三宅島火山活動、新島・神津島近海の地震活動及び鳥取県西部地震に伴う地殻変動の監視について

Monitoring of crustal deformation associated with volcanic and
seismic activity in the area from Miyakejima to
Niigima -Kozushima and 2000 Western Tottori Earthquake

測地観測センター 監視班
大瀧 茂・菅富美男・田村 孝・藤咲淳一・佐藤博行・飯塚豊久・澤田正典・山際敦史
Geodetic Observation Center
Shigeru OTAKI, Fumio SUGA, Takashi TAMURA, Jun-ichi FUJISAKU,
Hiroyuki SATO, Toyohisa IIZUKA, Masanori SAWADA and Atsushi YAMAGIWA
管理班 西修二郎・今給黎哲郎・青木和夫・杉田 要・山田 明
Syujiro NISHI, Tetsuo IMAKIIRE, Kazuo AOKI, Kaname SUGITA and Akira YAMADA
近畿地方測量部 宮崎 孝人
Kinki Regional Survey Department Takato MIYAZAKI

はじめに

 伊豆諸島群発地震は、最大震度6弱が6回、震度5強が7回、震度5弱が17回、地震総数が14,200回に上り、「過去に例を見ない規模の群発地震」となった(平成13年1月10日、日本経済新聞)。国土地理院では伊豆諸島にも十数点のGPS観測点(電子基準点)を設置して地殻変動を常時監視している。特に火山の活動が注目される伊豆大島と三宅島には島内にそれぞれ4点の観測点を設置してより詳細な監視を行ってきた。測地観測センターでは、平成12年6月26日、火山性地震が多発し、臨時火山情報が出されるなど活発化した三宅島の火山活動に伴い、三宅島の地殻変動を把握するため、島内の電子基準点4点について、6時間データで3時間毎に行うように緊急解析システムを立ち上げた。
 6月27日以降、三宅島の雄山直下で始まった地震活動は、その中心を次第に西へ移動させながら、西方海域まで達し、M(マグニチュード)5以上の規模の地震が発生するようになった。
 このため、この緊急解析の範囲を拡大して伊豆大島から御蔵島に至る伊豆諸島北部の全観測点と伊豆半島、三浦半島及び房総半島の観測点までに拡大した。
 さらに、新島と神津島の距離が広がる方向に動く地殻変動が観測され、観測点が1点しかない新島での観測を強化するため、7月18日に新島に臨時の観測点を1点増設した。
 一方、神津島の北部にある神津島2観測点については、7月6日に地震による電力線切断のためそれ以降観測が停止したり、三宅島島内の観測点については、9月に入って泥流が発生する等の障害が発生して一部観測点について観測が停止するなど観測点のトラブルが続いた。その後、三宅島は、島民が避難して停電となり既設の観測点(電子基準点)については、現在、観測停止となっている。通電されるまでの間、電力・電話回線の使用ができない地域のために設計されたGPS火山変動リモート観測装置(REGMOS)を三宅島に2点、式根島に1点、神津島に2点をそれぞれ設置して観測を開始した。現在、三宅島に関してはM阿古-神津島間の観測データを解析して地殻変動の監視を行っているが大きな変化は観測されていない(図-1)。三宅島火口での硫化水素等のガス発生の状況、道路の復旧状況等を見てさらに2点が三宅島に設置される予定になっている。
 平成12年10月6日13時30分頃、鳥取県西部でM7.3の今年に入って最大規模の地震が発生したが、緊急解析システムを立ち上げ、6時間データの解析により地震後の地殻変動を迅速に把握して、地震調査委員会、地震予知連絡会等に資料を提供し、合わせて記者発表を行った。
 国土地理院のGPS観測結果は、活動開始以前から一貫して連続した地殻変動を報告するデータとして、噴火予知連などでは、活動の推移を判断するために不可欠な資料となっている。さらに地震調査委員会などでも地震発生のメカニズムを決定する上でも不可欠な資料となっている。このように防災のために大いに役立ったばかりでなく、今後の地震調査研究へ重要な基礎資料を提供することができた。ここでは、今まで経験したことがないこれらの一連のGPS連続観測による地殻変動監視について報告する。