドオーガやボーリングステッキによる簡易ボーリングを実施し、砂や泥など地表付近の構成物質を調べます(写真-3)。植物の生い茂る湿原内や平坦な土地の調査では、調査地点の正確な位置情報を取得するために、GNSSを利用します(写真-4)。
写真-2 現地調査での露頭観察
写真-3 ボーリングステッキによる試料採取
写真-4 GNSSを用いた現地調査
(4)地形分類図の作成
地形分類図の作成では、2万5千分1地形図を基図として、地形の調査・分類作業で得られた成果を図にまとめます。この作業では、表示する地形の項目や表現方法なども検討されます。
調査報告書
調査報告書は、各湖沼湿原地域ごとに調査の結果をまとめたもので、湖沼調査報告、土地利用調査報告、地形調査報告で構成されています。
調査対象湖沼の概要、調査方法、調査結果についてまとめています。
調査方法や調査に用いた地形図の概要及び3時期の土地利用状況や土地利用区分別の面積等についてまとめています。
調査の概要と調査結果について、地質、地形、各地形ごとにまとめています。
調査報告書付図
1.湖沼図
湖面(水位基準面)から湖底までの深さを等深線で表現します。等深線間隔は5mですが、湖底の起伏の少ない部分では必要に応じて2.5m、1mあるいは 0.5m間隔の補助曲線を用いて表現しています。また、傾斜が急で等深線の間隔が密になる場合は、その部分を急傾斜地を表す記号で表示しています。
湖底表層の堆積物を岩、礫、砂、泥などに分類し、それぞれの記号で表示しています。また、同じ種類の底質の分布範囲を面的に示す底質図も分図(ぶんず)にまとめてあります。
湖沼中に生育する水中植物は、現地調査に加え測深記録や空中写真より判読し、生態によって挺水植物、浮葉植物、沈水植物の3種類に分け、さらに草丈の長短や繁茂の粗密も記号で表現されています。
水位観測所、揚排水ポンプ場、採水坑など湖岸付近に設置されている構造物や施設、定置漁具や養魚場など湖中にある漁業施設、桟橋、防波堤などの港湾施設、海水浴場などのレクリェーション施設などが表示されています。
2.土地利用変化図
土地利用変化図は過去数十年間にわたる3時期の土地利用を表現し、湿地が埋め立てられて市街地や工業団地に変わっていく様子など、主に人為的要因により自然環境が変化していく様子を明らかにしています。
土 地利用変化図の作成は地形図の判読を専らとし、写真判読や現地調査は行っていないため、地形図に表現されている以上の内容は盛り込まれていません。また、 地形図が作成された時期により図式(地形図を作成するためのきまり)等も多少異なっているため、当時の実態や土地利用の変化を余すところなく表現している わけではありません。
土地利用変化図での表現は以下の原則によります。
a) 土地利用は表-1による区分に基づいて分類しました。全部で9区分されています。
b) 土地利用区分は、2万5千分1地形図上で道路・鉄道・河川・がけ・土堤や植生界・特定地区界等で区切られた面的な広がりを持つものを採用することとし、最小単位は、地形図上で4mm2(実寸2500m2)以上の面積があり短辺が2mm(実寸50m)以上のものとしています。ただし、短辺が2mm未満である狭長な形状のものでも、重要なものなどは表示しています。 c) 同じ区分の土地利用の単位が地形図上で小型車道(幅員1.5m以上3.0m未満の道路)以下の道路や一条線(一本線)で表現された河川などにより分断されている場合は、それらをまとめて一つの単位として表現しています。 d) 道路・鉄道などの盛土部や切土部は、道路・鉄道の一部とみなします。切土部においてはその頂を示す長線、盛土部については傾斜を示す短線の下端部を連ねた線を区画線として範囲を定めます。 e) 異なる土地利用が、地形図上の最小の射影幅(土がけは0.5mm、岩がけは1.0mm)により表示されたがけで区分されている場合は、傾斜を示す短線の下端部を連ねた線を区画線としています。また、土堤で区分されている場合はその頂を示す線を区画線としています。 f) 平 坦地において、荒地を示す記号と針葉樹・広葉樹を示す記号とが混在している場合には、植生記号の粗密に応じて区画線を設けています。また、「昭和40年 式」以前の図式で作成された2万5千分1地形図における空き地と畑地の区分は、周囲の状況に応じて区分しています。(畑地の記号は「昭和44年加除訂正図 式」から使われるようになりました。) g) 特定地区界等により区分されたゴルフ場や飛行場などの敷地内にある樹林や建物については、それぞれ 「ゴルフ場・大規模リゾート施設等」や「その他」の土地利用区分に一括して表示しています。ただし、ゴルフ場などが開設される以前から存在した湖沼のうち 採用基準を満たすものについては、湖沼等として表示しています。 |
区分 | 左記に含まれる事項 |
---|---|
