平成15年度国土地理院重点施策 総説

21世紀の社会を支える「電子国土」

1.21世紀の社会を支える「電子国土」

 21世紀の社会では、高速で低廉な通信ネットワーク形成が進むと同時に、そのネットワーク上で流通される良質なコンテンツが求められている。地理情報においても、IT革命の進展とともに、国民の情報ニーズが増加し、利用方法が多様化している。また、多くの整備主体による様々な種類の地理情報を統合して利用することが、情報通信網の整備や地理情報処理技術の発展等により可能となりつつある。
 地理情報には、多くの種類がある。例えば、通常の地図に表示されている情報、台帳等に記載されている情報、基準点等位置を決定するための情報、空中写真等画像情報などである。これらの各種地理情報は、国土の変化を可能な限りリアルタイムに取得するとともに、統合利用することにより、現実の国土に対応する情報を有効に活用できるサイバー国土をコンピュータ上に構築することができる。これを「電子国土」という。

 必要とされる全ての地理情報を限られた特定の機関が整備・供給することは、現実的ではない。例えば公共施設の構築・改修情報はその管理者である国や地方公共団体が、店舗の移動改築は当該企業が最もよく把握している。これらの情報が、「電子国土」で利用可能となれば、地理情報の新たな利用可能性が開けると期待される。

 国土交通省では、内局、外局、地方整備局等において、防災情報を中心に地理情報の蓄積がある。これらは「電子国土」のうえで利用することにより、基盤となる地理情報(GIS基盤情報)をそれぞれが整備する必要がない、部局の境を越えたデータの相互利用が可能である、一般への情報提供も容易になる等の利点がある。

 省内防災情報の一元提供に向けて、平成15年度の設置を目指して検討中の「防災情報提供センター(仮称)」においても、「電子国土」のパイロットシステムの採用が検討されており、「電子国土」が国土交通省の地理情報利活用の基盤システムとなることが期待される。

 最新かつ多様な地理情報を、いつでもどこでも誰でも自由に利用できることが「電子国土」に求められている。「電子国土」の実現により、行政(行政情報提供、国土管理、公物管理、各種計画業務等)、企業活動(エリアマーケティング、車両運行管理、営業支援、広告等)、家庭や個人(旅行・レジャー、情報発信、ボランティア活動、緊急時等の位置通報等)の活動が飛躍的に変化する。

 良質な地理情報が公開され民間での活用が進むことにより、モバイル環境を利用した位置情報ビジネスが開拓され、地理情報を取り扱う新たなIT関連産業の発展が期待される。「電子国土」は、新たな産業を誘発する社会基盤と言える。

2.平成15年度重点事項

 「電子国土」の構築・利用のために、以下の4つの事項に取り組む。


(1)電子国土の基盤となる情報の整備

 「電子国土」の基盤となるGISやGPSに関する各種情報の速やかな更新・提供を推進するとともに、「電子国土」の各種利用において共通に用い、重ね合わせて利用する様々な地理情報の継続的な整備・維持を行う。


(2)電子国土利用のための技術開発

 様々な整備主体の保有する地理情報を分散環境下で統合利用するためには、通信ネットワークの利点を最大限活用することが重要である。このため、様々な地理情報のメタデータを一括して検索し利用するクリアリングハウスやウェブマッピング技術の開発、電子国土を利用した災害情報提供システムの開発等を行う。


(3)電子国土の構築に向けた仕組みづくりの推進

 「電子国土」のコンテンツ充実のためには、行政機関はもとより民間が所有する様々な地理情報の電子化及び流通を進めるための仕組みを構築することが重要である。このため、行政機関内の仕組みや、行政機関への申請、届出、測量成果納品などの手続きにおいて文書・成果の電子化及び標準化を図る仕組みについて検討する。


(4)グローバル地理情報構築の推進

 近年、世界各国において、我が国主唱の地球地図の整備をはじめとする全地球空間データ基盤プロジェクトが進行しつつあり、我が国としても国際的な協調体制のもとで、データ整備、標準化、共有化等について積極的に推進する必要がある。特に、アジア太平洋地域においては、国連の勧告により設置されたアジア太平洋GIS基盤常置委員会(PCGIAP)の事務局長を担うなど、先導的な役割を果たすことが求められている。このため、地理情報の標準化、国際共同観測、途上国への支援等を通じて、世界を先導しつつ地理情報の構築に主体的に寄与する。