測量に関するミニ知識

第14回 測量用航空機「くにかぜ」の変遷 -時代と共に進化する搭載機材- その2

 前回は初代「くにかぜ」についてご紹介しました。今回は後続機「くにかぜII」についてご紹介します。

1.測量用航空機、「くにかぜII」について

 初代「くにかぜ」の老朽化に伴い、測量用航空機は昭和58年に、「くにかぜII」(ビーチクラフト・キングエアC-90)へと更新されました。初代「くにかぜ」と同様、海上自衛隊により運航・整備が行われました(写真1)。それから、退役する平成21年度末までの実績は、空中写真撮影の総面積が582,570km2(全国土の約1.5倍)、撮影延長距離は209,391km(地球約5周)、航空磁気測量の延長距離は127,500km(地球約3周)となり、運航時間は延べ9,000時間に及びました。

写真1:測量用航空機「くにかぜII」



 初代「くにかぜ」と比べた「くにかぜII」の主な諸元は表1のとおりです。「くにかぜII」は初代「くにかぜ」に比べると、機体の大きさはほぼ同じですが、エンジン出力が約1.7倍になったため、搭載量、航続距離等の性能が向上しました。また、当時最新の航法計器を装備したことにより、安全性も高くなりました。さらに、機体構造が与圧方式となったことから、初代「くにかぜ」では高い高度で必要であった酸素吸入装置(酸素マスク)の装着が不要になるなど、作業能率の向上につながりました。

航空機名 初代「くにかぜ」 「くにかぜII」
機種 ビーチクラフト
クイーンエアB-65P
ビーチクラフト
キングエアC90
エンジン レシプロエンジン
出力340hp×2
ターボプロップエンジン
出力580hp×2
乗員(最大) 9名 10名
大きさ 全幅 13.98 m 15.32 m
全長 10.16 m 10.82 m
全高 4.32 m 4.33 m
重量 自重 2,105 kg 2,553 kg
搭載量 1,229 kg 1,824 kg
性能 巡航速度 344 km/h 402 km/h
実用上昇限度 8,626 m 7,803m
航続距離 1,931 km 2,125 km
離陸距離 475 m 597 m
着陸距離 514 m 525 m
機体構造 非与圧 与圧
表1:初代「くにかぜ」と「くにかぜII」の主な諸元の比較

2.「くにかぜII」に搭載された測量用航空カメラ、ASCOTシステム及びPOS/AVシステム

つぎに、「くにかぜII」に搭載された測量用航空カメラについて、ご紹介します(表2)。
 
カメラ名
レンズ名
焦点距離
画面サイズ
シャッター
スピード(秒)
使用期間
RC10
15/4 UAG
152.66 mm
23 × 23 cm
1/100~
1/1,000
S56.8~H8.5
RC30
15/4 UAG-S
153.76 mm
23 × 23 cm
H8.11~H21.3
UltraCamD
UCD-SU-1-0049
105.2 mm
67.5 × 103.5 mm
H19.11~H21.12※
※このカメラは、H22以降はくにかぜIIIに搭載
表2:「くにかぜII」に搭載した測量用航空カメラの変遷
2.1 RC10
 
 「くにかぜII」の導入に合わせて導入したカメラがウイルド社製のRC10です(写真2)。RC10 は、初代「くにかぜ」に搭載していたRMK タイプとは異なり、カメラ本体(フィルム駆動部分)とレンズコーンが分離されたモデルであり、機上でのフィルタ交換が可能となりました。また、異なる焦点距離のレンズコーンを利用することも可能となっております。さらに、RMKではカメラ本体と分かれていたファインダーが、RC10ではカメラ本体と一体となった上、正像で被写体を確認できるようになったので、視認性が向上しました。また、オーバーラップ調整器がファインダーに内蔵され、オーバーラップの調整が容易となりました。

写真2:「くにかぜII」に搭載した航空カメラRC10


2.2 RC30
 
 RC30(写真3)は、フィルム航空カメラとしては当時最新のものであり、最大口径比、最短露光時間、高コントラスト及び高解像度であるレンズコーンを搭載し、FMC(前進運動補正装置:前進運動による写真のブレを補正する装置)やPEM(自動露光コントロール機能:絞りと露出を自動コントロールすることで急激な露出変化を防ぐ機能)を備えています。また、カメラと、航空機に搭載されたシステムやセンサとの通信を可能にするEDI(外部データインターフェイス)を搭載しており、各写真上にカメラの状態やナビゲーションデータを自動的に注記させることが可能となっています。
 
2.3 ASCOT(航空測量コントロールツール)システム
 
 国土地理院では、平成8年にASCOT(航空測量コントロールツール)システム搭載のRC30を導入しました。このシステムでは、GPS受信機と接続することにより、計画したコースとGPSによって計測された実際の飛行位置が併せて表示されるようになりました。これによりパイロットを誘導し、効率的に撮影飛行をすることができるようになりました。また、カメラ状態、ナビゲーション、航空機の位置データを連続的に収録・保存でき、フライト後の分析に利用することも可能です。
 
2.4 POS/AVシステム(GPS/IMU装置)
 
 平成17年にはPOS/AVシステム(GPS/IMU装置)(写真4)を追加購入しました。
 これは、GPSアンテナ及び受信機と、3軸のジャイロと加速度計で構成されるIMU(慣性計測装置)、データ記録装置から成るシステムで、航空機の位置(X,Y,Z)及び姿勢(ω,φ,κ)を高精度に求めることが可能です。このシステムで得られたデータと画像基準点測量の成果を用いて同時調整を行うことにより、空中写真撮影時のカメラの位置と傾きをより高精度に求めることができるようになりました。従来、航空機の位置及び姿勢は、撮影後の空中写真を用いて計測等により求めていましたが、本システムの搭載後は不要となりました。これにより、作業の負担が大幅に軽減され、作業全体が効率化されるようになりました。

写真3:「くにかぜII」に搭載した航空カメラRC30


 
写真4:POS/AVシステム
写真4:POS/AVシステム
(左からGPSアンテナ、IMU装置、データ記録装置)

 デジタル航空カメラUltraCamDについては、次回「くにかぜIII」においてご紹介します。
 

3.「くにかぜII」による航空磁気測量

 「くにかぜII」では、昭和59年から高度5,000mの航空磁気測量を開始しました。磁場は磁性体と観測点との距離の3乗に反比例することから、観測高度が高くなるほど地球表層の地磁気の影響は小さくなり、観測高度の違いに伴い、全磁力値と磁気異常値の現れ方に違いがあります。高度5,000mの観測は、初代「くにかぜ」による高度3,000mでの観測ができなかった地域も網羅し、地殻上部の磁場の影響を受けず、地殻内部の巨視的な磁場分布を求めることを目的として実施しました。
 観測は初代「くにかぜ」と同様、プロトン磁力計を用いて行われ(写真5)、平成10年度に全国航空磁気測量は完了しました。観測の成果は平成13年に日本列島及びその周辺地域の「高度5,000mにおける全国航空磁気異常図」としてまとめられました(図1)。

写真5:「くにかぜII」のプロトン磁力計センサ


図1:「高度5,000mにおける全国航空磁気異常図」


航空磁気測量について詳しく知りたい方はこちら
 
 「くにかぜII」は平成21年度末をもって退役し、その後は諸般の事情により解体処分となりましたが、機体の一部が「地図と測量の科学館」の常設展示室に展示されておりますので、初代「くにかぜ」の屋外展示とともにお楽しみいただければ幸いです。
 
地図と測量の科学館の案内はこちら
 次回は、現役活躍中の「くにかぜIII」についてご紹介します。