ALOS/AVNIR-2画像を利用した平成19年能登半島地震の災害状況把握

 平成19年3月25日09時42分頃、石川県能登半島沖を震源とする地震が発生した。地震の発生を受け、JAXA(宇宙航空研究開発機構)では、翌26日11時にALOS/AVNIR-2の観測を実施した。

 国土地理院防災地理課では、観測データから得られた画像を基に被災箇所の判読を行い、災害状況の報告を行うとともに、被災規模によるALOS/AVNIR-2画像の判読可能性について考察を行った。

1.ALOS/AVNIR-2の観測諸元

  • 解像度 10m
  • ポインティング角 +30°

2.地形の特徴と被害状況

 能登半島は、その大半が標高200~400mの新第三紀層からなる丘陵地で占められ、海岸沿いには海岸段丘がよく発達し、陸域では多くの活断層群が認められることから、地殻変動の激しい地域であると言える。また、丘陵地は、広い範囲にわたり地すべり地形が発達しているのも大きな特徴である。

 今回の地震における被害状況は、衛星画像、空中写真等からの初期判読結果においては、斜面崩壊が多く、建物倒壊、道路被害などは比較的少ない。ただし、現地の報告では、建物、道路被害も多数報告されている。また、新潟県中越地震で見られた河道閉塞なども確認されている箇所がある。津波被害はほとんど報告されていない。

3.災害箇所の把握

(1) 方法
  1. JAXAより、ALOSデータをダウンロード
  2. GEOTIFF画像に変換
  3. 目視による被災箇所の判読

(2) 着眼点
 
  • 道路が寸断されているか
  • 河川が寸断されている
  • 通常の切土斜面と比べて、色が違って見える斜面(崩壊地の可能性)があるか
(3) 判読した結果

別紙 : 被災箇所の画像、地形図(PDF:192KB)

4.まとめ

 ALOS/AVNIR-2の観測画像で雲の影響がない地域の判読結果は、明瞭-11箇所、やや不明瞭-12箇所であった。明瞭に判読できたものの災害種は崩壊地10箇所、河道閉塞1箇所であった。いずれも土砂の移動を伴う大規模な変状であった。

 ALOS/AVNIR-2は、解像度が10mとされている。解像度の2倍を超える範囲で地形変化が見られた箇所の判読は可能であった。また、土砂移動を伴う斜面崩壊などの変状はある程度把握できたが、建物倒壊など移動の少ない変状は判読できなかった。

 なお、判読できた箇所の斜面は、西側を向いているものが多かった。AVNIR-2のポインティング角は、進行方向(南)に向かって左(東)が+、右(西)が-であり、今回使用した画像のポインティング角は+30°なので、西側斜面がより判読しやすい状況にあった。今回の結果だけでは一概に断定できないが、ポインティング角の方向や大きさが目視判読にある程度影響を与える可能性も考えられる。

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