ステップ1:SAR干渉画像を探す

SAR干渉画像の抽出方法

1.はじめに

 SAR干渉画像から地すべりなどの斜面変状を抽出するには、当然SAR干渉画像を用意しなければなりませんが、SAR干渉画像の生成には技術的なハードルがあり容易ではありません。
 そのため、既成のSAR干渉画像から変状のある箇所を抽出することが最も手っ取り早い方法となります。
 国土地理院では、地理院地図(https://maps.gsi.go.jp/)で既成のSAR干渉画像を閲覧できます。具体的な方法については「2.画像の選択」に詳細を表示しています。また、干渉SARの原理等を知りたい方は国土地理院の干渉SARのページ: http://www.gsi.go.jp/uchusokuchi/gsi_sar.html を参照してください。

2.画像の選択

SAR干渉画像は、2つの時期の間の地表変化を捉えたものですが、必ずしも斜面変状の把握に適した画像がいつでも得られるわけではありません。衛星「だいち」の観測周期は46日ですので、単純計算すれば1年に8回の観測機会があり、2つの時期の組合せは相当な数になりそうですが、多くの場合は適切に干渉しません。(現在はだいち2号となり、全国が定常監視対象です。過去に発生した地震や活火山として陸上にあるもの等を既成の画像として公開しています。)
 このため、国土地理院の地理院地図の干渉SARのHPに掲載されているSAR干渉画像は、数多くの組合せのうち、適切に干渉したものだけを選んでいます。(地理院地図の左上にある情報から基準点・測地観測→干渉SARと進んでください)
 よって、災害ごとに画像は分類されていますが、基本的には見たい場所の画像を全て選んでもらってかまいません。
 例えば、地理院地図における干渉SARの画像の表示は以下のようになります。
SAR画像の表示方法
図1-1 SAR干渉画像の例

 「斜面変状を見つける」という点で重要なのは、「画像」と「観測日の情報」になります。
図の場合の諸元を求めるには現在では以下の図1-2 のようにします
SAR画像の諸元を表示させる方法

図1-2 干渉SARの画像の諸元を表示させる手法 

 次に、画像についてみてみましょう。図2は図1-1の画像の一部を拡大したものです。
図2 SAR干渉画像の例
図2 SAR干渉画像の例

 赤丸が2009年2月以降大規模な地すべりが発生した七五三掛(しめかけ)地区になります。一方、白丸は月山の周辺です。
全体的には水色や青の部分が多いですが、七五三掛地区や月山周辺、そしてその他にも所々、それ以外の色が見られることが分かります。
とりあえず、今回は「七五三掛地区」を見ることにしますので、アーカイブにおける「七五三掛」の位置を特定しましょう。

 先ほどの、図1-1を表示しましょう。

 すると、図3のような画面が表示されます。
図3 地理院地図上に表示されたSAR干渉画像(ステップ1)
図3 地理院地図上に表示されたSAR干渉画像(ステップ1)

 図の状態は、まだSAR干渉画像が縮小されている状態ですので、見たい場所を中心に持ってきた上でマウスのホイールボタン等で拡大をします。
図4 地理院地図上に表示されたSAR干渉画像拡大版(ステップ2)
図4 地理院地図上に表示されたSAR干渉画像(ステップ2)

 七五三掛の文字が地理院地図上で確認できるところまで拡大すると、図4のように赤丸で示した発色した場所もより明確に見えるようになります。
 拡大する大きさは任意ですが、このように注目する場所が明瞭に確認できるところまで拡大し、画像集として整理しておきます。
例えば、地理院地図の情報をクリックして トップ>基準点・測地観測>干渉SAR>だいち(ALOS) >地すべり>山形月山から 2009年3月20日~5月5日、5月5日~8月5日、6月14日~7月30日のSAR干渉画像を七五三掛周辺で揃えると図5のようになります。

図5 地理院地図上に表示された時期をかえた同地図のSAR干渉画像(ステップ3)
図5 地理院地図上に表示されたSAR干渉画像(ステップ3)

 SAR干渉画像は既存のアーカイブから集めるわけですので数には限りがありますが、図5のように同じ場所について複数のSAR干渉画像があると良いことがあります。
 すなわち、同じ場所で斜面変状の候補が繰り返し登場すれば、その場所に斜面変状がある可能性が高まります。
 干渉SARのホームページの各地区のアーカイブはそれぞれの地区を中心とはしていますが、注目するエリアによっては上記のように複数の地区に入ることもありますので、積極的にSAR干渉画像を揃えていきましょう。

 これで、必要な材料は揃いましたので、次のステップで斜面変状を抽出します。
 
 ステップ2:「斜面変状の候補を抽出する」に進む

 もしも、任意の地点についてSAR干渉画像を用意したい場合は、自分でその画像を作成しなければなりません。
 以下のリンクに参考情報を示しましたので関心がありましたらご覧ください。

 オプション1:「SAR干渉画像を作成する」に進む

*1  このページで表示されているSAR干渉画像は全て次によるものです:

Analysis by GSI from ALOS raw data of JAXA, METI