今後の測量行政の基本的方向について

測量行政研究委員会最終報告

平成10年5月13日

 まえがき

 現在の我が国の測量体系は1950年前後にほぼ確立されたと言ってもよい。爾来50年近く、この制度や方法は多くの測量事業を進展させ、その成果は国土開発から国民の生活活動全般にわたり広く用いられて、我が国社会の今日の発展に大きく寄与してきた。
  しかし、近年の測量をめぐる社会的、技術的状況は大きく変化しつつある。そこで用いられる技術は宇宙測地技術やディジタル地図情報などに代表されるようにかつては想像もされないような大きな革新を示した。加えて、社会経済全般で一層の効率化が求められ、長く続いた行財政制度や事業慣行の変革が強く求められるようになっている。規制緩和、情報公開、官民の役割分担の見直し、地方分権等、それは広い範囲にわたっており、測量行政や事業においてもそれは例外ではありえない。
  このような社会的、技術的変革の中にあって測量行政も新たな環境に相応し、次の時代において正しく機能することができるものであるよう新しい方向が求められている。
  このため、今後の我が国の測量行政や測量制度がいかにあるべきかを審議することを目的として、平成9年5月に測量行政研究委員会(委員長 中村英夫東京大学名誉教授)が設置された。
  本委員会は8回にわたる会議で、国土地理院の業務の在り方を含め、測量行政、測量制度全般にわたり討議を行ってきた。その結果、今後の測量行政の基本的な方向について、大筋の意見の一致をみたので、ここに取りまとめを行うものである。

 本委員会の構成及び審議の経過は、次のとおりである。

<測量行政研究委員会の構成>

  中村 英夫(委員長) 東京大学名誉教授 武蔵工業大学環境情報学部教授
   伊理 正夫      東京大学名誉教授 中央大学理工学部教授
   宇賀 克也      東京大学法学部教授
   大田 弘子      政策研究大学院大学助教授
   小澤 惠一      横浜地下街(株)専務取締役
   兼高 かおる     ジャーナリスト
   中山 信弘      東京大学法学部教授
   西藤  冲      (財)日本総合研究所所長
   萩原 幸男      東京大学名誉教授 日本大学文理学部教授
   森本 茂俊      全国土地改良事業団体連合会専務理事
   吉川 稔       東京電力(株)取締役 システム企画部担任

<測量行政研究委員会の審議の経過>

第1回 平成9年6月24日 測量行政の現状と課題について

第2回 平成9年9月16日 測量行政における国土地理院の役割について

第3回 平成9年11月4日
    (1)今後の測量行政における国土地理院の役割について
    (2)21世紀に向けた国家基準点の再構築について

第4回 平成9年12月4日
    (1)今後の国土地理院の業務の在り方について(中間とりまとめ)
    (2)ディジタル化時代の地理情報の公開・流通について

第5回 平成10年1月30日 公共測量等の品質確保と利用促進のための手続等及び測 量技術者の資格制度の在り方について

第6回 平成10年2月10日 測量業界等からのヒアリング

第7回 平成10年3月17日 今後の測量行政の基本的方向について

第8回 平成10年5月13日 今後の測量行政の基本的方向について

目次

測量行政の基本的方向(要約)
第1章 測量行政の課題と今後の基本的考え方
  1 測量行政の経緯と課題
  2 今後の測量行政の基本的考え方
第2章 基本測量・公共測量等の在り方
  1基本測量
   (1) 基本測量事業
   (2) 基本測量成果の公開・流通
  2公共測量と民間測量(基本測量・公共測量以外の測量)
   (1) 測量成果の品質確保
   (2) 測量成果の利用促進
第3章 測量技術者の資格制度の在り方
第4章 国土地理院の業務の在り方