都市集落及び道路・鉄道等 | 居住地等(市街地、集落) 公共施設・学校・工場・油槽所・発変電所等 都市公園・空き地等 道路(1車線以上)・鉄道 |
田 | 田 |
畑地・果樹園等 | 畑地・果樹園等・牧草地・温室畜舎等 |
森林 | 針葉樹林・広葉樹林・混交樹林・竹林・はい松地・しの地 |
ゴルフ場・大規模リゾート施設等 | ゴルフ場・スキー場等 |
荒地等 | 荒地・河川敷・裸地・浜・砂礫地 |
河川・湖沼 | 河川・湖・沼・池 |
湿地 | 湿地 |
その他 | 飛行場・自衛隊演習場・霊園墓地等 |
3.地形分類図
地形分類図は、湖沼や湿原の成り立ちや現在の特性を明らかにするため、地形調査をもとに、湖沼や湿原が現在どのような地形的環境にあるのかを示す図 です。その表示内容は、1.自然地形、2.人工地形、3.地盤高、4.人工工作物・運輸交通施設・行政界、の4つに大きく分けられます。
自然地形は、地表面の形態的な特徴により土地を分類することで、その性状、成り立ち及び現在の自然条件を表します。それぞれの地形分類要素は、表-2に示すとおりです。
人工地形は、本来の自然地形の人工的な改変状況を示します。地形分類図では、自然地形を基本に、その改変された部分に人工地形を重ねて表示しています(表-2)。
地 盤高線はおよそ1m間隔の等高線であり、平坦な土地の微妙な傾きや起伏を表現しています。湖沼や湿原を含む低地部分の多くは平坦ですが、微地形の配置に伴 うわずかな起伏が存在します。これらの地形は、土地の排水の良し悪しに関係し、特に湿原の存立条件に大きく影響します。
堤防・護岸の人工工作物や、鉄道・主要道路の運輸交通施設は、人工地形と同様に、人工的に土地が改変された部分を示します。行政界は、地形分類図での各市町村の区域を表示するほか、運輸交通施設とともに、図上で特定された位置を把握する際の目安に使います。
区分 | 定義 | |
---|---|---|
大区分 | 小区分 | |
山地 | 山地・斜面 | 山地・斜面のいわゆる斜面の部分。段丘崖にも適用 |
主要分水界 | 山地・丘陵地(主として斜面で表現される地域)における主要な稜線で河川の流域界を成すもの | |
台地・段丘 | 完新世段丘面 | 約1万年前以降に形成された段丘面 |
更新世段丘面 | 約1万年前以前に形成された段丘面 | |
火砕流台地 | 火砕流が堆積して生じた平滑で広大な台地 | |
低地の一般面 | 扇状地 | 河川が山地から出た個所に河川が運び出す土砂が堆積して形成された扇形の地形 |
緩扇状地 | 上記扇状地に比べて傾斜が緩いもの | |
氾濫平野・谷底平野 | 河川の堆積作用により形成された低平な土地 | |
三角州 | 河口における河川の堆積作用によって形成された平坦地 | |
海岸平野 | 相対的に海(湖)面の低下によって陸地となった平坦地 | |
凹地・浅い谷 | 凹地・浅い谷 | 台地・段丘や扇状地などの表面に形成された凹地や浅い流路跡、または、隣り合う扇状地の境界付近の相対的に低い部分 |
低地の微地形 | 自然堤防 | 洪水時に運ばれた砂やシルトが流路沿い、または、その周辺に堆積してできた帯状の高まり |
後背低地 | 自然堤防などの背後にある低地のほか、河川の堆積作用があまり及ばない低湿地 | |
旧河道 | 低地の一般面より低い帯状の凹地で過去の河川流路の跡 | |
湿地 | 地下水位が高く、排水性が極めて悪い低湿地 | |
潮汐平地 | 干潮時に水面上に現れる平坦な土地 | |
砂州・砂堆 | 波浪により作られた砂礫質の高まり | |
砂丘 | 風で運ばれた砂が堆積して形成された小高い丘 | |
河川敷・浜 | 提外地のうち、水面以外の部分及び海岸・湖岸の波打ち際の砂浜・礫浜 | |
水部 | 河川・水涯線及び水面 | 河川は、原則として常時水流がある部分。水涯線は自然状態における水陸の境界線。水面は河川、湖沼、海、貯水池などの表面 |
旧水部 | 旧版地形図、米軍撮影写真等により、水部と確認されたもののうち、現在、埋土、盛土等に改変されたもの | |
変動地形 | 活断層 | 最近数十万年間に、概ね千年から数千年の周期で繰り返し動いた跡が地形に現れ、今後も活動を繰り返すと考えられる断層 |
活断層(位置やや不明確) | 活断層のうち、活動の痕跡が浸食や人工的な要因等によって改変されているために、その位置が不明確なもの | |
活断層(活撓曲) | 活断層のうち、変位が軟らかい地層内で拡散し、地表には段差ではなくたわみとして現れたもの。(たわみの範囲及び傾斜方向を示す。) | |
推定活断層 | 地形的な特徴により、活断層の存在が推定されるが、現時点では明確に特定できないもの | |
人工地形 | 切土地 | 山地・丘陵地、台地などの斜面を、主として切り取りにより造成した平坦地または緩傾斜地 |
盛土地 | 沼沢地、河川敷、谷などを埋立・盛土して造成した土地 |