2004年スマトラ島沖大規模地震及びインド洋津波に伴う海岸線変化:解説
海岸線変化の抽出方法人工衛星から撮影した光学画像(いわゆる写真)と、レーダー画像(白黒の写真のようなもの)を利用して、海岸線の変化を調査しました。
ここで、「隆起」や「沈降」といっているのは、地震時に生じた断層面の動きによって生じた地表面の上下運動を指しています。 津波による海岸浸食と沈降は、どちらも海岸部の浸水という同じ結果をもたらすため、沈降だけを抽出するには、岩礁や堅固な人工構造物等に着目して、画像変化を調査します。 レーダー画像の特徴一般的に光学画像はカラーで、分解能が高く、目で見たままなので、理解しやすく利便性が高いのですが、専門家にとっては、レーダー画像には多くの長所があり、光学画像とレーダー画像の両方の特徴をうまく併用することで、実用的な海岸線変化抽出が可能となります。
レーダー画像の長所は、以下のとおりです。
課題アンダマン諸島の東側が沈降しているかどうかは、画像判読で調べられる限界に近く、隆起や沈降の大きさも不明です。これらを知るには、現地調査、験潮データ、GPS観測データが欠かせません。
ALOSへの期待今回の調査では、すべて外国の衛星データを使用しましたが、日本の衛星は使えないのでしょうか。
2005年に打上げが予定されている国産の陸域観測技術衛星(ALOS)には、光学センサーの他に、レーダー画像を撮影するSAR(Synthetic Aperture Radar)センサーが搭載されます。このSARセンサーで使用するマイクロ波の周波数帯域は、外国のCバンドと異なるLバンドです。Lバンドは、スマトラ島にあるような森林の樹冠を通り抜ける性質があります。 2時期のSAR画像を重ね合わせ、干渉SAR(InSAR)という解析処理法を適用することによって、地表面の変動をセンチメートル単位で測定し、画像化することができますが、LバンドSARにこのInSAR技術を適用すると、森林地域でも地表面の微妙な変動を見ることができます。 日本も森林の多い国土であり、日本の国土に適したLバンドSARセンサを搭載した世界的に見てもオリジナリティーの高い、かつ、災害状況把握に欠かせない国産衛星ALOSの打上げとその活躍が期待されます。 |