測量行政の基本的方向(要約)

 測量法が昭和24年に制定されて以来約50年が経過し、我が国でも経済・社会の高度情報化・国際化が急速に進展しつつある。測量分野においても、民間における測量業の発達と技術力の向上が図られたばかりでなく、宇宙技術や情報通信技術の驚異的な進歩により、測量技術の飛躍的な向上とグローバル化が進み、その利用分野の高度化・多様化には著しいものがある。

 測量法は、測量の重複を避け、正確さを確保することをその目的とし、我が国の測量の体系を(1)国土地理院が行う基本測量、(2)国又は公共団体が行う公共測量、(3)基本測量及び公共測量以外の測量(民間測量)に区分して、それぞれの測量についてその実施のための規定を設けている。

 国土地理院は、すべての測量の基礎となる基本測量を実施する機関として測量行政の中核的な役割を担っているばかりでなく、測量及び関連技術に関する研究開発や国際協力の分野においても我が国の中心的な存在となっている。このような測量行政の基本的な枠組みは、現在においてもその意義を失っていない。

 しかしながら、近年、高度情報化社会において国土の情報面での基盤(情報インフラ)となるディジタル地理情報を広く流通・利用させることにより、新たな産業社会の一翼を担うことが求められており、また、グローバルな視点からは地球規模の測量における拠点としての役割や国際社会における指導的立場も要求されている。さらに、宇宙測地やディジタル地図情報の分野における新しい技術への対応を急ぐ一方、昨今の行財政改革の動きの中で、簡素で効率的な測量行政の実現も強く要請されている。
 今後の測量行政は、このような内外の動きに的確に対応するため、以下の方向で必要に応じて制度上の見直しを行い、新たな展開を図るべきである。

  (1)国家行政の基礎的事業である基本測量は、関連業務との総合的・一体的な実施を図りつつ、今後とも国の責任において実施する。
  (2)基本測量成果は、国土の基本的な地理情報であるため、無償ないしは低廉な価格で、かつ最新の情報メディアを利用した簡素な手続きにより、広く国民が利用できるようにする。
  (3)世界各国で近年共通に使用されつつある測量の位置基準(世界測地系)の採用等、測量行政についても国際的視野の中で見直しを進める。
  (4)公共測量については、国は技術基準の作成等の基本的枠組みへの関与に重点を移し、民間能力を活用しつつ、個別の測量成果の審査事務等を簡素化・効率化するとともに、新技術・新手法の円滑な導入の促進を図る。
  (5)基本測量及び公共測量のみならず民間測量を含めた測量成果の流通と利用を促進するため、民間能力を活用したクリアリングハウスを構築する。
  (6)測量技術の進展に対応するとともに、測量成果の品質管理に責任を持つ高度な測量技術者が求められており、そのための資格制度の改善を図る。

 測量行政の執行及び国土の基本的な地理情報の整備・管理は、国家行政の基礎的事業であり、引き続き国の責任において実施する必要がある。国土地理院においては、以上の方向を踏まえ、国土の基本的な地理情報の整備・管理、地理情報システム(GIS)の普及促進、国土の防災・環境保全に資する地理調査や地殻変動解析の推進、地球規模の測量事業等の業務の展開などを進め、21世紀の新しい測量行政・測量事業を切り拓いていくことが必要である。